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最新の神経学に学ぶ、脳の負担を減らして作業スピードを上げる10のコツ

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「The Organized Mind」って本を手に入れまして、これがなかなかおもしろい。著者は「音楽好きな脳」で有名なダニエル・レビティン博士でして、「成功したいなら、できるだけ脳の負担を軽くしろ!」と主張する一冊であります。 

 



 

脳はすぐにパンクしちゃう

 著者によれば、とにかく現代は「決めなきゃいけないこと」が多すぎて、脳の負担がハンパないことになってるんだ、と。いまの神経学では、この脳の負担こそが、現代人の生産性を落としている原因のひとつと考えられているんだそうな。


たとえば、1970年代はスーパーにならぶ商品は9,000点ぐらいだったのに、いまは40,000点もあるんだとか。それなのに、脳はものごとの優先順位をつけるのがとても苦手なんで、「どのブランドの歯磨き粉を買おうかな?」と悩むだけでも、神経はどんどん疲れていくらしい。

 

神経は代謝を必要とする生きた器官だ。うまく働くためには酸素とグルコースが欠かせず、脳を使えば使うほど、私たちは疲労感をおぼえることになる。

  

フェイスブックのアップデートや、友人のツイートやメッセージなどの軽い作業でも、投資先の選択やケンカした友人との仲直りといった重要な作業と同じように、脳のリソースを使うのだ。


とのこと。脳は1秒で60ビットのデータしか処理できないので、現代のように情報が多い状況だとすぐにパンクしちゃうみたい。当ブログでも、マルチタスクの害については何度か書いてきたので、このへんの話には超納得であります。

 

脳の負担を減らす10のコツ

そんなわけで、現代の問題に立ち向かうためには、まずは「脳の負担を減らす」のが最優先。博士によれば、社会で成功してる人たちは、秘書や下請けを上手く使って自分が物事を決める場面を減らし、できるだけ脳の注意力をすり減らさないようにしてるんだとか。そういえば、オバマ大統領も食事や服装はすべてアシスタントにまかせてるって話がありましたな。


とはいえ、 もちろん普通はアシスタントなんて雇う余裕はないわけで、もっとお手軽な方法として、レビティン博士は以下の10個の対策をオススメしております。

 

  1. 適度な休憩:まずは脳がパンクする前にちゃんと休むこと。1〜2時間の作業ごとに15分の休憩を取るだけでも、神経はかなり復活するそうな。ある研究では、休まずに作業を続けた場合、生産性は3分の1にまで下がることがわかったとか。
  2. 作業ごとに環境を変える:脳は作業と環境を結びつけておぼえる習慣がある。たとえば、いつも自宅のPCで仕事をしていたら、「自宅は仕事の場」だと脳が学習するので、それ以外の場所で仕事を行うと脳が混乱しちゃう。なので、「仕事は自宅」「学習はカフェ」といったように、場所と作業を切り分けるといいみたい。
  3. ToDoリストはインデックスカードに書く:脳は情報にランダムでアクセスするのが超苦手。たとえば、DVDで目当てのチャプターに飛ぶよりも、ビデオの早送りでシーンを探したほうがストーリーをつかみやすい、みたいな話です。これはToDoリストでも同じで、コンピューターのタスク管理ツールでいきなり最優先のタスクを見るよりも、登録した時系列に沿って順序よくながめていったほうが脳の負担は減るらしい。レビティン博士は、インデックスカードにタスクを書き込んで、優先順位に応じてカードを並び替える方法を推奨しております。物理的なカードを使うことで、脳が「ここに必要な作業がまとまってる」と安心する効果もあるみたい。
  4. タグを使いまくる:これはホワイトハウスで徹底されていることだそうで、とにかくメールやデータには関連タグをつけまくるんだそうな。たとえば、オバマさんからメールが来たら、その内容に書いている委員会や組織の名前にもタグをつけておき、「あとでオバマさんに電話する」といったタスクも自分にメールで送ってタグづけしておくらしい。確かにタグって最初は面倒なんだけど、いざ使っていくと後で超ラクなんですよね。
  5. 困ったらデータを捨てちゃう:長くタスク管理をしていると、「あとでやる」リストが膨大に増えていったりしますが、それで気持ちが重くなるぐらいなら一気に消去しちゃったほうがマシ。レビティン博士も、年に1度は古い書類を箱詰めして、まとめて捨てちゃうらしい。
  6. 短い作業でも時間を割り当てる:当然ながら、タスクのなかには短時間で済むものと長期にわたるものがありますが、その2つをひんぱんに行き来すると、脳に多大なストレスをあたえるので絶対にNG。たとえメールやツイッターのような細かなことでも、きっちりと時間を割り当てて、「その時間にしかチェックしない」と決めておくのが大事。
  7. しょうもないことに決断力を使わない:上にも書きましたが、人間の脳は「どのアイスを買おうかな?」レベルの決断でも、ガンガンと大事な神経をすり減らしていっちゃう。あらかじめ1日の重要事項を決めておいて、それに関わらないことがらには、できるだけ決断力をキープしておくべき。
  8. よく寝る:睡眠の大事さについては何度も書いてきましたが、睡眠は日中の記憶を処理する大事な時間。レビティン博士は昼寝も推奨しておりまして、Googleやセーフウェイといった企業も、近ごろは昼寝部屋を作っているほどだとか。
  9. 整理整頓しすぎない:ほどよく整った環境は作業効率をあげてくれますが、整理整頓にこだわりすぎると脳がアタフタしはじめるので逆効果。「必要なものがどこにあるか?」がわかるレベルになっていれば、それ以上は整理整頓にこだわるのはムダとのこと。
  10. 仕事とプライベートは完全に切り分ける:当然ながら、家でも仕事のことを考えていたり、逆に会社で家のことを考えていれば、すべての場面で暮らしの満足度は低くなっちゃう。レビティン博士いわく「仕事中は作業だけに没頭し、遊ぶときは徹底的に遊ぶべきだ」とのこと。


そんなわけで、一流の神経学者がオススメする作業スピードを上げるためのコツでした。いろんなテクニックが紹介されてましたが、ひとまず「脳の負担を軽くしてあげるにはどうすればいいかな?」と考えてみるってのは、いろんな場面で応用しやすいガイドラインかなーと思う次第です。



credit: kozumel via FindCC


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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