現実は思ったよりテキトーに作られているから気楽に行け!という内容の本を読んだ話
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『“いま”を探す(In Search of Now)』って本を読みました。著者のジョー・マーチャントさんは科学ジャーナリストで、本書は「“今この瞬間”って実はかなり曖昧で、しかも脳が作ってるものなんだぜ!」というテーマを神経科学や心理学の研究をベースに解説しております。私の「無(最高の状態)」とか「YourTime」に近い問題意識ですね。
「今を生きる」とか言うとスピリチュアルっぽく聞こえがちですが、本書のスタンスはかなり科学寄りで、「私たちが感じている“現実”ってのは思ったより主観的で、自分で編集してる部分が大きいよねー」という話がメインになっております。なんか抽象的っぽく響くものの、この視点は日常のストレス対策とかメンタル管理にも使えそうだと思ってまして、意外と実用的な本じゃないかなー、と。
というわけで、今回も本書から勉強になったところをチェックしてみましょうー。
- 本書の中心的なメッセージは、一言で言うと「“今”は時間ではなく、脳が作る“体験のかたまり”だ!」というものである。私たちはつい、「今」というのは世界に客観的に存在していると思いがちですが、実際にはそうではない。人間が“今”と感じているものは、私たちの脳が「感覚(視覚・聴覚など)」「記憶」「予測」といった要素を組み合わせて、「それっぽい現在」を作り出しているものだからである。
たとえば、運動盲という症状に悩んでいる人は、世界がコマ送りのように見えることが知られている。これは、運動盲の脳は、視覚情報を時間的に統合して連続した動きとして処理する機能がうまく働かず、個々の静止したフレームとしてしか認識できないからである。運動盲はあくまで特殊な例だが、このような“時間の補完と編集”のプロセス自体はあらゆる人の脳内で起きている。つまり、私たちが感じている「滑らかな時間」は脳の編集の結果にすぎない。
- ここで重要なのは、「“今”は固定されたものではない」という点と、「“今”は注意や状態によって簡単に変わる」という点である。たとえば、楽しいことをしていると時間が一瞬で過ぎるのに、退屈な会議では時間がやたら長く感じられるように、同じ1時間でも主観的な“今”の質は大きく変わる。なので、もしあなたが今「時間に追われてる感覚」に悩まされているなら、それは現実の問題というより、脳の「“今”を作る機能」が乱れているのかもしれない。
- さらに、「“今”」とは単なる時間の一点ではなく、過去・現在・未来が同時に混ざった状態だと言える。たとえば、あなたがコーヒーを飲む瞬間には、「味覚(現在)」「昔の記憶(過去)」「この後の予定(未来)」といった3つの情報が同時に処理され、それが「コーヒーを飲む」という体験の質を決めている。これは「時間統合」と呼ばれる現象で、人間の脳は複数の時間スケールをまとめて扱うようにできている。
- ここから言えるのは、よく自己啓発のアドバイスで言われる「今だけに集中せよ!」という言説は少し雑だということである。上述のように、私たちの“今”は過去や未来も含めて構成され、過去の経験や未来の予測をもとに意味を引き出すことで、初めて“今”を理解している。つまり、「人間らしさ」とは“時間を編む力”にあるとも言えるため、それらの文脈を完全に切り捨ててしまうと、かえって体験の意味や深みが失われてしまう。
- 多くの人は「記憶=保存されたデータ」と思ってますが、実際の記憶は「思い出すたびに作り直される」という性質を持っている。たとえば、昔の出来事を友人と話していたら「あれ?そんなことあったっけ?」のように、お互いの記憶が食い違うといった経験は、誰にでもよく見られる。実験でも、存在しない映像を「見た」と思い込むケースは普通にあるし、同じ出来事でも人によって記憶が異なることも珍しくないことが示されている。
- このような記憶の再構成は、「今の気分」「信念」「状況」に強く影響される。たとえば、落ち込んでいるときには過去の出来事もネガティブに思い出されやすく、逆に気分が良いと同じ出来事でもポジティブに感じられる。この意味で、過去は決して固定された保存データではないことがわかる。このような記憶の働きにはメリットとデメリットがあるが、良い方向に行かすなら、以下の方法が考えられる。
- 嫌な記憶は「意味づけ」を変える:「あの失敗のおかげで今のスキルが身についた」といった形で再解釈することで、感情のダメージを減らす
- 良い体験は繰り返し思い出す:楽しかった旅行や成功体験をあえて思い出して日記に書き出すといったように、ポジティブな記憶を何度も想起することで、その感情が強化され、現在の気分にも良い影響を与える
- 新しい視点で過去を再解釈する:「もし友人が同じ経験をしたらどうアドバイスするか?」と考えるといったように、他人の視点や時間の経過を利用して「別のストーリー」として捉え直すことで、柔軟な思考が育つ
- もうひとつ重要なのが、私たちの体験は、身体と環境の相互作用で決まるという点である。たとえば視覚ひとつとっても、「目を動かす」「触る」「姿勢を変える」といった行動がなければ、意味のある認識は成立しない。実際、長年失明していた人が視力を回復しても、最初は「何を見ているのか理解できない」という現象が起きることが知られている。これは、視覚情報を解釈するための身体的な経験と学習が不足しているため、単なる色や形の集合としてしか認識できないからである。つまり、世界は“見るもの”ではなく“関わるもの”なのだと言える。
- そのため、現実感が薄かったり、日常でぼーっとしがちな人は、「触覚に意識を向ける」や「身体を動かす」「五感を使う」といったアプローチがかなり効く。日々に虚無感を抱いているなら、散歩しながら足裏の感覚に集中したり、温かいお風呂にゆっくり浸かるなど、身体感覚を意識的に使う習慣を取り入れるといった対策を行ってみるのが吉。
- 最後に重要なポイントとしては、「私たちは現実を観察しているだけでなく、作っている」というものがある。たとえば、「コーヒーを飲む」「誰かに連絡する」「どこかへ行く」といった日常の小さな選択ひとつで、未来の展開は変わる。たとえば、たった一本のメッセージを送るかどうかで人間関係が広がったり、行動ひとつでキャリアの方向性が変わることもある。要するに、現実は固定されたものではなく、選択によって分岐するプロセスである。これは逆に言えば、無力感を感じているときほど小さな選択に意味があるということでもあるため、まずはコントロール可能な小さな行動から変えていくことが有効だと言える。
ということで、本書の内容をざっくりまとめると、
- 「今」は脳が作っている
- 体験は時間のミックスでできている
- 記憶は書き換え可能
- 現実は身体と行動で変わる
みたいな感じっすね。「“今”はコントロール不能なものではなく、ある程度は設計できる体験だ!」みたいな考え方は、ここらへんは個人的にもめっちゃ重要だと思ってまして、興味のある方は拙著「無(最高の状態)」と「YourTime」を参照していただくと楽しいんじゃないかと。



