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チェーンとバンドは本当に筋力を伸ばすのか?可変抵抗トレーニングをメタ分析で検証してみたらどうなった?

 

 

ガチ系のジムでは、最近ゴムバンドやチェーンを見かけることも増えてまいりました。バーベルの両端から太いゴムバンドが床に固定されてたり、プレートの代わりに、鎖(チェーン)がぶら下がっていたりという、上の画像みたいなヤツですな。

 

これは俗に「可変抵抗トレーニング」と呼ばれる方法で、1990〜2000年代のパワーリフティング業界でめっちゃ流行った手法。動作の途中で負荷の強さを変えられるため、筋肉にかかる力を動作全体で高く保てるため、そのおかげで筋トレがはかどるのではないかと言われております。

 

では、この方法はどこまで役に立つのか?ってことで、新たに発表されたメタ分析(R)では、この疑問にガッツリ答えてくれてますんで内容をチェックしてみましょう。

 

このメタ分析は、過去に行われた31の研究から698人のデータを統合して分析したものです。簡単に説明しておくと、バンドやチェーンを使ったトレーニングの最大の特徴は「可変抵抗」でして、簡単に言えば「動作の途中で負荷が変わる」という状態のことです。

 

たとえば、スクワットをする時を考えてみましょう。ここで通常のバーベルを使うと、足の筋肉にかかる負荷は常に一定じゃないですか。しかし実際にスクワットをやってみるとわかりますが、

 

  • 一番しゃがんだ位置だと、トレーニングが一番きつい
  • ヒザを伸ばして立ちきる直前だと、トレーニングは一番ラク

 

って感じになるじゃないですか。人体の構造上、どうしても関節の角度やテコの関係によって負荷は変わってくるんですよね。

 

そこで、チェーンやバンドをつけるとどうなるかと言いますと、

 

  • 一番しゃがんだ位置だとチェーンが床に落ちるので、負荷が軽くなる
  • ヒザを伸ばして立ちきる直前だとチェーンが浮くので、負荷が重くなる

 

って感じになりまして、つまり動作がラクになるほど負荷が増えるわけですな。これが筋トレの成果を伸ばすのではないか?と、ガチ勢は考えているんですね。

 

それでは、分析の結果を見てみましょうー。

 

  • バンド・チェーンを使ったトレーニングは、通常のトレーニングよりも筋力の伸びがわずかに大きい
  • その効果量はSMD = 0.28(小さいが有意)

 

ということで、ざっくり言いますと、「可変抵抗トレーニング」の効果は、フリーウエイトだけを使ったときより、ほんの少しだけ筋肉の力が強くなるって感じですね。

 

さらに、もう一つ興味深い結果としては、

 

  • チェーン → 効果量 0.51(中程度)
  • バンド → 0.15(小さい)

 

みたいな結果も出ておりました。つまり、チェーンの方が一貫して筋力アップの効果が出やすいってことですね。

 

これも面白い結果ですが、その理由として考えられているのは運動学的な違いであります。どういうことかと言いますと、

 

  • バンド=ゴムの反発があるため、バーベルが下に引っ張られる

  • チェーン=単なる重りなので、慣性で動きが安定しやすい

 

みたいな差があるんで、この違いが筋力発達に影響している可能性があるんですな。まだ研究数が少ないので「チェーンが絶対に優れている」とまでは言い切れないとこではありますが。

 

さらに、もう一つ重要なポイントをチェックしておくと、この研究では可変抵抗の割合を3つに分けております。

 

  • 低い:0〜20%
  • 中程度:21〜37%
  • 高い:37%以上

 

その上で分析したところ、最も効果があったのは「可変抵抗 ≤20%」だったんだそうな。どういうことかと言いますと、

 

  • 100kgのスクワットをする場合は、そのうち20kgをチェーンにする

 

ぐらいのイメージですな。逆に言えば、「バンドだらけ」とか「チェーンだらけ」みたいな極端な設定は、筋力向上ではそれほど有利に働かなかったそうな。

 

なぜこの方法に多少なりとも効果があるのかと言いますと、研究チームは主に2つの可能性を挙げておられます。

 

  1. 負荷の偏りを均一にするから:上記の通り、通常のバーベルを使うと体の位置によって筋肉の負荷が変わるんだけど、可変抵抗の場合は動作全体で高い力を出し続けることができるため、筋力発達に有利になる可能性がある。

  2. 「変化」が運動学習を促す:スポーツ科学では、昔から「練習に変化を入れると学習効率が上がる」という考え方がある。たとえば、「同じ距離だけシュートする」と「毎回距離を変える」って場合を比べると、後者の方が上達しやすいことがわかっている。これは筋トレでも同じで、「普通のスクワット→チェーンスクワット→バンドスクワット」のように少しずつ変化を入れると、神経系がより効率よく適応する可能性が高い。

 

いずれも納得の結果でして、この研究を現実に活かすのであれば、こんな感じになるでしょう。

 

  • バンド・チェーントレーニングのメリット
    • 筋力の伸びがわずかに大きい
    • ジャンプ力向上
    • フォース出力増加

 

  • 可変抵抗の基本ガイドライン
    • おすすめ設定は「可変抵抗」20%以下
    • 種類はチェーン優先で、スクワット、ベンチ、デッドなどをやるのがよい
    • 使うタイミングは、大会やMAXテストから遠い時期で使うのがよさそう。

 

個人的には、実践がめんどうなので可変抵抗トレーニングをすることはないですが、トレーニングに少し変化を入れるって意味では、かなり面白いツールじゃないかと思っております。もしあなたの筋トレが少しマンネリ化しているなら、一度試してみる価値はあるかもしれませんな。

 

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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