プロテインの定番論争を専門家が検証してみたら、どんな結論になったのか?#1「筋肉・ダイエット・アミノ酸編」
「タンパク質は1食あたり20gまでしか吸収できない!」
「高タンパク食は腎臓に悪い!」
「長生きしたいならタンパク質は減らすべき!」
などなど、プロテインに関するいろんな議論がかまびすしい昨今でございます。私がブログを始めたころは「高タンパク食」なんて筋トレガチ勢しか話題にしてなかったもんですが、いまや一般的な健康法として広まった結果、議論のほうもえらいことになっております。
で、この混乱は海外でも同じことでして、アメリカでも「結局、タンパク質ってどれぐらい摂ればいいの?」みたいな議論が日々くり広げられているわけです。
そこで、混迷を極めるプロテイン界隈をどうにかすべく、近ごろインディアナ大学で、タンパク質の研究チームが集まって議論を行い、その内容をまとめたレビュー論文(R)が出ておりました。
これは、タンパク質の専門家が、プロテインにまつわる定番の議論11個を検討したものでして、ネットでもよく見かける話題に暫定的な結論を出しております。現時点のデータを見たときに、どこまで言えるのかを整理してくれてまして、めっちゃ参考になりますね。
で、先に全体を読んだ感想から言っておくと、
- 高タンパク食には、筋肉や体力の維持に役立つ可能性がかなりある
- ただし、「何gを何回に分けるべきか」みたいな細部は、まだ不確実な部分が多い
- 健康な人なら、高タンパク食が腎臓や骨に害を与える証拠は弱い
- 一方で、「タンパク質を減らせば長生きできる」説も、人間ではまだ決着していない
みたいな感じになります。ネットとかだと、つい断定口調のポストが多くなりがちですけど、実際の研究では、まだそこまで決着が着いてるケースは少ないわけっすね。
では、まず今回は、筋肉づくりやダイエットに関わる5つの論点から見ていきましょうー。
テーマ1. 1食あたりのタンパク質には「上限」があるのか?
「1食あたり20〜30g以上のタンパク質はムダになる!」という説は有名でしょう。これは「余ったタンパク質は筋肉づくりに使われず、酸化されてエネルギーとして消費される」みたいな考え方によるもので、1回に40gぐらいの高たんぱくを摂取してもたいして意味がないと言われてきたわけですね。
実際のところ、過去の実験では、体重1kgあたり0.24〜0.3gほどのタンパク質で筋タンパク合成がかなり高まることが示されていまして、この数値を超えるとムダになっちゃうって考え方は正しそうに見えるわけです。体重70kgなら、1食あたり17〜21gぐらいですね。
が、ここでの議論によると、現実ではこの数字を超えたタンパク質が、すべて捨てられるわけじゃないとのこと。運動後や就寝前などでは、より多めに摂ったタンパク質が、数時間にわたって筋タンパク合成を支える可能性も出てまして、「20gを超えたら無意味!」は言いすぎだと申せましょう。
とはいえ、筋肉を増やしたい人であれば、1日のタンパク質を1回の食事だけでまとめて摂るよりは、3〜4回ほどに分けたほうが無難なのも事実。目安としては、毎食で体重1kgあたり0.3g前後を確保できれば、とりあえず大きく外しにくいと思います。体重70kgなら、1食あたり20〜30gほどですな。
テーマ2. ダイエット中はタンパク質を増やすべきか?
これもわりと支持されている話で、カロリー制限をすると、脂肪だけでなく筋肉も減りやすくなっちゃうんですよね。そこでタンパク質を増やすと、除脂肪体重の減少を少し抑えられる可能性があるって話です。
ただし、ここで専門家チームが強調するのは、主役はあくまで筋トレだって視点であります。減量中に筋肉を守るうえで、もっとも重要なのは筋トレであり、タンパク質はその効果をサポートする役割……ぐらいの立ち位置なんだ、と。
なので、
- 食事だけで痩せようとしている
- タンパク質だけ増やして安心している
- 摂取カロリーを極端に削っている
みたいな状態では、あまりタンパク質に期待しすぎないほうがよろしいでしょう。特に、すでにかなり絞れている人、高齢者、もともと筋肉量が少ない人では、筋肉の減少が生活機能に影響しやすいので、タンパク質と筋トレの優先度は上がるでしょうね。
テーマ3. タンパク質は「もっとも腹持ちがいい栄養素」なのか?
これもよく耳にする説ですけど、実態は割と微妙な話だったりします。過去のデータを見てみると、短期的には「タンパク質を多めにした食事が空腹感を抑えやすい!」と結論したものはあるので、まぁ昼食の炭水化物や脂質の一部をタンパク質に置き換えれば、その食後には食欲が少し落ち着くことはあるでしょう。
ただし、その効果が何か月も続くかとなると、証拠はかなり弱くなるので注意したいところです。そもそも満腹感は、タンパク質の量だけで決まるわけではなく、
- 食べ物の硬さ
- 食物繊維
- 水分量
- 味の濃さ
- 加工度
- 食べる速度
- 見た目
- 好み
みたいに、いろんな要因が絡みますからね。たとえば、鶏むね肉100gと、同じタンパク質量を含む超加工食品では、食後の感覚がぜんぜん違うでしょう。
なので、「タンパク質を増やせば自然に痩せる!」と考えるよりは、「高タンパク食は、食欲管理のための選択肢のひとつ」ぐらいに見ておくのが現実的でしょうね。
テーマ4. アミノ酸には、それぞれ固有の働きがあるのか?
これは、「アミノ酸は単なるタンパク質の材料ではなく、それぞれが別個の働きを持っているのでは?」みたいな論点です。つまり、アミノ酸の種類によって、筋肉の合成、抗酸化、腸の機能などに対する働きが違うんじゃないかってことですね。
この問題については、「アミノ酸の働きはそれぞれ違う」って結論でほぼ間違いないでしょう。ご存じのとおり、タンパク質は複数のアミノ酸からできてまして、単なる「筋肉の材料」として使われるわけじゃないんですよね。たとえば、
- ロイシン:筋タンパク合成のスイッチを入れる働きがある
- メチオニン:抗酸化物質であるグルタチオンの材料になる
- スレオニン:腸の粘液をつくる働きに関わる
- グリシン:コラーゲン合成に必要になる
みたいに、アミノ酸ごとにはっきりと役割が違ってるわけですね。とはいえ、「ロイシンを多く摂れば筋肉が爆増する!」のような話には注意が必要で、たしかに特定のアミノ酸には機能があるんだけど、その含有量を細かくいじった結果が、長期的にどれほど大きな差になるかは別問題だったりしますんで。
なので、基本的には、総タンパク質量と食事全体の質を整えるほうが先だとお考えください。
テーマ5. 特定のアミノ酸を減らすと長生きできるのか?
こちらは、「特定の必須アミノ酸を制限すると、寿命や健康寿命が延びるのではないか?」という考え方です。過去の動物実験では、メチオニン、イソロイシン、分岐鎖アミノ酸などを制限すると、寿命や代謝状態が改善するようなデータがありまして、これをもとに「アミノ酸を減らせば長生きできる!」という説が唱えられてきたわけです。
しかし、現時点の調査では、果たして人間で同じことが起きるかどうかは、まだ全然わかっていないのが現状であります。当たり前なんですけど、酵母、線虫、ハエ、マウスで見られた効果が、人間にもそのまま当てはまるとは限りませんで、専門家チームいわく「人間では、加齢とともに筋肉が減るサルコペニアのほうが、ずっと切実な問題だ」とのこと。
そう考えると、タンパク質や必須アミノ酸を減らして、「理論上は長生きできるかもなー」って寿命メリットを狙うよりも、筋肉を維持して転倒や要介護のリスクを下げるほうが、現時点では優先度が高そうですな。
ということで、長くなったので今回はこのへんで。次回は、低タンパク食と長寿の関係、プロテイン・レバレッジ仮説、植物性タンパク質の実力、高タンパク食の安全性など、残り6つの論点を見ていきましょうー。


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