「クリエイティブな人ほどメンタルが弱い」はどこまで本当なのか?
クリエイティブと鬱の関係
昔から「クリエイティブな人は鬱の傾向があるのでは?」って考え方があるんですよ。例えばゴッホとかヘミングウェイとか、ちょっと考えただけでも鬱気質な天才はいくらでも思いつくわけです。
ってところで、近ごろ「鬱とクリエイティブ」の関係を徹底的に調べた論文(1)がありまして、いろいろ勉強になりました。
これはオールバニー州立大学の研究で、「鬱病と創造性の関係」について調べた過去の論文から、信頼度が高い36件を抜き出して精査したもの。毎度おなじみのメタ分析になっていて、データの質はわりと高めであります。
クリエイティブな人ほど気分が落ち込みやすい
まず、どんな研究をしたかと言いますと、
- 美大生
- 小説家/シナリオライター
- クリエイティブ職の有名人
などを調べまくって、「クリエイティブ系の人は本当に気分障害が多いの?」ってとこをチェックしたんですな。
その結果は、ズバリ「相関関係アリ」というもの。音楽の能力や拡散思考(新鮮なアイデアを思いつく能力)が高い人ほど、鬱の傾向があったらしいんですな。いちおう効果量も中から大ぐらいは出てまして、かなり信頼してよさそう。
気分障害といってもいろいろありますが、なかでもクリエイティビティと関係があったのは「双極性障害」だったそうで、これもおもしろいところ。いわゆる躁鬱病ですな。
逆に「気分変調症」(軽い鬱状態がダラーッと続く状態)なんかはクリエイティビティと関係がなかったみたいで、すべての気分障害が創造性に結びつくわけじゃいっぽい。おもしろいもんですな。
かといって鬱がクリエイティビティを高めるわけではない
ただ、この研究では別のメタ分析もしてまして、「メンタルが健全な人とくらべた場合、気分障害の人たちは創造性が高いの?」ってところも調べております。ひとつめの研究とは違う角度からチェックしてみたわけですな。
こちらでは数百万人分のデータを分析してまして、どんな結論が出たかと言いますと、
- 全体的にみれば、気分障害と創造性には相関があまりなかった
- 絵のクリエイティビティについては、気分障害との関係があった
- 双極性障害と大鬱病は、やっぱりクリエイティビティと多少の関係があった
だったそうな。なんだか1番目の結果と矛盾しているようですが、簡単にまとめると、
- クリエイティブな人は気分障害になりやすいが、気分障害のおかげでクリエイティビティが上がるとは限らない
ってことでしょうか。まぁこの研究だと「気分障害がクリエイティビティを向上させるのか?」ってとこまではよくわからんですな。
結局、何がクリエイティビティを高めるかはわからん
ただし過去の話でいえば、
といった事例もありますんで、もしかしたら気分障害のおかげで世界を別の視点で見られるようになる可能性はなきにしもあらず(上のデータは統合失調症の事例ですが)。ただし、過去のデータでは「ポジティブな気分じゃないと創造性は上がらない!」ってデータも多いので、気分障害がクリエイティビティを上げるかどうかは、もうちょい実験が必要な感じっすね。
研究者いわく、
気分障害でもクリエイティビティが高いケースはある。しかし、両者は互いに必須の条件ではない。
ってことで、とりあえず「クリエイティブな人ほど鬱になりやすい」ってのは間違いなさそう。とはいえ、無理やり気分を落ち込ませたところで創造性は上がらないようなので、
あたりを参考にしていくのがよさげですかねー。