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座りすぎはやっぱりまずい? 1日30分の「非座り時間」で代謝が改善するかもしれない話

   

 

ここ10年ほどで、健康界隈にすっかり定着したフレーズといえば、「座りすぎはタバコと同じぐらい体に悪い」ってやつであります。長時間の座りっぱなしが健康に悪いって話は、疫学研究ではかなりハッキリしてまして、日中座りながら作業をすることが多い人は、

 

  • 心血管疾患
  • 2型糖尿病
  • 肥満
  • 早期死亡リスク

 

などの問題が起きやすいことが繰り返し報告されてるんですよ。困ったもんですねぇ。

 

となると、デスクワークが多い人などは「じゃあ具体的にどうすればいいの?」ってとこが気になると思いますが、このへん実はまだ研究者の間でもコンセンサスがなかったりします。まだ何分ごとに立てばいいのかがハッキリしていないので、座る時間対策の決定版が出せないんですよね。

 

そんな中で、最近出た研究(R)では、「座り時間と代謝柔軟性」との関係を調べてくれていて、これが役に立つ内容になっておりました。

 

 

座る時間を1日1時間減らしたらどうなるのか?

これはフィンランドのトゥルク大学のチームが行った研究で、対象になったのは40〜65歳の男女64人。運動習慣がほぼなくて(週2時間未満)、メタボリックシンドロームがあるという、わりと典型的な「座りがちな中年グループ」だけを選んだんだそうな。

 

研究デザインをチェックしてみると、だいたいこんな感じです。

 

  1. まず全員に4週間、加速度計を装着してもらい、普段の活動量と座り時間を測定
  2. その後、参加者の半分に「座る時間を1日1時間減らしてください」と指示
  3. 期間は6か月

 

さらにすべての参加者には、1時間のカウンセリングをして生活スタイルに合わせた対策の提案も行ってまして、

 

  • スタンディングデスクを導入
  • エレベーターではなく階段
  • 軽い散歩を増やす

 

みたいな内容を実践してもらったんだそうな。要するに、「できる範囲で座る時間を減らす」って作戦ですな。

 

 

座る時間は平均41分減った

では、6か月後の結果を見てみましょう。まず、シンプルに良いニュースから申し上げますと、

 

  • 座る時間は平均41分減少。

 

だったそうです。つまり、ちゃんと意識すれば人間の座りっぱなし習慣は変えられるってことですね。これはなかなか素晴らしい結果ですね。

 

さらに、気になる健康面の変化をチェックしておくと、参加者のインスリン感受性がガッツリ改善したんだそうな。これはかなり重要な指標でして、

 

  • 糖尿病リスク
  • メタボ
  • 心血管疾患

 

などと強く関連しますんで、たった40分の座り時間削減でも代謝にプラスだったってのは、わりとうれしいニュースじゃないでしょうか。

 

さらにもう一つ、研究者が注目したのが代謝柔軟性という能力で、これは状況に応じて燃料を切り替える能力のことです。ご存じのとおり、人間のエネルギー源ってのは主に脂肪と糖質の2つがありまして、

 

  • 低強度の運動 → 脂肪を燃やす
  • 高強度の運動 → 糖質を使う

 

という感じで、運動の強さによって燃料の切り替えがスムーズに行われるのがベスト。その理由は単純でして、

 

  • 脂肪 → ほぼ無限
  • 糖質 → 貯蔵量が少ない

 

からです。マラソンとか自転車の競技で「燃料が切れて体が動かなくなる」って状態が起きやすいのは、だいたい糖質が枯渇しちゃうからなんですよね。なので昔からスポーツ科学では、「脂肪燃焼能力を高めよう!」って話がさんざん言われてきたわけです。

 

つまり、脂肪と糖質を自由に使える体こそが、あらゆる運動に対応できる理想的な体なのだって話でして、これを代謝柔軟性の高い体と呼んでいるんですね。

 

で、今回の実験がどうだったかと言いますと、残念ながら、座る時間を減らしただけで代謝柔軟性が劇的に改善したわけではなかったんですけども、

 

  • 座る時間を30分以上減らせた人だけを見ると、代謝柔軟性が改善していた

 

って結果が出ているんですよ。もうちょい詳しく言うと、座り時間を減らした人は、

 

  • 座る時間を減らした人 → 血中乳酸が低下
  • 乳酸が下がるほど → 代謝柔軟性が改善

 

という関係が見られたんだそうで、これはちょっと注目すべきポイントでしょう。ミトコンドリアは細胞のエネルギー工場なので、ここが元気だと「脂肪燃焼」と「糖代謝」の切り替えがうまくいくはずですからね。

 

 

結局、私たちはどれぐらい立てばいいのか?

ということで、今回の研究を見ると、「1日30分の座り時間削減でも効果があるかも?」と言えそうであります。これはわりと朗報だと思ってまして、それというのも、

 

  • 完璧なプロトコルを探す必要はなく、できる範囲で動けばOK

 

って話になるからです。おおまかなガイドラインとしては、

 

  • 30〜60分ごとに立つ:目安としてはポモドーロ1回ぐらい。
  • 立つついでに30〜60秒歩く:トイレや水を取りに行く程度でもOK。

 

ぐらいを守るだけでも、代謝柔軟性には違いが出るんじゃないでしょうか。もちろん、この実験の参加者が行ったように、スタンディングデスクの導入や階段の利用といった小さな環境改善を実践してみるのもいいでしょう。

 

ここから、さらに代謝柔軟性を上げようと思うのであれば、合わせてZone2トレーニングを試してみるのもアリです。これは、「会話はできるけどちょっと息が上がる」ぐらいの運動を意味してまして、たとえば、

 

  • 軽めのランニング
  • サイクリング
  • 速歩

 

などが代表的っすね。実際のところ、持久系アスリートは、トレーニングの大半をこのゾーンで行ってますんで、代謝柔軟性の改善については定評がありますんで。

 

ってことで、今回の研究をざっくりまとめると、

 

  • 座る時間を40分減らしただけでも代謝は改善する

  • 30分以上減らすと代謝柔軟性も改善の兆しが見られる

 

という感じですね。「座りすぎ問題」はまだ研究が進んでいない分野ですが、少なくとも言えるのは、ちょっと立つだけでも体はちゃんと変わるってことでしょう。完璧なルールを探すより、

 

  • 1日30分多く歩く

  • 1時間に1回立つ

 

みたいな軽い介入の積み重ねを目指すのが、一番効率が良さそうであります。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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