「アート好きは寿命が長い!」……かもしれないぞという話を調べた観察研究の話
https://yuchrszk.blogspot.com/2020/02/blog-post.html
こないだ「IQが高い人にはアート好きが多い」なんて話を書いたところ、今度は「アート好きは寿命が長い!(かも)」みたいなデータ(R)が出ておりました。
これはUCLの研究でして、6710人の高齢者を14年ほど調べ続けた観察研究になってます。ここでなにをチェックしたのかと言いますと、
- 参加者たちが、普段から美術館、博物館、コンサート、劇場にどれぐらい行っているか?を調べる
- 14年のあいだにお亡くなりになった人たちのデータと、アート活動への参加レベルを比べる
といった感じになってます。
それでなにがわかったかと言うと、まずはグラフを見ていただくと早いでしょう。横軸が「年齢」で縦軸が「生存者の割合」になってて、赤い線は「アート活動が多い人」を表し、青線が「アート活動を全くしない人」を表してます。
ってことで、わりとハッキリと「アート好きは長生き」って傾向が出てますね。これを具体的な数字にすると、
- 美術館やコンサートへ1年に1回または2回ぐらい行く人は、年に1度も行かない人に比べて死亡リスクが14%低い
- 数カ月ごとまたはそれ以上のペースで美術館やコンサートに行く人は、死亡のリスクが31%低かった
みたいになりまして、そこそこの数値じゃないでしょうか。
というと、「アートで長生きするんじゃなくて、定期的に美術館に行けるような人はお金持ちが多いからでは?」みたいな疑問がわく方もおりましょう。実際ところその可能性も否定はできないんですけど、研究チームはこう申しておられます。
アートと寿命の相関は、アート好きとアートに興味がない者の認知レベルの違いや、メンタルヘルスおよび身体活動の違いによっても部分的に説明できる。ただしこれらの因子で調整しても、アートと寿命の相関は残る。
いちおうこの研究では経済や健康レベルなどの要因はコントロールしてまして、その結果、やっぱりアートが寿命を伸ばしている可能性はあったんだそうな。
もちろん、この研究だけだと本当にアートで寿命が伸びるかどうかはわからんのですが、あり得そうなメカニズムとしては、
- アート活動のおかげで人間関係が改善し、社会的孤立感や孤独感が軽減される
- アートが慢性的なストレスや抑うつを緩和するから
- アートで心の知能指数を鍛えられ、共感力が高まるから
- アートを鑑賞すると人生の目的意識が高まることがあるから
- 創造性と想像力が育み、それが生存率アップにつながるから
といったところが考えられましょう。まぁ個人的には「アートで寿命が伸びる仮説」はそこそこ納得できるところで、
みたいなデータも昔からいくつかありますからねぇ。特にIQと寿命の相関はわりと強めに出てるんで、あくまで仮説ながらも「あり得る話だなー」とか思うわけです。
まぁ寿命を延ばそうとして強引にアートに興味を持つ必要もないとは思いますけど、ひとつの指標として頭に入れとくとおもしろいでしょうね。