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速読のトレーニングは時間のムダ!その時間を読書に使ったほうがいいですよ!という研究

O CHILD READING

 

「速読ができたらいいなー」と昔から思ってるんですが、どうにもこの世界にはうさん臭い業者が多いのが難点です。フォトリーディングみたいに科学的な根拠がないのにセミナーが10万円もしたり、資料請求のあとにスピリチュアル系の集会へ勧誘してくる業者も多いそうで、まことに魑魅魍魎が飛び交う世界になっております。

 

 

周辺視野を鍛えても読書スピードは上がらない 

が、近ごろ出た論文(1)を読んでたら、「速読なんてただの飛ばし読みでしかない!」とバッサリ切り捨ててまして非常にスッキリしました。これはカリフォルニア大の研究で、過去に行われた速読の実験データを調べたレビュー論文であります。

 

 

これによると、たいていの速読術は目の動きを鍛えて周辺視野を使うように指導するんだけど、そもそもこの時点から大間違い。全体の読書時間のなかで、目の動きの重要性は10%以下しか占めてないんだそうな。また、普通の人は同じ文章を何度か読み直しながら理解を深めていくため、速読でガンガン先に進むと最終的な理解度が低くなっちゃうとのこと。

 

 

ここで笑ったのが、研究者が例に出している速読チャンピオンの例です。なんでも2008年に発行の「ハリー・ポッター」最新刊にチャンピオンが挑んだところ、たった47分で一冊を読みきったうえで、小説の内容を次のようにまとめたんだそうな(2)。

 

これは本当にページをめくる手が止まらない一冊。最高に楽しかった。子供たちには大人気でしょうけど、ちょっと悲しいシーンもありますね。

 

うーん、コントみたいな話ですな。もちろんこれは極端な例でしょうが、どうも速読が本の理解度を下げちゃうのは間違いないみたい。

 

 

速読は飛ばし読みがうまくなっただけ

研究者いわく、

 

これまでの研究をまとめると、速読のトレーニングにより、深い理解を保ったまま読書のスピードが上がるという科学的な根拠はない。速読で早く読書が終わったとしても、それは単に飛ばし読みがうまくなっただけだ。

 

本を読むのが速い人たちは、もとから本の内容について大量の知識を持っている。そのため、飛ばし読みにともなう理解度の低さを補うことができるのだ。(中略)

 

飛ばし読みは、大量の情報を処理するための重要なスキルだ。しかし、飛ばし読みをする場合は、速読と理解度のトレードオフを受け入れなくてはならない。

 

 

とのこと。つまり、

 

  1. 本を早く読むには飛ばし読みしかない
  2. しかし、飛ばし読みが上手くなるには、大量の本を読む必要がある
  3. 結局、本を速く読むためにかかる総時間数は変わらない

 

という結論になりそう。読書に近道なしですねー。

 

 

まとめ

そんなわけで、速読トレーニングは意味がないというお話でした。速読の訓練に時間を使うなら、そのあいだに本を読んだほうが身になりそうであります。

 

 

ちなみに経済学者のタイラー・コーエン教授が「本を速く読む方法」って文章を書いてまして、こちらも似たような結論を出しております。楽しいエッセイなんで、あわせてご参照ください。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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