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「骨格が良い人ほど筋肉が増えやすい」は本当か?

  
 

最近、「骨格を見れば、どれだけ筋肉がつくかはだいたいわかる」みたいな話を、トレーニング界隈でよく見かけるんですよ。たとえば、手首が太い人は才能あり、肩幅が広い人は将来ゴリゴリになる、みたいなやつですね。

 

これは、たしかに直感的には納得しやすい話ですして、筋肉は骨にくっつくわけですから、「骨がデカいほうがたくさん筋肉が乗るはず!」と考えるのは自然な発想であります。なので、骨格を見れば、筋肉のつき方がわかるという考え方が出るのは当たり前なんですよね。

 

では、このような考え方がどこまで正しいのかということで、近ごろ面白い研究(R)が出ておりました。

これは、トレーニング経験のない男女119名を対象にした研究でして、参加者の年齢は18〜70歳で、性別の内訳は男性62名・女性57名。みんなに10〜12週間の全身筋トレを週2回やってもらいまして、それと同時に全員の体組成をDXA(デキサ)測定したんだそうな。DXAってのは骨密度検査にも使われる方法で、

 

  • 骨量(BMC)
  • 骨の面積
  • 肩幅(肩峰〜肩峰)
  • 骨盤幅(大転子〜大転子)
  • 四肢の除脂肪量(いわゆる筋肉)

 

みたいなデータをかなり正確に取ることができる、非常にナイスな計測法なんですな。このデザインにより、「骨格が良い人ほど、本当に筋肉がつきやすいのか?」って問題を調べることができるわけです。

 

では、分析の結果、どのようなことがわかったのか?まず結論の前半を見てみると、

 

  • 骨量が多い人ほど、もともとの筋肉量は多い
  • 肩幅が広い人ほど、腕の筋肉量は多い
  • 骨盤が大きい人ほど、脚の筋肉量は多い

 

みたいな感じになります。このへんは相関係数が0.6〜0.9とかなり強めでして、要するに「骨格が立派な人は、たしかに最初からゴツい」って傾向は間違いなくあるわけですね。なので、「骨太=筋肉質に見える」ってのは事実なんでしょう。

 

が、だからといって、骨格が立派な人ほど筋肉が増えやすいかと言えば、それはまた別の話だから難しいもんです。この研究では、以下のような傾向も確認されております。

 

  • 同じ骨格データで、10〜12週間のトレーニング後の結果を見てみると、相関係数は0.1〜0.2以下だった。

 

ということで、ほぼ誤差レベルだったんだそうな。つまり、ここから何がわかるかと言いますと、

 

  • 骨量が多くても、筋肉がめっちゃ増えるとは限らない

  • 肩幅が広くても、筋肥大スピードは普通である

  • 逆に、華奢でも意外と筋肉が増える人がいる

 

って感じですね。というわけで、この結果を見る限り、「骨格を見れば筋肉の増え方がわかる」という仮説は、ほぼ否定されたと言っていいでしょうな。

 

まあ今回の研究が見ているのは、たった10〜12週間の変化なので、この期間で増える筋肉量はせいぜい数百グラムだと申せましょう。このレベルになると、測定誤差とか水分量の変動とかで簡単に数値のズレが起きちゃうので、5年や10年の長期スパンで見たときに、骨格の違いがどれぐらい筋肉に影響するのかはまだ不明であります。なので、まだ「骨格は筋肥大と関係ないんだ!」とか極端に解釈しないように注意したいところですね。あくまで今回の研究は、「短期の筋肥大を骨格で当てるのは無理!」と言っているだけで、「最終的にどこまでデカくなれるか」については、まだ結論を出していないんでご注意くださいませ。

 

ってことで、「自分はこれからどこまで筋肉がつくか?」ってのを予測するのはかなり難しい感じ。そのため、現時点では、骨格から筋肉の増え方を約束するのはあきらめて、「今の自分の筋肉の増え方が順調かどうか」をチェックするぐらいに留めておくのが無難でしょう。今のところ1番使いやすいのは、FFMI(除脂肪量指数)ってやつで、

 

FFMI = 除脂肪体重(kg) ÷ 身長(m²)

 

みたいに計算します。ガチでやりたい人は、どこかのラボでDXAを使って正確な数値を出してもらうと良いでしょうが、一般的には普通に体脂肪計を使ってざっくりした近似値を把握しとけばいいでしょう。多少ラフな数値でも、長期の変化を見るには十分なんで。

 

で、この研究データを見る限り、

 

  • 一般的なトレーニング初心者→ 10〜12週で 1kg前後の除脂肪量増加が確認されている
  • 伸びがいい人→ 同期間で 2kg近く 増えることもある

 

みたいな感じなんで、これを基準にしつつ、

 

  • 明らかに下回ってる → 何かがズレてる
  • 平均的 → OK
  • 上振れ → かなり順調

 

と判断するのが現実的なのではないかと。

 

そんなわけで、今回の話をまとめると、

 

  • 骨格は「今の筋肉量」には影響する
  • でも「短期の伸び」を当てる力はほぼない
  • 将来の上限は、まだ誰にもわからない

 

という感じになりますね。なので、手首が細いから無理とか、骨盤が狭いから終わりだとか、自分の骨格を見てあきらめる理由はないと申せましょう。現時点で我々にできる最善策は、数ヶ月〜数年単位で筋肉の増え方を観察しつつ、もし経過がおもわしくないなら別のやり方をしてみるってだけでしょうなぁ。持って生まれた体格を悩むよりも、淡々とバーベルを握り続けるしかないなーって話ですね。どうぞよしなに。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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