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ケトジェニックダイエットはうつに効くのか? 研究を読む限りでは「少し効くかも」だけど第一選択ではなさそうです

 
 

「ケトジェニックダイエット(糖質制限食)はうつ病に効くのか?」って問題を調べた試験(R)が出てまして、なかなか勉強になりましたんで内容をチェックしてみましょうー。

 

 

 

ケトダイエットはうつ病に効くのか?

この研究は、治療抵抗性うつ病(治療しても改善しにくいうつ病)の患者を対象にしたランダム化比較試験になっております。食事の違いがメンタルにどれくらい影響するのかを、わりとしっかりした方法で調べてまして、こいつがなかなか参考になるんですな。

 

実験の流れをざっくりまとめてみると、まず研究チームは参加者を2つのグループに分けております。

 

1.ケトジェニックダイエット

  • 炭水化物:1日30g未満
  • タンパク質:総カロリーの15〜20%
  • 食事は研究チームが用意し、尿ケトンのチェックを週2回

 

2.フィトケミカル(植物栄養素)ダイエット

  • 毎日違う色の野菜や果物を1つ追加
  • 飽和脂肪を植物油に置き換える

 

その上で、この2つの食事を6週間続けてもらい、うつ症状や不安、生活の質などを比較したんだそうな。要するに、簡単に言えば「ガチのケトジェニック」と「野菜と植物食品を増やす健康食」の効果をガッツリと比べたわけですね。

 

では、その結果がどうだったのか。まず、うつ症状(PHQ-9スコア)の変化から見てみると、6週間後の結果はこんな感じです。

 

  • ケト食:10.5ポイント改善
  • 植物栄養食:8.3ポイント改善

 

ってことで、メンタル改善の差は2.18ポイントで、統計的には有意差ありってとこなんですけども、効果量としてはだいぶ小さめな数字っすね。しかも、12週後(サポート終了後)になると差が消えてしまいまして、なんとも言えない結果になってたりします。

 

でもって、さらに厄介なのが、実際に食事をちゃんと守った人だけで分析すると差が消えたって結果も出てるところでして、すべて合わせて考えてみると「ケト食が明確に優れているとは言い難い」って結果なんですよね。個人的にも、もうちょい差が出るかなーと思ってたんで、ちょっと意外でありました。

 

 

 

ケトン食は実用面に課題を抱えているかも

ちなみに、いちおう他の指標も見てみると、この実験では以下のポイントもチェックしてまして、

 

  • 不安
  • 喜びを感じる能力
  • 認知機能
  • 生活の質

 

といったあたりはグループ間で差がなかったそうな。こちらでも、どうやらケト食のメリットはかなり限定的だったみたいっすね。

 

で、さらに面白かったのが、参加者の主観的な評価をチェックしてみたところ、植物中心の食事の方が評価が高かったというんですよ。細かい数字を見てみると、

 

  • 食事の満足度:「植物食=4.28 / 5」「ケト食=3.70 / 5」
  • メンタルが良くなった気がするという自己評価:「植物食=3.74」「ケト食=3.62」

 

みたいな感じで、むしろ植物食の方が主観的な評価は高かったみたいなんですね。

 

さらに、もう一つ重要なポイントとしては、「ケト食は続けづらい」って傾向も出てるところです。というのも、12週後の時点で「参加者が食事を続けていたか?」をチェックしてみたところ、

 

  • ケト食の継続率20%
  • 植物食の継続率48%

 

って感じだったそうで、やはりケト食は長期的に続きにくいんだろうなーってのが見えてくるわけです。これは実用面ではかなり重要なポイントでしょう。

 

 

 

そもそも食事はどうやってメンタルに効くのか?

ということで、ここまでの話をふまえたうえで研究チームは、「食事がどんな仕組みでうつ症状に影響するのか?」って問題について、いくつかの仮説を挙げておられます。

 

  1. 自己効力感:食事管理を続けると、「自分をコントロールしている感覚」と「生活のルーティン」が強化されて、「自分は意外とデキる人間だ!」って気分が増加。この「自己効力感」がメンタルを改善する可能性がある。

  2. 炎症の低下:うつ病は「脳の炎症」や「酸化ストレス」と関係している可能性があり、抗炎症作用のある食事は、この部分を改善する可能性がある。

  3. 体重減少:体脂肪は炎症を増やすんで、健康的な食事で健康体重に近づくだけでもメンタルが改善する可能性がある。

  4. 腸内環境:食物繊維やポリフェノールは腸内細菌を改善し、それが脳に影響する可能性がある。

 

ここらへんは、まだ研究途中ではありつつもそれなりに実証が進んでる分野なんで、どれも納得って感じっすね。

 

なので、以上を踏まえてみると、「うつ対策のベスト食事」はおそらく次の3条件を満たす必要があるんでしょうな。

 

  1. 続けられる:めっちゃ当たり前ですけど、まずこれが最重要。どんな食事も続かなければ意味がないんで。

  2. 健康体重を維持できる:肥満は炎症の原因になるんで。

  3. 抗炎症性が高い:食物繊維、抗酸化物質、オメガ3、ポリフェノールなどを多く含む食事はメンタルにもいいっぽいので、地中海食やDASH食、植物中心食あたりはどれでも良い。ケト食も理論的には可能だけど、実践のハードルは高めでしょう。

 

ということで、とりあえず現時点で押さえとくのはこれぐらいだと思うんで、ここさえ押さえておけば後は「どんな食事がいいのか……」とか悩む必要もないんじゃないかと。

 

ちなみに、最後に大事なポイントを付け加えておくと、これまでのメンタル改善に関する研究をまとめると、「メンタルが改善する効果が大きい手法」を効果順にまとめると、だいたいこうなります。

 

  1. 心理療法
  2. 薬物療法
  3. 運動
  4. マインドフルネス
  5. 食事

 

こうして見ると、心理療法や運動に比べるとあくまで食事は補助的な立ち位置なので、それ以外の手法にちゃんと取り組んだうえで、植物中心で抗炎症性の高い食事を選ぶのが無難じゃないでしょうか。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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