瞑想とヨガでメンタルが改善する理由、それは「無の境地」が原因じゃないよ!というナイス実験
当ブログでは、瞑想とヨガの効能をよく書いてるわけです。たとえば、
なんてデータが最近も出ておりました。まだデータは足りないものの、どちらもかなーり良さそうな雰囲気をかもしてるんですよね。
で、瞑想とヨガが効く理由として言われるのが、
- 自我を無くすことができるから!
みたいなことでしょう。いったん自分を無にすることで頭がクリアになり、無用なストレスから解放されるのだ!みたいな考え方ですな。
なんだか納得しやすい理屈ですが、実はちょっと違うメカニズムなんじゃないの?って話(1)が出てきておもしろいんでメモ。
これはマンハイム大学などの研究で、2つの実験から構成されてます。
実験1
93人のヨガ実践者を集めて、まずは全員の自己高揚バイアスをチェックしております。このバイアスは「目の前の現象を自分に良いように解釈する傾向」のことで、いわば楽観的とかポジティブとか呼ばれる人に多い状態ですね。
で、それから15週間ほど参加者をハタヨガのクラスに参加してもらいまして、1回90分のセットをくり返すように指示。そのたびに自己高揚バイアスのレベルを計測したんだそうな。
実験終了後、すべてのデータをひっくるめてどんな傾向が出たかと言いますと、
- ヨガをやったグループのほうが自己高揚バイアスが高くなり、より自尊心と共同的ナルシシズムが高まった!
だったそうな。すごくざっくり言えば、ヨガは自我を消すどころか、逆に自意識を高めるほうに働いたってことです。
ちなみに、共同的ナルシシズムってのは、自分のことを「他人より共感力があって親切な人間だ!」と思うバイアスのことです。自分はより良き人間だって気持ちをヨガが高めたわけですな。
実験2
もうひとつの実験では、瞑想好きな162人を集めて4週間の介入をしています。こちらは参加者に慈悲の瞑想をやってもらったそうで、上と同じく実験の前後に自己高揚バイアスをチェックしたらしい。
そこでどんな結果が出たかと言いますと、
- 瞑想をやったグループは主観的な幸福度が高まった(自己コントロール感とか人生の意味感が大きくなったらしい)
- 瞑想によるメリットは、おもに自己高揚感の高まりと連動していた
だったそうな。つまり、瞑想でメンタルが改善するのは無我の境地にいたったからではなく、「俺は他人よりも良い人間になったのだ!」というナルシシズムが育ったからじゃないのか?と。いやー、スピリチュアルな人から殴られそうな結論ですね(笑)
が、研究チームは以下のように申しておられます。
仏教やキリスト教では謙遜を美徳とし、ナルシシズムをネガティブにとらえがちだ。しかし、過去の多くの研究からもわかるとおり、自分を過剰評価する心理はメンタルヘルスの改善をもたらす。
自分を少しだけ高く評価するのは健康的なことだし、多くのメリットがある。私たちに日々の活力をあたえ、楽観性を増やしてくれるからだ。
瞑想は確かに効果があるだろう。しかし、そのメカニズムは、一般的に思われているものとは真逆なのかもしれない。
もちろん、これは西洋の文化圏で行われた研究なんで、無我の発想が浸透しているアジア圏だったらまた違うのかも?といった気もしないではないです。が、過去には「瞑想をしまくっている仏教徒ほど実は死が怖い」なんて話も出てるんで、
- 瞑想やヨガは健全なナルシシズムを育てる!
って説は意外と正しいのかも。いわゆる正常なナルシストですな。
なんだか仏教の理想からは離れた話ですが、別に瞑想で自尊心が高まって、結果として人生がうまくいくならそれでいいような気がしますねー。