「成功するから幸せになるんじゃない!幸せな人間が成功するのだ!」説は長期的にどうなの?問題
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「成功するから幸せになるんじゃない!幸せな人間が成功するのだ!」って説があります。ハーバード大のショーン・エイカー教授が提唱してる話で、TEDの動画などでも有名ですね。
大規模な調査で「幸福=成功」の公式は確認されたのか?
この説は、エイカーさんが世界51カ国の成功者を調べたデータにもとづいてまして、くわしくは「幸福優位7つの法則」にまとめられております。世界中でバカ売れした本で、当時はわたしも楽しく読んだものです。
ただしエイカーさんの主張は、ほぼ短期的なデータしか扱ってないのが難点なんですよね。もっと長期的に成功と幸福の関係を調べた調査はないかなーと思ってたら行き着いたのが、2005年の論文であります(1)。
著者は「人生を「幸せ」に変える10の科学的な方法」で有名なリュボミアスキー博士。ポジティブ心理学の大家と呼ばれる方ですね。
これは過去に行われた225件の研究データを使った系統的レビューで、参加者の数は75,000人以上。後で知ったんですが、ポジティブ心理学の世界では有名な論文なんだそうな。
長期的には幸福と成功の関係は弱くなる?
さて、肝心のデータは表4にまとまっておりました。わたしが気になったところを並べていきますと、
- 成功レベル:収入や仕事の成績などは、幸福な人のほうが短期的には上がる可能性がある(効果量0.20)。しかし、3カ月〜8年の長期的なスパンでみると、幸福の高さと成功レベルはあんま関係なくなる(効果量0.05)。
- 創造性:幸福な人のほうが短期的に少しだけクリエイティビティが上がる(効果量0.24)。しかし、3カ月〜8年の長期的なスパンでみると、幸福の高さと創造性はあんま関係がなくなる(効果量0.06)。
- 健康:幸福な人のほうが短期的に少しだけ健康になる(効果量0.32)。しかし、3カ月〜8年の長期的なスパンでみると、幸福の高さと健康はあんま関係がなくなる(効果量0.09)。
といった感じ。1日〜1週間ぐらいは幸福感のおかげで仕事の成績はあがるものの、長期的に見たら、成功レベルや創造性、健康のいずれとも関係が低くなるかもしれないらしい。うーん、難しい。
もっともこの論文では、幸福がヒトの能力を上げたって実験も山ほど紹介されております。たとえば幸福度が高い人たちは、
- 自己開示が上手いのでコミュニケーション力も高くなる
- 他人との衝突を上手く回避しやすい
- 他者を助けるケースが多い
といった傾向が高いみたい。その点で幸福には、コミュニケーション能力アップの面でアドバンテージが大きいのかも?ってとこですか。