利き手じゃないほうの手で食べるとムダ食いを防げるのはなぜか?という実験の話
利き手じゃないほうの手で食べるとムダ食いを防げる!というデータ(R)が出ておりました。もはやタイトルだけですべてを言い切ってる気もしますけど、ざっくりどんな研究だったか見ておきましょう。
これはデューク大学の研究で、まず1つ目の実験では、158人の参加者を大学の会議室に呼んで「映画かミュージックビデオを見てください」と指示。その際に、全員にランダムで2種類のポップコーンを渡しております。
- 新鮮で美味いポップコーン
- 時間が経ってヘナヘナなポップコーン
その上で、上映が終わった後でポップコーンの消費量を調べたところ、
- 普段から映画中にポップコーンをよく食べる人は、不味いポップコーンだろうが最後まで食べきった
- 参加者が空腹だったかどうかは、ポップコーンの消費量とは関係がなかった
って結果が得られたそうな。要するに、この実験で何がわかったかと言いますと、
- 環境によって刺激された習慣は、本人の好みやモチベーションを打ち消す
ってことです。映画やミュージックビデオといった「いつもの環境」でポップコーンを食べる習慣が起動したら、味の良し悪し(好み)や空腹感(モチベーション)は関係がなくなっちゃうわけですな。習慣化に関する研究ではよく言われることですね。
で、続く2つ目の実験では、最初の実験とほぼ同じ条件で参加者にポップコーンを食べてもらったんですが、こちらでは以下のようなグループ分けをしてます。
- 利き手でポップコーンを食べる
- 利き手じゃない方の手でポップコーンを食べる
すると、今度は結果が変わりまして、普段から映画中にポップコーンを食べる人でも、利き手じゃない方の手を使った場合は総摂取量が大幅に減ったんだとか。これは悪癖を打ち破る方法としては、かなり簡単でいいですねぇ。
この結果を見ると、「使い慣れてない手を使ったからポップコーンを食べるのがめんどうになったのかな?」とか思うかもしれませんが、実際のメカニズムはもうちょい複雑だったりします。どういうことかとい言いますと、
- 利き手じゃない手でポップコーンを食べる
- いつもと違って自然に手を使えないので、そこにいったん意識がはさみ込まれる(「あ、なんかぎこちないな……」みたいな)
- 意識が起動したおかげで、無意識の習慣がブロックされる
みたいな流れです。専門的には「脱文脈化」のように言われる現象で、簡単にいえば「いつもと違う状況に身を置けば悪い習慣は断ち切れる」みたいな話ですね。
つまり、この実験の例で言うならば、「映画館」と「ポップコーン」という2つの組み合わせが習慣のトリガーになってるんで、そのどちらかをいつもと違う状態にしてやれば悪癖は出にくくなるわけです。なので、たとえば「普通の会議室でポップコーンを渡される」みたいな状況だと、いつもより口に運ぶ量は少なくなるはず。
研究チームいわく、
習慣を変えるには、習慣の起動条件を変える必要がある。そのためには、習慣が起動するコンテクストを変えるか、習慣が無意識に起動するまでの流れを止めるのが良い。
どちらの介入でも同じような効果は得られるだろうが、ダイエットをしているような人にとっては、環境を変えるのが難しいケースも多いだろう。その場合は、利き手じゃない方の手を使うようなシンプルな方法の方が使い勝手が良いかもしれない。
とのこと。これは「習慣化」について広く言えることなんで、押さえとくと何かと便利でしょうねー。