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AIで勉強すると「わかった気」になりやすい問題と、その防ぎ方を考えてみよう!というデータの話

 

ご存じのとおり、生成AIを使って勉強する人が増えております。「この概念をわかりやすく説明して」「テストに出そうな問題を作って」みたいな感じで、ChatGPTを使って学習するやり方ですな。私もこういう使い方はしてまして、まぁ便利なこと。

 

ただし、なにごともいいことばかりではなし。便利なことには必ず副作用もついてまわるもんでして、新たな研究(R)でも、「その便利さが長期的な学習にはマイナスに働くかもしれないぞ」みたいな報告が出ておりました。

 

これはブラジルの大学で行われたランダム化比較試験で、経営学を学ぶ学生120人を対象にしたもの。参加者は2グループに分けられまして、

 

  1. ChatGPTを使ってAIの基本概念を勉強する
  2. 論文データベース、授業資料、普通の検索エンジンなどを使って調べものをする

 

って感じで勉強してもらったあとで、どれぐらいちゃんと学べたかをテストしたんだそうな。

 

両グループに与えられた課題は同じで、「AIの倫理、社会への影響、技術的な基礎」などを調べ、10分間のプレゼンを作るというもの。準備期間は最大2週間で、その後に発表を行い、さらに45日後、抜き打ちの理解テストを受けてもらったらしい。

 

そこでどんな結果が出たのかと言いますと、

 

  • 従来の方法で学んだグループ:準備時間は平均5.8時間で、正答率68.5%
  • ChatGPTを使ったグループ:準備時間は平均3.2時間で、正答率57.5%

 

って感じだったんですな。つまり、AIを使えば課題はかなり速く片づくわけですが、成績は落ちてしまう傾向があったんだ、と。それも、時間の差を統計的に調整しても、長期の成績については「従来の方法で学んだグループ」のほうが高かったというから面白いもんです。つまり、「AIグループは勉強時間が短かったから記憶に残らなかった」わけではなく、勉強に使った時間の中身が違った可能性が高いわけですな。

 

では、なんでAIのほうが記憶に残らなかったかってことで、ここで研究チームは「望ましい困難(desirable difficulties)」って概念を使っております。これは、簡単にいうと、

 

  • 勉強には、多少の面倒くささや行き詰まりが必要だよねー

 

という考え方のことです。思い出せそうで思い出せない情報をひねり出したり、難しい文章を何度も読んだり、わからない概念どうしの関係を自分で整理したりする……みたいな作業があるからこそ、人間は脳内に知識が蓄積されるんだってことですな。

 

一方で、AIはそこらへんの工程を一気に短縮してくれまして、これは素晴らしいことではあるものの、自分の頭で情報を検索し、思い出し、比較し、言い換える作業の量は減りますからね。これが、いわゆる「理解した気になる問題」につながるわけです。

 

実際のところ、今回の研究では、技術的で複雑なテーマほど、AI利用グループの記憶の低下が大きかったとしてまして、これは困ったもんです。難しいテーマほど、概念を自分で分解し、何度も組み立て直し、「なぜそうなるのか?」を考えないと、知識が頭に定着しにくいんでしょうな。

 

とはいえ、当然ながら「AIは勉強に使わないほうがいい!」ってことではなく、この研究は、あくまで「AIに丸投げするな!」ぐらいの話でとらえてくださいませ。たとえば、

 

  • 最初から要約だけを読ませる
  • 自分で考える前に答えを出させる
  • レポートの文章を丸ごと書かせる
  • わからない箇所を、自分で調べずに即質問する
  • AIの説明を読んで満足し、何も見ずに再現する練習をしない

 

みたいな使い方だと、作業は早く終わるんだけど、自力で考える能力は育ちにくくなりますからね。

 

その一方で、

 

  • 自分の理解度をチェックする
  • 苦手な部分だけ別の説明を出してもらう
  • 反対意見を提示させたりする

 

みたいな使い方なら、むしろ学習を深める助けになるんじゃないかと。

 

さらに具体的には、とにかく「先に自力で考え、あとからAIを使う」ってのが基本になるはずで、たとえば、新しいテーマを学ぶときは、以下のような流れがいいんじゃないでしょうか。

 

  1. まず自分で答えてみる:本や論文、授業資料を読んだあとに、いきなりAIへ要約を頼むのではなく、「この話の結論は何だったか?」「なぜそうなるのか?」「具体例をひとつ挙げるとしたら何か?」ぐらいは考えてメモっておきたい。もちろん、そのメモが正確でなくても問題はない。


  2. AIには「答え」ではなく「採点」を頼む:上のメモを見つつ、「以下の説明で間違っている部分はありますか?」「抜けている重要論点を3つだけ教えてください」「この考え方への反論を出してください」みたいに尋ねてみる。あくまでフィードバックをもらうのが目的。


  3. AIに問題を作らせる:個人的には、AIは要約作成よりクイズ作成に使ったほうがよい気がしている。たとえば、「この内容について、暗記では解けない確認問題を5問作って」「実際のケースに応用する問題を作って」「私の回答に対して、追加質問をしてください」みたいな感じ。


  4. 自分の言葉で説明し直す:最後に、AIも資料も見ずに、学んだ内容を誰かに説明するつもりで書き出す。この段階では「中学生に説明するとしたら?」「仕事で使うならどう応用する?」「この研究の弱点は何か?」みたいに自問するのが基本。これをやっとくと、理解の浅い部分がかなり見つかってナイス。

 

ってことで、いろいろ書いてきましたが、せんじつめると「AIは自分の理解を試すために使おうぜ!」みたいな結論になるでしょうな。まぁ、こういう使い方をするのは意外と面倒なんだけど、少なくとも、新しい知識を本当に身につけたい場面では、「望ましい困難」を発動させる余地は残しておきたいとこっすね。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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