「人種差別」をすると早死にする確率があがる
無意識の差別でも体を壊す
「差別は体に悪い!」って論文(1)がおもしろかったんでメモ。どうやら、差別というものは、するほうもされるほうも健康によくないらしいんですな。
これはアメリカに住む140万人を対象にした研究で、10年分の健康リサーチを使ったもの。この数字と、以下の調査データを比較したらしい。
- 潜在バイアス:無意識に持ってる差別傾向
- 顕在バイアス:自分でも意識してる差別傾向
「無意識の差別傾向なんて調査できるの?」と思っちゃいそうですが、これに関しては、ハーバード大がずっと「プロジェクトインプリシット」(2)って研究をしております。
プロジェクトインプリシットは、誰もが無意識のうちに抱いてる「偏見」や「差別心」の統計を取る研究で、具体的には、「IATテスト」って方法を使って、その人が持ってる無意識の偏見を数値化していくのが基本。このテストをやると、いくら普段は「自分は平等だ!」と言ってる人でも、実際は、人種や性別などに対して偏った思考を持っるたことがバレちゃうんですな。
というと怖い感じもしますが、そもそも無意識に偏見を持ってない人なぞはまず存在しないんでご安心ください。もともとヒトの脳は、いろんな情報を区別して処理していくのが得意な器官なんで、どうしても偏見が生まれてしまうのは仕方ないところです。
というわけで、わたしたちにできるのは、がんばって自分の潜在的な偏見を意識して、理性の力でコントロールしていくことだけ。「IATテスト」は日本語で試せますんで、まずはご自分の傾向をチェックしてみると、いい感じです。
どんなタイプの「差別」でも体には良くない
さて、以上のデータセットを組み合わせたうえで、年齢や教育歴、収入、居住環境などの変数を調整したところ、
- 差別傾向が高い人が集まる地域ほど、心疾患による死亡率が高い
- 差別をする側もされる側も、早期死亡率は高くなる
- ただし、当然ながら、差別をされる側のほうが早期死亡率は高い
みたいな傾向があったらしい。さらには、
- 顕在バイアスのほうが全体の死亡率を高める
- 潜在バイアスも、それなりに死亡率を高める
といった違いも出た模様。いずれにせよ、どんなタイプの「差別」でも体には良くないんだ、と。
研究者いわく、
今回の研究は、人種差別が多くて敵意に満ちた環境にいると、差別される側も差別する側も健康に悪影響が出る可能性を示している。
とのことで、「敵意」によるコミュニティの信頼感の喪失を、死亡率アップの原因としてとらえてるみたい。
もちろん、これはアメリカの話なんで、ヘルスケアの仕組みが違う日本にもどれだけ当てはまるかは不明。とはいえ、敵意に満ちた状態が心臓に良くないのは当然かと思われますんで、まずは「IATテスト」で自己診断でもしてみちゃいかがでしょ。