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先延ばしの正体は「やる気不足」とは関係ないから、もっと感情にフォーカスしようぜ!という研究の話

   


つい先延ばしをしてしまう……って悩みは定番中の定番。私も原稿の締め切りが迫っているのに、なぜか部屋の掃除を始めてしまうことが多く、「人間は非合理!」とよく思っております。

 

そのための対策はいろいろありまして、拙著「人生を変える科学的な集中術」にも詳しく書いたところです。が、このテーマについては、最近も面白いデータ(R)が出てたんで、ここらへんの話をまとめておきましょう。

 

これはカールトン大学などの調査で、先延ばしの原因について調べたもの。研究チームは、参加者の日常的な行動と感情を追跡しつつ、以下のポイントを分析したんだそうな。

 

  1. 目の前のタスクに対してどのような感情を持ったか。たとえば、やりたくない、失敗しそう、つまらない、など。

  2. 上記の感情を抱いた後で、どのような行動を取ったか。たとえば、タスクに取り組むのか、それとも別の行動に逃げるのか、など。

  3. 上記の行動をした後で、感情はどのように変化したか。たとえば、一時的に気分が良くなるか、または罪悪感やストレスが増えるか、など。

 

というわけで、今回の研究では「先延ばしとネガティブな感情」の関係をチェックしているわけですね。というのも、ここ数年の研究では「先延ばし=時間管理の問題ではない」って考え方のほうが優勢で、先延ばしを「嫌な感情を避けようとして起きるもの」としてとらえるようになってるんですよ。たとえば、

 

  • 面倒な仕事に手をつけようとした瞬間に、なぜかスマホをチェックし始める
  • レポートを書かなきゃいけないのに、急に部屋の掃除が気になり出す
  • 失敗しそうなタスクほど、ギリギリまで放置してしまう

 

みたいなことはよくあるじゃないですか。このように、私たちはネガティブな感情から気をそらすために、目の前のタスクから逃げようとしてしまい、それが先延ばしになっちゃうってことですね。

 

でもって、上のように先延ばしの原因を分析したところ、以下のような特徴が見られたんだそうな。

 

  • 先延ばししやすい人ほど、目の前のタスクに対して不安・退屈・自己不信などのネガティブ感情を抱きやすい
  • その不快な感情を避けるために、別の行動(スマホ・掃除・SNSなど)に逃げ、結果としてタスクの達成が遅れていた

 

つまり、先延ばしとは「やる気の問題」ではなく、「感情のコントロールの問題」だって傾向が確認されたわけっすね。

 

では、具体的にどんな感情が問題なのかってことで、研究では、特に以下の3つが重要だとされております。

 

  1. 不安:「うまくできるだろうか…」みたいな感情のこと。この不安が強いほど、人はタスクから距離を置こうとする。

  2. 退屈:単純に「つまらない」という感情。脳は退屈を嫌うので、より刺激的な行動(スマホなど)に流れやすくなる。

  3. 自己疑念:「どうせ自分には無理」という思い込みによる感情。これがあると、そもそもタスクに取りかかる気力が削がれてしまう。

 

いずれもタスクに対して生じるネガティブな感情であり、これらを避けようとする行動が先延ばしを引き起こすという話ですね。

 

で、ここで重要なのが「短期報酬」の問題であります。人間の脳ってのは、

 

  • 不快を避けて、今すぐ楽になりたい!

  • 快を求めて、今すぐ気持ちよくなりたい!

 

という方向に進む性質を持ってまして、面倒な仕事からは逃げたくなり、すぐ楽しくなるSNSのようなものに意識を向けるんですよね。これを心理学では「気分修復」と呼びまして、要するに先延ばしってのは、この気分修復の一種なんですな。

 

ということで、この研究を見る限り、先延ばし対策の正しい方法は「感情の扱い方を変えることである」って結論になるわけでして、具体的には以下のような方法が使えるでしょう。

 

  1. タスクを極限まで小さくする:人は「大きなタスク」に対して強い不安を感じるので、「レポートを書く」んじゃなくて「1行だけ書く」みたいに分解すると、感情的ハードルが一気に下がる。私も原稿を書くときは「とりあえず1段落だけ」と決めております。

  2. 「不快な感情」をそのまま受け入れる:これはマインドフルネス的な観点で、たいていの人は「不安がある」や「やる気が出ない」といった感情を「排除しよう」とするほど、逆にネガティブな感情が強くなるので、「あー今めっちゃやりたくないな」と、そのまま観察するとOK。これだけで、感情に振り回される度合いが下がる。

  3. 未来ではなく「今のコスト」を減らす:多くの人は、「終わったら達成感がある」「やれば成長できる」みたいに、未来のメリットで自分を動かそうとしがち。しかし、脳は未来より「今の苦痛」に敏感なので、作業環境を快適にしたり、好きな音楽を流したり、カフェで作業したりなど、「今の不快」を減らす方が効果的に働くことが多い。

 

そんなわけで今回の話をまとめると、

 

  • 先延ばしは、時間管理ではなく感情の問題である

  • 特に「不安・退屈・自己疑念」がトリガーになるので、セルフモニタリング必須

  • 解決には意志力よりも感情の扱い方が重要

 

といった感じですね。正直なところ、先延ばしは人間の脳の仕様みたいなものなので、完全になくすのはかなり難しいんですが、「先延ばし=感情の回避だ!」と覚えておくだけでも対策の一助になるんじゃないかと思う次第です。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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