このブログを検索




「全力はムダ?」運動は“7割”が最も効率的なんじゃないか、という研究の話

  

 

かつての私は、「インターバルはとにかく全力でやるべきだろう」などと思っ

ておりました。ゼェゼェ言いながら限界まで追い込むのが正義だと信じておりました。皆さんの中にも、「キツければキツいほど効果があるはずだ!」と考えている方は多いんじゃないでしょうか。

 

が、実は多くの研究では、だいたい「ゆるめの運動を多めにしつつ、たまに強度が高い運動をしよう!」みたいな知見も多く、なかなか判断に困るところではあるわけです。そこで新しい研究(R)では、「運動の強度は“7割”が最適かもしれない?」って面白い提案をしてますんで、これをベースに効率よく持久力を伸ばす方法についてまとめてみましょう。

 

 

「頑張りすぎ」が逆効果になる理由

まず研究チームは、運動の強度をざっくり以下の3パターンに分けております。

 

  1. 軽すぎる(ラク)
  2. ちょうどいい(キツいけど続く)
  3. キツすぎる(すぐ限界)

 

直感的には「一番キツいやつ」が最も身体を強くしてくれそうなイメージがあるわけですが、実際のところはそんな単純な話じゃなかったりします。というのも、持久力のカギを握るのは「VO2max(最大酸素摂取量)」と呼ばれる指標だからでして、これは簡単に言えば、

 

  • どれだけ効率よく酸素を使ってエネルギーを生み出せるか?

 

という能力を意味しております。エンジンでいえば「排気量」にあたるような能力っすね。

 

で、このVO2maxを高めるには「最大のつらさに近い状態」をどれだけ長く維持できるかが重要になるんですよ。言い換えれば、できるだけ高い強度の運動をどれだけ長時間キープできるかによって、VO2maxの発達スピードは大きく変わるわけです。

 

となると、ここで問題になるのが、

 

  • 強度が低すぎる → VO2max領域に入らない

  • 強度が高すぎる → すぐバテて時間が稼げない

 

というジレンマであります。楽な運動ばかりしていたらそもそも心肺機能に十分な刺激が入らないし、つらい運動ばかりしていたら長くトレーニングを続けること自体ができないしで、どちらにしても効率が悪いトレーニングになってしまいますからね。

 

 

 

負荷は6・7・8で何が違う?

ということで、今回の研究では、ランナー17人に以下のようなトレーニングを行わせております。

 

  • 3分間のインターバル走 × 3本(合計9分)

  • 強度は主観的な「キツさ」で調整(10段階中6・7・8)

 

ここでいう「主観的なキツさ」ってのは、俗にRPEと呼ばれるもので、自分がどれくらいキツいと感じているかを数値化したものです。さらに詳しくは「心拍計を使わなくても自分の運動レベルは判断できる!「RPE」のススメ」をご参照ください。

 

その上で、みんなの心拍数やVO2maxをチェックしてみたところ、その結果がなかなか興味深いものでして、

 

  • 強度6で運動をしているとき(ややキツいけど余裕ありぐらいの負荷) → VO2maxの90%以上にいる時間が短い

  • 強度7で運動をしているとき(かなりキツいけどコントロール可能ぐらいの負荷) → 長く維持できる

  • 強度8で運動をしているとき(ほぼ限界に近いぐらいの負荷) → 7とほぼ同じ(差なし)

 

ということで、強度が「7」と「8」は効果が同じなのに、「8のほうがキツい」だけだって結果でして、こうして見ると、

 

  • 強度8ぐらいの運動だと、疲労が早く来るため後半で失速しやすくなる
  • 強度7ぐらいの運動だと、ギリギリ耐えられてペースを維持できるため、結果として長く高強度ゾーンにいられる

 

って感じでして、要は10点満点で「7」ぐらいの負荷が最適かもしれないってことですな。これは心理学的にも納得でして、人間のパフォーマンスは「主観的なキツさ(RPE)」に強く支配されますからね。なので「まだいける」と感じる範囲が、実は最も効率がいいってのはよくわかりますな。

 

さらにこの研究で興味深いのが、ペース配分の話であります。この実験では、参加者は「常にキツさが7になるように走る」よう指示されてまして、その結果どうなったかというと、

 

  • 最初は速く走る
  • 徐々にペースを落とす

 

という、いわゆる「ファストスタート型」になる人が多くなったんだそうな。これは普通のトレーニングだとあまりやらない方法なんですが、「VO2maxゾーンに早く入れる」とか「高強度ゾーンの滞在時間が増える」というメリットがあって良い感じなんですね。

 

 

 

この研究をどう実践に活かすか?

では、この知見をどう使えばいいのかってことですが、ポイントをまとめるとこんな感じになります。

 

  1. 強度は「10段階で7」を目安にする:運動の強さは、運動中の会話は無理だけど、完全に潰れるほどではないほどを目指す。

  2. 無理に運動の強さを8以上に上げない:8以上の運動をしても効果は変わらず、回復が遅くなるかもしれない。

  3. ペースより「感覚」を信じる:もちろん心拍数やスピードも大事なんだけど、最終的には自分の「主観的なキツさ」が一番ブレない指標になる。

 

というわけで今回の話を一言でまとめると、「頑張りすぎても、得られるものは増えない」という感じっすね。運動に限らず、仕事でも勉強でも「10割でやるとすぐ消耗しちゃう!」「7割でやると長く続く!」みたいになることはよくありますからね。もし「最近ちょっと疲れ気味だな…」と思っている方は、あえてアクセルを少し緩めてみるのもいいかもですな。


スポンサーリンク

スポンサーリンク

ホーム item



search

ABOUT

自分の写真
1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

INSTAGRAM