このブログを検索




オリーブオイルで寿命が延びる?オメガ3で心臓を守れる?低炭水化物ダイエットでメンタルは改善する?の最新メタ分析3選

 

 

オリーブオイルで寿命が延びる?のメタ分析

このブログをお読みの方であれば、オリーブオイルが体にいいって話はもう聞き飽きたでしょう。地中海式ダイエットの代表的な食材で、「心臓にいい」「がんを防ぐ」「炎症を抑える」など、いろんな健康効果がうたわれております。

 


スポンサーリンク

では、実際に「どのくらいのオリーブオイルを摂れば効果があるのか?」ってことで、そこらへんを調べた、ありがたいメタ分析(R)が出ておりました。この研究は、7つのコホート研究(スペイン3件、アメリカ2件、イラン1件、イタリア1件)を統合したメタ分析で、合計681,325名という膨大なデータを解析したもの。対象者の平均年齢は41~67歳で、追跡期間は5年から28年とかなり長期間にわたっております。こいつは信頼感が高くて良いですな?

 

その結果、オリーブオイルをよく摂る人は、ほとんど摂らない人に比べて、以下のリスクが有意に低下してたんだそうな。

 

  •  全死亡リスク(すべての原因による死亡) → 15%低下

  •  心血管疾患による死亡リスク → 16%低下

  •  がんによる死亡リスク → 11%低下

 

ってことで、全体的には、オリーブオイルを日常的に摂っている人は、そうでない人に比べて長生きする可能性が高いんだってことですな。もちろん、「オリーブオイルを摂るだけで長生きできる!」って話じゃないですが、これはかなり有望な結果だと申せましょう。

 

オリーブオイルで死亡リスクが下がる理由はいろいろ言われてるんだけど、いま考えられてるのは、以下の3つのメカニズムであります。

 

  1.  強力な抗炎症作用:慢性炎症は、がん・心血管疾患・糖尿病など、さまざまな病気の原因のひとつ。オリーブオイルにはオレオカンタールというポリフェノールが含まれていて、これが炎症を抑える効果を持っております。オレオカンタールはイブプロフェン(鎮痛薬)と似たような抗炎症作用を持ってまして、そのおかげで病気のリスクが下がるんだと思われる。


  2.  抗酸化作用で細胞を守る:酸化ストレスが健康に良くないのはご存じのとおり。その点で、オリーブオイルに含まれるビタミンEやポリフェノールは、細胞を酸化ストレスから守る働きをしてくれるので、病気のリスクを下げられるのだと思われる。

  3. 心血管を保護する効果:心血管疾患は、日本人の死亡原因の第2位(1位はがん)。オリーブオイルにはこれを予防する効果があり、主成分であるオレイン酸が、LDL(悪玉コレステロール)を酸化しにくくし、動脈硬化を防いでくれる。

 

ってことで、オリーブオイルが体に良い理由はいくつもあるわけですな。残念ながら今回のメタ分析では具体的な摂取量については触れられてないんだけど、過去の研究を見る限りは、1日あたり15~30g(大さじ1~2杯)が推奨されてる感じっすね。このくらいの量であれば、サラダにかけたり、パンにつけたりと、比較的簡単に取り入れられてよいのではないでしょうか。

 

もちろん、これは観察研究なので因果関係はわからないんだけど、抗炎症作用・抗酸化作用・心血管保護作用といったオリーブオイルの働きを考えると、この結果には十分な説得力があるんじゃないですかねー。

 

 

 

オメガ3で心臓を守れる?のメタ分析

オメガ3が健康にいい!」って話も皆さま聞き飽きたかと思いますが、最新のメタ分析(R)が良い感じだったので内容をチェックしときましょう。これは心不全患者9,075名を対象にした最新のネットワークメタ分析で、「オメガ3はどれくらい効果があるのか? どのくらいの量を摂ればいいのか?」を調べた内容になってるんですな。

 

今回のメタ分析は14件のランダム化比較試験(RCT) をまとめた内容で、心不全の患者におけるオメガ3サプリの効果を評価してくれております。試験の参加者は合計9,075名で、オメガ3の摂取量は1日1,000~6,500mgまで、かなり幅広い設定になってますね。

 

では、その結果を見てみましょうー。

 

  • 心機能(左心室駆出率, LVEF)の改善:DHAが多めで、1日2,000~4,000mgのオメガ3を摂ったグループが最も大きな効果を得られた。ただし、1年未満の研究では効果が見られなかった。

 

  • 最大酸素摂取量(VO2ピーク)の向上:1日1,000mg以上のオメガ3で改善が見られた。1日4,000mg以上の摂取でも、VO2ピークは向上していた。

 

ということで、オメガ3ってのは1年以上続けることで心機能が向上し、酸素摂取能力もアップするってことですな。特に、DHAの割合が高いほど効果が出ているので、サプリを選ぶ際はここも参考にすると良いでしょう。

 

オメガ3の効果が大きいのも抗炎症効果のおかげで、こいつに含まれるEPAやDHAが炎症を抑える分子(レゾルビンやプロテクチン)を生成し、心筋のダメージを軽減してくれるっぽいんですな。そう考えると、他にもいろんなメリットがありそうっすね。

 

今回のメタ分析の結果をまとめると、以下のガイドラインが考えられるでしょう。

 

  • 心機能を改善したいなら → DHA多めのオメガ3を2,000~4,000mg/日、1年以上続ける

  • 酸素摂取能力(VO2ピーク)を上げたいなら → 1,000mg/日以上を目安に摂取

  • 最大限の効果を狙うなら → 4,000mg/日以上(ただし費用対効果は要検討)

 

効果を得るためには1年以上の摂取が必要ってとこが悩ましいですが、気になる方は飲んでみても良いかもですね。ただし、前にも紹介したとおり、オメガ3のサプリってのは酸化が激しい成分なので、ちゃんとした商品を選ぶのが難しいのが現状であります。

 

まぁ今のところは、「ようやく使ってもよさげなオメガ3サプリが2つ見つかった件」で取り上げた2種類は今も安全だと思ってますんで、迷った方はこちらをどうぞ。

 

 

 

低炭水化物ダイエットでメンタルは改善する?のメタ分析

久しぶりに、糖質制限ダイエットのメタ分析(R)も取り上げておきましょう。今回のお題は「糖質を減らすとメンタルは改善するか?」というもので、一部でチラホラ耳にする「ケトン体が脳にいい影響を与える!」とか「血糖値の乱高下を防いで気分が改善する!」みたいな話が、どれぐらい正しいのかって問題ですな。

 

今までのところ「低炭水化物ダイエットでメンタルは改善するの?」って問題については、あまり明確なデータがなかったんですが、今回は30件のランダム化比較試験(RCT)から、合計1,781名を対象にメタ分析を行って、精度の高い知見を出してくれております。

 

このメタ分析では、糖質制限ダイエットを「総エネルギーの35%以下を炭水化物から摂る食事」と定義して、以下の3つのメンタル指標に与える影響を調査したんだそうな。

 

  • 気分(ムード)
  • 不安・うつ症状
  • 記憶力(スピード)

 

その結果、低炭水化物ダイエットには以下のような影響があったらしい。

 

  1.  基本的には気分や不安を改善しない:全体的に、糖質制限ダイエットは気分や不安を改善しなかった。うつ症状にもこれといった影響はなかった。

  2. でも、一部の人にはプラスの効果があるかも?:糖質制限ダイエットの影響は、参加者の特性によって大きく異なる傾向も見られた。具体的には、神経系の疾患がある人(パーキンソン病などは生活の質(QOL)が向上(6件の研究で確認)し、120日以上の長期実践者は不安症状が若干改善(ただし、2件の研究のみ)した。

  3.  55歳以上では「記憶スピード」が低下:55歳以上の参加者は、低炭水化物ダイエットによって記憶の処理速度が遅くなるという結果が出た(2件の研究で確認)。これは、脳のエネルギー源が不足する可能性を示してるので、高齢者は慎重に取り組むべきなのかも。

 

ということで、全体的には糖質制限はメンタルへの影響はないと考えるのがよさげ。ただし、特定の条件下ではメンタル面に良い影響を与えるかも?ぐらいの話になりますな。

 

糖質制限ダイエットのメンタルへの影響が「人によって違う」理由はいろいろ考えられますが、

 

  •  ケトン体が効く人と効かない人がいる?:糖質制限で作られるケトン体は、神経系に問題を抱えている人(パーキンソン病やアルツハイマー病など)に限られそうな気がする。

 

  •  血糖値の安定が影響する?:糖質制限で血糖値の乱高下が減って「イライラしにくくなる」と言われるが、たいていの人はそこまで血糖値に問題がないので、それほど影響がないのかもしれない。

 

といったあたりが影響してそうな気がしております。おそらく神経系の疾患を持つ人が120日以上継続すればメンタル改善につながるかもだけど、大半の人には関係がない話だと申せましょう。どうぞよしなにー。


スポンサーリンク
ホーム item

search

ABOUT

自分の写真
1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

INSTAGRAM