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筋肥大に炭水化物はどこまで必要なのか? 筋トレと糖質摂取の関係を調べたメタ解析を読んでみよう!

   


筋トレをしていると、よく「筋肉を増やしたいなら、炭水化物をしっかり食べろ!」みたいなアドバイスを受けることがあるはず。「筋肥大したいなら、とにかく糖質を入れろ!」みたいな考え方ですね。

 

その理由としてよく挙げられるのは、

 

  • 炭水化物でトレーニングのエネルギーが増える
  • インスリンが出て筋合成が促進される
  • グリコーゲンが回復して筋肥大が進む

 

といった感じでして、なかなか納得感があるわけです。実際、フィットネス界では「高炭水化物=筋肥大に有利」というイメージがわりと根強い気がしますな。

 

ところが、近ごろ出たメタ分析(R)が、この常識にちょっと待ったをかけてきましたんで、今回はその研究をざっくり見ていきましょう。

 

 

炭水化物で本当に筋肉は増えるのか?

これはSports Medicineに掲載された系統的レビュー&メタ分析でして、研究チームは「炭水化物の量が多いほど筋肥大は大きくなるのか?」という疑問を、これまでの研究をまとめて検証してくれたんですな。その内容をざっくりとまとめとくと、

 

  • 分析に使われた研究は11件。対象は18〜65歳の健康な成人

  • 実験では6週間以上の筋トレが行われている

  • 筋トレをしつつ、炭水化物をたくさん摂取するグループと vs 炭水化物が少ないグループで違いを比べる

  • タンパク質摂取量はどちらのグループも同じ

 

みたいになってまして、「タンパク質が同じなら、炭水化物の量だけで筋肥大に差が出るのか?」って問題をかなりストレートに検証したわけです。これは私も気になってたんで、実にありがたいですな。

 

 

さて、さっそく結論を見てみると、これがかなりシンプルなものになってまして、

 

  • 炭水化物の量と筋肥大には有意な関係なし。

 

だったそうです。もうちょい詳しく説明しておくと、

 

  • 効果量:SMD = 0.15
  • 95%信頼区間:−0.10〜0.40
  • p値:0.23(有意差なし)

 

みたいな数値が出てまして、簡単に言えば「炭水化物が多いから筋肉が増える、という明確な証拠は見つからなかった!」って話ですね。ちなみに、さらに研究間のばらつき(異質性)もほぼゼロだったんで、「研究によって結果がバラバラ」というわけでもなさそうであります。ちょっと意外ですなぁ。

 

念のため、研究チームはいろいろな追加分析もしてるんですけども、結果はほとんど同じです。どんな分析をしても炭水化物によって筋肉が増えるって効果は確認されない、ってのが今回の結論ですな。

 

 

なぜ炭水化物で差が出ないのか?

というわけで、なかなか不思議な結果が出てますけども、その理由として研究チームはいくつかの可能性を挙げておられます。

 

  1. 筋トレではグリコーゲン枯渇がそこまで大きくない:持久運動と違って、筋トレではグリコーゲンの消費が限定的なことが多め。つまり、炭水化物を増やしてもトレーニングパフォーマンスがそこまで変わらない可能性がある。

  2. 炭水化物量の差が小さい:研究の多くでは、「高炭水化物」と「低炭水化物」といっても、実際には差がそこまで大きくなかったりします。なので、もっと極端な条件なら結果が変わる可能性もゼロではないんでしょうな。

  3. 水分量の影響:炭水化物を多く食べると、筋肉内のグリコーゲンと一緒に水分も増えがち。そのため、筋肉量が増えたように見えても、実際には水分差を見ているだけのケースもありえるかも。

 

こうして見ると、「じゃあ炭水化物は不要なのか?」って気にもなるわけですけども、ここで誤解してはいけないのが、この研究は炭水化物は筋肥大の「独立した要因ではない」ってのを示しただけだよーってところでしょう。筋肥大に必要な栄養で最も大事なのは、

 

  • 総カロリー
  • タンパク質

 

って2つでして、この両方が十分に満たされているなら、炭水化物の量はかなり自由度が高いと考えたほうがいいんだろうなーってのが個人的な結論であります。

 

 

筋トレする人の実用的な結論

というわけで、今回の研究を踏まえると、筋トレ中の栄養戦略はかなりシンプルになるでしょう。ざっくりまとめると、

 

  1. まずはタンパク質がマストなのは変わらずなので、1日体重(kg) × 1.6〜2.2g / 日あたりを目指す。

  2. 次に大事なのが総カロリーなので、筋肥大したいなら軽いカロリー余剰を作ることを心がける。

  3. 炭水化物は筋肥大そのものというより、トレーニングパフォーマンス、疲労回復、持久力の維持などのために使うものなので、目的によって量を変える

 

みたいになります。この考え方に照らすと、炭水化物の使い分けは以下のようになりますかね。

 

  • 高炭水化物が向く人
    • ボリュームの多い筋トレをする人
    • クロスフィットのような高強度トレーニングを行う人
    • 持久系トレーニングも並行している人

 

  • 炭水化物がそこまで多くなくてもよさそうな人
    • 短時間の筋トレが中心の人
    • 減量やカロリー制限中の人

 

いずれにせよ、筋肥大に重要なのは、やはり総カロリータンパク質だと思いますんで、現時点では「筋肉のために炭水化物を無理して増やす必要はなさそう」という理解でいいんじゃないでしょうか。

 

まぁ、この研究は、女性の研究が少なかったり、高齢者の研究が少なかったり、長期の研究が少なかったりといった問題があるので、将来的に結論が少し変わる可能性もなくはないでしょう。とはいえ、現時点の実用的な判断としては、タンパク質と総摂取カロリーをまず整え、そのうえで炭水化物は好みや運動内容に合わせて決める、で十分でしょうな。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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