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ヨガが本当にできることできないこと

Stretch  

ヨガってどれぐらいの効果があるんでしょうか?」というご質問をいただきましたんで、ちょっと考えてみましょう。ちょっと検索すると「ヨガ万能!」や「若返る!」や「ダイエットに効く!」みたいなページがヒットしますが、果たして実際にはどれぐらいの効果が認められているのか、と。

 

 

個人的にはやってないんですけど、確かにヨガは最古のエクササイズのひとつ。これだけの歴史があるなら、さぞや実証データも豊富なはずだと思いがちですが、実は信頼できるヨガのデータは意外なほど少なかったりします。

 

 

それもそのはずで、寝ながら行う瞑想みたいなヨガもあれば、パワーヨガのように筋肉を使うヨガもあるんで、まとめて見解を出すのが難しいんですよね。悩ましいところです。

 

 

以上の話をふまえたうえで、現時点で「ヨガに何ができるのか?」を見ていきましょう。

 

 



 

ヨガの効果がかなり認められたもの

1.体内の炎症が減る

まず、かなり効果がありそうなのが「体内の慢性炎症をやわらげる」効果であります。「慢性炎症ってなに?」という方は、「あらゆる不調を引き起こす『慢性炎症』の話」をご覧ください。

 

 

ヨガと炎症に関してはそこそこの知見がありまして、代表的なのは2014年のメタ分析(1)。過去に行われた研究のなかから、ヨガ、瞑想、太極拳といったテクニックの効果が精査されております。

 

 

チェックした論文の数は34件。2,219人分のデータを調べたところ、各炎症マーカーがハッキリと減ってたんですね。

 

 

なかでもメリットが大きかったのはC反応性タンパク(CRP)で、効果量でいうと中レベル。CRPは体の炎症の規模をあらわす大事な数字なんで、これは素晴らしいことではないかと思います。何度も書いたとおり「体内の炎症は老化の最大原因」ですからね。

 

 

ただし、なんでヨガや瞑想で炎症が減るのかは不明。一説には、体の感覚へ意識を向け続けるトレーニングを積むと、より自分のストレスに気づきやすくなるからだと言われております(2)。なんとなくうなづける話ですね。

 

 

2.腰痛がやわらぐ

続いて高そうなのが、腰痛をやわらげる効果。こちらもメタ分析(2)がありまして、8件の論文から967名分のデータをまとめて大きな結論を出しております。

 

 

その結論を引用すると、

 

ヨガによる腰痛軽減の効果には、短期的には強い証拠があり、長期的にも中レベルの証拠がある。

 

 とのこと。もちろん、ヨガが他の方法よりもいいってわけじゃないものの、腰痛がやわらぐのはほぼ間違いないようですね。

 

 

 ヨガが腰痛に効く理由にも諸説ありますが、たんに体を動かすからだけでなく、やはり「身体への理解が深まるからじゃないか?」と言われております(3)。ヨガで体内の炎症が減る仕組みと同じで、ストレスが減るのが大きな原因みたいですね。

 

 

そもそも現在では「腰痛は脳の暴走である」って説が有力なので、個人的にもこのへんの話には納得。

 

 

ヨガの効果がそこそこありそうなもの

3.鬱病がやわらぐ

3番手に紹介しておきたいのが、ヨガとメンタルの関係。これについては2013年にメタ分析(4)が出てまして、20件の論文から619名分のデータをまとめてくれております。

 

 

では、結論から。

 

多くの研究には方法的な欠陥があるが、鬱症状のある患者に対して、補助的にヨガを使うのはありだろう。

 

とのこと。デザインが悪い実験が多いのでハッキリ言えないんだけど、とりあえず短期的にはメンタルにそこそこ効くんじゃない?ぐらいのイメージです。

 

 

ただし、割りとデザインがいい研究(5)などをみると、ストレス解消には効果が出ているみたいなんで、日常的に健康なメンタルを保つためには十分使えそうですが。

 

 

データ不足でなんとも言えないもの

4.筋肉や体力がアップする

ヨガと身体機能の関係については、実は驚くほどデータがなかったりします。先にも書いたとおり、ヨガの種類によって運動量がまったく違うので実験が難しいんですよね。

 

 

いくつか例をあげると、

 

  • 32人の男女がビクラムヨガを行ったところ、デッドリフトの筋力がアップしていた。しかし、心肺機能には変化がなかった(6
  • 高齢者にハタヨガをやってもらったら、心肺機能がアップしていた(7)

 

みたいな感じ。ちょっとフワフワした感じになっております。

 

 

まぁ、この問題に関しては、「アシュタンガなら体力も上がるんじゃない?ヨガニードラじゃ無理だけど」という超当たり前の結論になりそうな気がしますけども。

 

 

5.柔軟性とバランスがアップする

ヨガといえば体が柔らかくなりそうなイメージですが、実は意外なほどデータはなかったりします。かろうじてあるのは、

 

  • ビクラムヨガを行った若者は、短期的に柔軟性がアップした(8)
  • ヨガを6カ月ほど行った高齢者は、脳機能は上がらなかったが柔軟性はアップした(9)

 

みたいな感じですかね。まぁ普通に柔軟性は上がりそうですかねぇ。

 

 

ただし現時点では、ヨガよりも「筋トレをすると体が柔らかくなる!」ってデータのほうが多いので、柔軟性を高めたいなら筋肉を鍛えるほうがオススメかも。

 

 

まとめ

いろいろ見てきましたが、すべてのデータをひっくるめると、

 

  • ヨガは「自分の体への理解が深まる」のが一番のメリット!

 

という気がしてきました。エクササイズとしては普通に筋トレやランニングをしたほうがいいでしょうが、自分の身体感覚をよく知りたいならヨガがよさげですねー。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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