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今週の小ネタ:テストステロンが高い人ほど「リスクを取る」は本当か?男女の恋愛観はどう作られるか?背が低いヤツ、筋トレしがち説

 


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

 

 

 

テストステロンが高い人ほど「リスクを取る」は本当か?

テストステロンが高い男は、攻撃的で、競争心が強くて、危険なことにもガンガン挑む!」みたいな話は、わりと世の中に広まっております。そのため、起業して大勝負に出る人やギャンブルに大金を突っ込む人などはテストステロンが高いのだと思われがちだったりします。というか、私もそう思っておりました。

 

が、最新のメタ分析(R)では、「テストステロンが高い人=攻撃的」説ってだいぶ怪しいんじゃない?みたいな結論になってて面白かったです。

 

これは、テストステロンとリスク選好の関係を調べた過去の研究52件から、合計1万7340人分のデータをまとめたものになってまして、「テストステロンが高い人ほどリスクを選ぶのか?」って問題について、現時点で割と精度の高い結論を出してくれてるんですよ。ちなみに、テストステロンの測定方法はいろいろで、血液や唾液から直接ホルモン量を測った研究もあれば、ホルモンを投与した実験も存在しております。

 

で、これだけのデータを全部まとめてみたところ、

 

  • テストステロンとリスク選好の全体的な関連は、ほぼゼロ!

 

って感じだったんだそうな。つまり、テストステロン値が高いからといって、投資で大勝負に出やすいわけでも、危険な遊びを好むわけでも、大胆な決断をしやすいわけでもないんだ、と。

 

まぁ個別の研究を見ると、「高テストステロンの人ほどリスクを取った!」という報告もあったりするんですが、その逆に「関係なし!」や「むしろ低テストステロンの人のほうがリスクを取った!」という研究もありまして、全体で見るとキレイに打ち消し合っちゃうみたいなんですな。

 

なんでこんなに研究結果がバラバラだったのかと言いますと、どうもリスクをどう測ったかで結果が変わってるっぽいんですよ。たとえば、

 

  • 「確実に1000円もらう」か「50%の確率で3000円もらう」か、みたいな抽選式の経済ゲームでは、テストステロンとリスク選好に弱い関連が見られた。要するに、テストステロンが高い人ほど、少しだけギャンブル的な選択をしやすかった。
  • 一方で、風船を膨らませて破裂するまで得点を稼ぐゲームや、自己申告式の「私は危険なことが好きだ」的な質問紙では、ほぼテストステロンとの関係はなかった。

 

みたいな感じで。つまり、「テストステロンが高い人はリスク好き」というよりは、

 

  • 特定のルールがある経済的な不確実性においては、少し反応するかもしれない

  • しかし、現実世界のリスク全般を説明するほどの力はない

 

という解釈になるのかもしれません。

 

でもって、ここで個人的に重要だなーと思ったのは、血液や唾液でテストステロンを直接測った研究や、実際にテストステロンを投与したような厳密な研究ほど、はっきりした関連が見つかりにくかったとこですね。そう考えると、「テストステロンがリスク選好を決める!」というより、測定方法や研究デザインの違いが結果をブレさせてたんでしょうな。

 

ちなみに、今回の分析では、性別による大きな違いも確認されておらず、男性でも女性でも、テストステロン値とリスク選好の関係はないみたいっすね。まぁ、そもそもリスク選好という複雑な現象を、単一のホルモンだけで説明しようとするほうが無理があるのかもですが。

 

というわけで、「最近、妙に慎重だな」「なんで自分は挑戦できないんだろう」と感じたときに、「テストステロンが低いせいかも……」と考える人もいるかもですが、今回のデータを見る限り、その自己診断はほぼ役に立たないみたいなんでご安心あれ。「テストステロンで大胆に!」って話からは距離を置いたほうがよさそうであります。

 

 

 

男女の恋愛観はどう作られるか?

「いまの恋愛市場って、男に不利なの? 女に不利なの?」みたいな議論がよくありますな。男性側からは「女性は簡単に相手が見つかる!」「男は年収や身長で足切りされる!」という声が出る一方で、女性側からは「男のほうが仕事で有利!」「出産や育児のコストを考えたら、ぜんぜん平等じゃない!」みたいな反論が返ってきたりして、どちらもそれなりに切実なので、だいたい話がまとまらなかったりします。

 

そんななか、「人は地元の仕事事情や恋愛事情をどう見ているのか?」を調べた研究が出ておりました。対象になったのは、オーストラリアのオンライン婚活・恋活サービスを使っている異性愛者1072人。参加者に対して、「男性は良い仕事を得やすいと思うか?」「女性は男性に経済的に依存しやすいと思うか?」「男女それぞれ、地元でデート相手を見つけやすいと思うか?」みたいな質問を行い、本人の収入見込み、居住地域の失業率、所得水準、男女比などと照らし合わせたものです。 
(R)

 

で、なにがわかったかと言いますと、

 

  • 男性は女性よりも、「女性は男性に経済的に頼っている」と考えやすかった。

  • 一方で女性は、「男性は仕事を見つけやすい」と考えやすかった。

  • また、男女ともに「女性のほうがデート相手を見つけやすい」と見ていたが、男性側のほうがこの差を大きく感じていた。
  • 地元の所得が高い場所に住む女性ほど「女性は男性に依存しなくてもいい」と感じやすく、裕福な地域に住む男性ほど「仕事は見つけやすい」と答えやすかった。
  • 「自分は将来かなり稼げそうだ」と思っている女性ほど、「女性は経済的に自立できる」と考えやすく、自分の稼ぎが理想のパートナーより高くなりそうだと考える男性ほど、「男性もデート相手を見つけやすい」と見やすかった。
  • 女性は年齢による恋愛観の変化が大きく、18〜35歳あたりでは「デート相手は見つけやすい」と感じる傾向が強かったのに対し、40歳を超えるあたりから、その感覚が大きく落ち込んだ。また、30〜40代の女性は、「女性は男性に経済的に依存しやすい」という認識が強まっているので、出産や子育て、キャリアの中断みたいなライフイベントの影響が大きそう。

 

ということで、男女で見えている状況はかなり違ってたって話ですな。まあ、ありがちな結論にも見えますけど、男女の恋愛市場の見え方には、「自分は市場でどれぐらい戦えると思っているか?」がかなり投影されてるってのは、覚えておきたいところです。

 

 

ここから学べるのは、人間の恋愛観には個人の現状が大きく関わってるってことでして、就職がうまくいっている人には世の中がチャンスだらけに見えるし、恋愛がうまくいっている人は「努力すれば何とかなる」と思いやすいし、失業や孤立を経験している人には世界が閉ざされたように見えやすいですからね。ここらへんが個々人の恋愛観の差を生み、話をややこしくしてるわけっすな。

 

なので、「異性は得をしている」「自分の性別だけが損をしている」と感じたときほど、ちょっと「この感覚は、社会構造の問題を映しているだけかも?」とか考えてみるのはアリでしょう。そこには、自分の年齢、経済状況、周囲の人間関係、直近の成功と失敗が作った認知の傾向があるかもなんで。

 

 

 

背が低いヤツ、筋トレしがち説

「背が低いヤツは筋トレに走りがちだ!」という、低身長で筋トレ好きな私としては見逃せない研究(R)が出ておりました。

 

この研究は、オーストラリアの成人328人を対象に、「自分の身長にどれだけ不満があるか」と、「その不満を埋め合わせるために、どんな行動を取るか」を見たもの。「不満の埋め合わせ」ってのは、たとえば、

 

  • 厚底やヒールで背を高く見せる
  • 集合写真など、身長が目立つ場面を避ける
  • 脂肪を落とす、筋肉をつける
  • 手術で身長を変えることを考える

 

みたいな行動っすね。その結果なにがわかったかと言いますと、

 

  • 実際の身長そのものよりも、「自分の身長が気に入らない!」という感覚が強い人ほど

  • 特に男性では、身長への不満が強いほど、「筋肉をつけよう」「体脂肪を落とそう」「もっと強そうに見せよう」という方向に動きやすい

 

みたいな感じです。当然ではありますが、背が低い人が全員つらいわけじゃないし、背が高い人が全員満足しているわけでもないわけで、「自分はこの身長ではダメなのでは?」という解釈が強くなるほど、人は別の身体パーツや行動で埋め合わせをしようとするんだ、と。もちろん、筋トレや減量そのものは悪いことではないものの、その動機が「背が低いという欠点を、筋肉で相殺しなければ!」になってくると、話がちょっと変わるかもですね。

 

一方で女性の場合は、少し違うパターンが見られまして、

 

  • 背が低い女性はヒールや厚底で身長を補いやすく、背が高い女性は猫背になったり、まっすぐ立つのを避けたりしやすい。

 

って感じだったそうな。男性には「高いほうが男らしい」、女性には「男性より低いほうが望ましい」みたいな、古い身長規範が残っているせいで、どちらの側にも「そのままではいけない」という圧力がかかってしまうんでしょうな。

 

ちなみに、この研究は一時点のアンケート調査だし、対象者も若いオーストラリア人が中心で、効果の大きさも小〜中程度なんで、そこは冷静に見ておいてくださいませ。とはいえ、実際の身長よりも、身長にどんな意味を与えているかが行動を左右するってのは、まぁありそうな話ですわな。私も自問してみよう……。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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