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なぜか最後まで見てしまうショート動画には「4つの共通点」があるなぁ……という研究の話

 

TikTokやInstagramを眺めていると、いろいろ広告っぽい動画が流れてきますな。で、その大半は秒でスワイプしちゃうわけですが、たまに妙に目が止まる動画もあったりするわけです。別に興味がある商品ではないんだけど、なんとなく最後まで見てしまい、あとで見返すために保存したりするようなやつですね。

 

「なぜこの動画だけ見ちゃうんだろ?」って感じですが、果たして、このような「すぐスワイプされるだけの動画」と「つい最後まで見ちゃう動画」の差はどこから生まれるのかってことで、この問題を調べた研究(R)が出ておりました。

 

この研究は、2023年前半にTikTokへ投稿された短尺広告900本を収集したもので、対象になったのは食品とデジタル製品の2ジャンル。研究チームは、動画のなかでも特に重要とされる「最初の10秒」に注目し、機械学習などを使って以下の4項目を数値化したんだそうな。

 

  1. くだけた話し方:ナレーションやセリフが、どれぐらい日常会話に近いかを測定したもの。たとえば、「本製品は高い利便性を提供します」みたいな説明よりも、「これ、普通に便利なんですよね」みたいな語り口のほうがスコアは高くなる。

  2. 音のリズム:音量の上がり下がりや、声・音楽の変化を分析した指標。ずっと平坦な音が続くより、抑揚があり、音の強弱がはっきりしている動画のほうが「リズムがある」と判定される。

  3. 色の鮮やかさ:動画のフレームから色の豊かさを計算し、画面がどれほどカラフルかを測定している。

  4. 画面内の目立ちやすさ:背景に埋もれず、特定のモノや人物がパッと目に入るかどうかを測ったもの。要するに、「どこを見ればいいのか」が一瞬でわかる画面になっているか。

 

その上で、それぞれの動画の「いいね・コメント・保存・シェア」といった反応と比較したところ、まず大きな結果はこんな感じになりました。

 

  • 特に安定して効果が見られたのが「くだけた話し方」で、話し方が会話的であるほど、いいね、コメント、保存、シェアのすべてが増えやすかった。これは、ショート動画を見ている人の多くは、じっくり情報を吟味するためというより、休憩や暇つぶしでアプリを開いているため、企業のプレスリリースみたいな口調で話しかけられても、頭に入りにくいのだと思われる。

 

  • 音のリズムも、すべての反応とプラスの関連を示しており、声に抑揚があり、BGMや効果音にも適度な変化がある動画は、視聴者の注意を引きつけやすかった。特に、最初の数秒でスクロールを止めてもらうには、視覚だけでなく、音の変化が重要になるっぽい。

 

  • 色が鮮やかな動画も、いいね・コメント・保存・シェアのすべてと関連していた。色彩が豊かな映像は、感情を動かしやすく、動画に対する第一印象を強めるっぽい。

 

  • 一方で、「画面内の目立ちやすさ」は、いいね・保存・シェアとは関連していたものの、コメントには明確な影響がなかった。私たちがコメントを書くためには、「お、目立つ!」と思うだけでは足りず、内容について少し考えたり、意見を言いたくなったりする必要があるため、強いビジュアルは反射的な反応には効くが、会話まで生むとは限らないのだと思われる。

 

ということで、短尺動画では、視聴者に「これは自分に関係があるかも」と考えさせる前に、まず内容を負担なく受け取れる状態を作るのが大事なんでしょうな。どれだけ商品そのものが良くても、話し方が固すぎる、音が単調、画面の情報が散らかっている……みたいな状態だと、内容を判断される前にスワイプされてしまう可能性が高いわけです。

 

さらに面白いもんで、ここでは「売るモノによって重要な要素が変わる!」や「投稿する時間帯でも、効くポイントが変わる!」って話も出てまして、

 

  • スマホやデジタル機器のように、スペックや機能を調べやすい商品では、「くだけた説明」と「商品がはっきり目立つ画面」の効果が強めだった。おそらく、こうした商品を買うとき、ユーザーは「何ができるのか」「自分に必要か」を確認したくなるので、わかりやすい言葉と、商品の見せ方が効きやすいのだと思われる。

 

  • 一方で、食品のように、実際に食べてみないと価値がわかりにくい商品では、「音のリズム」と「色の鮮やかさ」がシェアに結びつきやすい傾向があった。食べ物はスペックよりも「うまそう」「楽しそう」「誰かに見せたい」が大事なので、味を直に伝えられないぶん、映像と音で気分を動かす必要があるのだと思われる。

 

  • くだけた話し方、鮮やかな色、目立つビジュアルは、昼間のほうが反応につながりやすい傾向があった。昼間は視聴者の認知的な余力が比較的あるため、言葉や映像の情報を処理しやすいのだと思われる。

 

  • 逆に、音のリズムは夜のほうが効きやすかったとのこと。夜は周囲が静かになり、イヤホンを使って動画を見る人も増えるため、音の変化が昼間以上に注意を引きやすいのかもしれない。

 

といったあたりも面白いっすね。まぁ、このへんは「昼なら必ず映像重視、夜なら必ず音重視」みたいに単純な話ではないでしょうが、とはいえ、「いつ出すか」と「何を強みにするか」を少し対応させるだけでも、動画づくりの精度は上がりそうですな。

 

ということで、今回の研究をざっくりまとめると、ショート動画で反応を得るためには、内容を盛り込むよりも「一瞬で処理できる形にするのが大事!」って話になります。具体的には、

 

  • 説明文ではなく、会話として話す

  • 音に単調さを残さない

  • 映像の色をきちんと見せる

  • 最初に見てほしい対象を明確にする

  • 商品に合わせて、言葉・音・映像の比重を変える

 

あたりが基本になるんでしょうな。特に注意したいのは、タイトルを長くしすぎないことでして、研究ではタイトルが長い動画ほど反応が下がる傾向も見られてますんで。

 

もちろん、今回の研究には限界もありまして、これはTikTok上の広告を観察した研究なので、「くだけた話し方を使えば、必ずエンゲージメントが増える」とまでは言えないのでご注意あれ。もともと魅力的な商品や、人気の発信者がこうした表現を使っていた可能性もありますからね。また、調べたのはいいね、コメント、保存、シェアであって、実際の購入じゃないので、「動画が面白くても商品は売れない!」みたいな可能性も考えられるでしょうな。

 

ここらへんはくれぐれも注意ですが、「なぜか最後まで見てしまう動画の特徴とは?」って問題を考えるうえでは、かなり役立つ知見じゃないでしょうか。とにかく、「見る人が一瞬で内容に入れるように設計する!」と考えておくだけでも、コンテンツの作り方が変わってくるはずであります。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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