「極度のストレスで白髪が増える!」はどこまで本当なのか?というマウス実験の話
「極度のストレスで白髪に!」みたいな考え方は昔からよく言われていて、極端な例でいうと「処刑の恐怖によりマリー・アントワネットの頭が一晩で真っ白に!」みたいな都市伝説もあったりするわけです。
といっても「ストレスが白髪の原因になる」って説を検証したデータってほとんどなかったんですが、近ごろ参考になりそうな文献(R)が出てきまして勉強になりました。なんせ私もここ数年は日に日に白髪の量が増えてまして、ここらへんは気になるとこであります。
これはハーバード大学などのチームによるもので、まずは研究者の問題意識から引用すると、
ストレスが身体にどのような影響を与えるか?というポイントについてが、誰もが一家言があるだろう。特に髪と肌に与える影響については皆が気になるところだ。この関係は果たして本当に正しいのかを調べるううえで、髪の色素沈着はとても簡単で扱いやすい。
とのこと。ストレスで肌のトラブルが起きるのは有名ですが、似たような現象が髪に起きてもおかしくないのでは?ってことですね。
ってことでチームは実験用のマウスを使った実験を行なってまして、
- マウスたちに痛みをあたえてストレスを与える
- マウスの毛の色がどうなるかを調べる
- ついでに、マウスのホルモンや神経系の働きも調べる
みたいになってます。なかなかマウスには辛い実験になってますが、いたしかたなしと申しますか。
さて、そこで何がわかったかと言いますと、こんな感じです。
- 急性のストレスが増えると確実に白髪は増える
- ストレスで白髪が増えるのは、自律神経が脅威を感じたせいでノルエピネフリン濃度が増え、そのせいで毛包の色素再生能力が失われるからである
- ストレスホルモン(コルチゾール)は白髪に影響を与えていなかった
ってことで、ストレスのせいで闘争逃走反応が起き、結果として毛包にダメージを与えるらしい。研究チームいわく、
急性ストレス、特に闘争逃走反応は、動物の生存にメリットをもたら。しかし、同時に急性ストレスは幹細胞を永久的に枯渇させてしまう。
とのことで、ストレスによって受けたダメージは取り返しがつかないっぽい。ヒトでも同じ現象が起きるかは不明ですが、こりゃ怖い……。
もっとも、この研究ではちょっと良いニュースも出てまして、
- ストレスを感じたマウスに交感神経から毛包への伝達を阻害する薬で使ったら、白髪が出にくくなった!
なんて結果も出てたりします。神経と毛髪のコミュニケーションを切断したら、ストレスが毛包にまで届かなくなったわけっすね。これはちょっとだけ希望があるかもですな。
いずれにせよ、人体の闘争逃走反応が白髪と結びついてる可能性は大きいんで、極度のストレスからは逃げておくに越したことはなさそうですねぇ。