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今週半ばの小ネタ:ほどよいストレスでワーキングメモリが改善、筋力がある人ほどメンタルも健全、インセルのメンタリティとは?


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

 

 

 

 

ほどよいストレスでワーキングメモリが改善するぞ!

「ストレスは悪いものばかりじゃないよねー」って話はよく書いていて、「不老長寿メソッド」や「科学的な適職」でも、「適度なストレスがないと、人間はモチベーションが下がるし、健康レベルも低下する」みたいなデータを紹介しております。ストレスを適度な刺激として使うことができれば、良い方向に働かせることもできるわけですね。

 

 

ということで、新しいデータ(R)では、「ほどよいストレスでワーキングメモリが改善するぞ!」って結論になってておもしろかったです。ワーキングメモリの重要性は何度も書いてますが、この機能がストレスで改善するんだぞってことですね。

 

 

これはジョージア大学が1,200人以上の健康な若者を対象にした調査で、どんな実験をしたかと言いますと、

 

  • 参加者の脳をスキャンしつつ、見知らぬ人の顔を覚える記憶力テストを指示する。

 

みたいな感じです。参加者にわざとストレスフルなタスクを与えて、その時間の脳がどう反応しているのかをチェックしたわけです。

 

 

すると、ストレスとワーキングメモリの性能には明確な関係がありまして、

 

  • アンケートで「ストレスレベルが高い」と答えた参加者ほど、脳のワーキングメモリーの活動が低下していた。

 

  • 低レベルから中レベルのストレスしか経験しなかった人たちの脳では、ワーキングメモリーの活動が上昇していた。当然、脳が活性した人ほど、記憶力テストの成績も良かった。

 

って感じだったそうな。もちろん、この研究は、ストレスレベルとワーキングメモリの関係を直に検証したものではないんだけど、両者に関係があるとは言えそうですね。

 

 

ちなみに、今回の調査では「小から中レベルのストレス」ってのは明確に定義されてないんですが、自分のワーキングメモリを活性させたいような人は、

 

  • 最悪のストレスを100点としたときに、いま自分が感じているストレスは30〜50点ぐらいに収まっているか?

 

と考えてみるといいんじゃないでしょうか。あまりにストレスレベルが高いときは、まずはストレス対策を優先していく方向で。

 

 

 

 

筋力がある人ほどメンタルヘルスは健全だ

「健全なる精神は健全なる身体に宿る!」などと申しますが、この言葉が正しいことを示したデータ(R)が出ておりました。簡単に言えば、「筋力がある人ほどメンタルヘルスは健全だよー」みたいな話です。

 

 

これは中国で行われた試験で、1万4344人の青年を対象にしたもの。その内訳は男子7,180人、女子7,164人で、いずれも13~18歳だったそうな。

 

 

テストでは、みんなの筋肉をチェックするために、握力テスト、腹筋テスト、立ち幅跳びの3項目を実施。それと同時に、みんなのメンタルの状態も調べ、2つのデータを比較したんだそうな(MSQAを使用)。

 

 

すると、筋力のレベルとメンタルヘルスには明確な相関がありまして、以下のような結果が認められたらしい。

 

  • 参加者の21.4%が、少なくとも1つのメンタルの問題を抱えていた。
  • 筋力が強い学生と弱い学生を比べたところ、強いほうがメンタルは健全で、19.3%対23%だった。筋力が最も弱い参加者は、最も強い参加者に比べて、約18%も心理的な問題を抱える可能性が高かった。この差は、女性よりも男性のほうが顕著だった。

 

ってことで、筋力が高い人ほどメンタルの問題に悩みにくいという結果ですね。あくまで相関関係ではありますが、筋力が強いってことは、それだけ普段から運動をしてるってことでしょうから、メンタルが健全でも不思議ではないでしょうね。

 

 

研究チームいわく、

 

男子中学生は、女子中学生よりも、メンタルの問題を抱えるケースが多い。一般的に、男子10代は女子10代よりもオンラインゲームや動画視聴の時間が長く、喫煙、飲酒などの悪い健康習慣が多いため、そのせいで、メンタルに悪影響が出てしまうのだと考えられる。

 

また、中学生のメンタルトラブルは、高校生のそれよりも高かった。中学生は思春期のピークでかなり不安定な精神状態にあるのに対し、高校生は心理学の知識があるため、自分の心理状態にうまく適応できるのだと考えられる。

 

とのこと。もちろん「筋力を鍛えればメンタルも健全に!」って話じゃないのですが、筋力が健全なメンタルの指標に使えるのは間違いなさそうっすね。

 

 

 

 

非モテをこじらせて女性嫌悪にハマる男たちってどんな人?

「インセル」ってあるじゃないですか。「involuntary(不本意)」と「celibate(独身)」を混ぜた言葉で、大ざっぱに言うと「非モテをこじらせて女性を嫌悪している男性」みたいな感じです。日本もふくめて、わりと世界の先進国で認められている現象ですね。

 

 

で、新しい研究(R)は、「インセルになりやすい人はどのようなキャラか?」ってのを調べてくれてて勉強になりました。この文献では、インセルを「女性差別主義者と男性至上主義者の生態系に巣食う男性に人気のサブカルチャー」と定義したうえで、以下の調査をしております。

 

  1. インセルが集まるオンラインフォーラムと、会員数11,000人の独立系フォーラムの2つをピックアップ

  2. 2つのサイトから8,000以上の投稿を集め、すべてに共通する傾向を分析する

 

その結果、インセルな人たちに特有のメンタリティが2つ明らかになりまして、

 

  1. 「世の中は不公平に満ちている!」って感覚が強い

  2. 「インセルの集団は知識が豊富で、自由な考えを持ち、現代社会に簡単に騙されないのだ!」って感覚が強い

 

って感じだったそうです。要するに、インセルは世の男女の関係性に大きな不平等を感じており、それによる自尊心の低下を脱するために「自分は最先端のグループに所属しているのだ!」という認識を抱いているのではないか、と。研究チームは、この2つを「インセルのメンバーになるために必要な要因だ」と指摘してまして、「まぁそうでしょうねぇ……」って感じですな。

 

 

研究チームいわく、

 

物理的な暴力をふるうインセルはごく一部にすぎないかもしれないが、彼らが集うフォーラムは、極端なジェンダー主義のレンズを通して世界観を作り出すように動いており、これは非常に問題である。

 

具体的には、インセルのフォーラムは、世界の不正義に対抗するために暴力を奨励する。インセルのフォーラムは無害な空間ではない。

 

とのこと。まー、実際のところ、インセルによる暴力犯罪が多いかどうかはまだ謎なんですが、自分にこのような傾向がないかどうかは、セルフモニタリングしておくと吉ですね。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。