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今週の小ネタ:マインドフルネスで頭は良くなる? サッカー+キウイで睡眠が改善? サフランの成分「クロシン」に抗炎症効果?

 


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

 



マインドフルネスで頭は良くなる?46件の研究をまとめた結果

「マインドフルネスって脳機能の改善に効くのでは?」みたいな話は昔からあるんですが、そこらへんを調べたメタ分析(R)が出ておりました。

 

これは、高齢者を対象にした46件の介入研究(総計2,442名)をまとめたもので、マインドフルネスの影響をしっかり評価した内容になってて良い感じです。具体的には、

 

  • マインドフルネスはどこまで脳に良いのか?
  • どれぐらいマインドフルネスの練習をすれば効果があるのか?
  • どんなエクササイズが最も効果的なのか?

 

といったあたりを調べてくれたんですよ。そこで、どんな効果が確認されたのかと言いますと、

 

  • 睡眠の質の向上(小さな改善)

  • ストレス、うつ、不安の軽減(小さな改善)

  • 認知機能の向上(最も大きな効果)

 

みたいな感じです。全体的にマインドフルネスの介入にはよい傾向が見られてまして、特に認知機能の改善がもっとも顕著なところがおもしろいですね。まぁ全体的なメンタルヘルスにも少しプラスに働くみたいなんだけど、劇的な変化というよりは「少し良くなる」といった程度なんで、そこはあんま期待しないほうがいいのかなーってとこです。

 

で、この研究では「どんなマインドフルネスが効果的だったのか?」も調べてくれていて、これがまた役に立ちます。こちらもざっくり要点を見てみますと、

 

  • 週1回のグループセッション(1〜2時間)

  • 10週間 継続

  • 毎日の自宅練習(25〜40分)

  • 呼吸に意識を向ける瞑想や、思考を観察する練習、ゆっくりした動作を取り入れたエクササイズが良い

  • 一部のプログラムでは1日集中リトリート(長時間の瞑想練習)も含む

 

って感じっすね。まぁ普通に生活をしていると、週1回のグループセッションやリトリートは難しいので、とりあえず一般的なマインドフルネス系のエクササイズを、1日25〜40分かけてやるのがいいんでしょうな。

 

ちなみに、ここで個人的に興味深かったのは、「全般的な健康向上」を目的にしたプログラムよりも、「特定の問題に焦点を当てたもの」のほうが効果が高かったところですね。どういうことかと言いますと、

 

  • うつを抱える高齢者向けのマインドフルネス → うつ症状の軽減に有効

  • 介護ストレスを抱える人向けのマインドフルネス → ストレス軽減に効果的

 

みたいな結果が出てまして、要するに「とりあえずマインドフルネスをやれば健康になれる!」と考えるよりも、目的に応じて適切なプログラムを選んだほうが良いってことなんでしょう。そう考えると、集中力が欲しい人とかは「呼吸に集中する瞑想」が良さそうだし、客観性や創造性を鍛えたいなら「オープンモニタリング瞑想」とかを実践したほうが良さそうっすね。

 

いずれにせよ、どうも瞑想は認知機能への効果がありそうなんで、実際にやってみたい方は、まず1日5〜10分の簡単な瞑想から始めて、徐々に時間を延ばしていくと良いのではないでしょうか。ぜひ「ちょっと脳を元気にしたいな〜」ぐらいの軽いノリでお試しくださいませ。

 

 

 

サッカー+キウイで睡眠が改善?

「キウイで睡眠の質が上がる」ってデータは、過去にブログでも取り上げたことがありました。キウイは抗酸化作用が高いし、葉酸も豊富だったりするしで、そのおかげで睡眠ホルモン(メラトニン)の分泌がスムーズになる可能性があるんですよね。

 

そんな中、新たなデータ(R)では、睡眠の質の低下に悩む36名を対象に「キウイと睡眠の関係」を検証してくれてて良い感じでした。割とちゃんとしたランダム化比較試験(RCT)で効果をチェックしてまして良いですねー。

 

では、詳細を見ていきましょう。今回の研究では、36名の子どもを以下の3グループに分けてます。

 

  • サッカーのみグループ:週2〜3回の小規模なサッカーゲームに参加してもらう
  • サッカー+キウイグループ:週2〜3回のサッカーに加え、毎晩2個のキウイを就寝1時間前に食べる
  • コントロールグループ:何もしない

 

こんな風に「運動+キウイ」の組み合わせを使い、睡眠にどれぐらいの変化があるのかを調べたわけですな。

 

すると、キウイの効果は私が予想したよりも良い感じでして、

 

  • サッカー+キウイグループの睡眠が最も改善。睡眠時間が増加し、寝つきが良くなり、睡眠効率(実際に眠れていた時間の割合)が向上した
  • サッカーのみを行ったグループも睡眠が改善し、睡眠時間と睡眠効率が向上した

 

みたいになってます。詳しいデータを見ても、割と睡眠の質がガッツリと上がってまして、「普段からよく運動をしている人は、キウイを食べるとさらによく眠れるようになるかも?」と思わせてくれるわけです。

 

もちろん、これは子どもを対象にした研究なので、大人にも同じ効果があるとは断言できないんですが、過去の研究では、キウイが大人の睡眠改善に役立つ可能性も示されているので、「試してみる価値はある」と言えそうっすね。ってことで、もし「睡眠を改善したい!」と思ったら、

 

  • 軽い運動を週2〜3回(ウォーキングやストレッチでもOK)

  • 就寝1時間前にキウイ2個を食べる

 

って組み合わせを試してみるとよろしいのではないでしょうか。特に「夜なかなか寝つけない…」って人ほど、キウイを取り入れる価値があるかもですね。

 

 

 

サフランの成分「クロシン」に抗炎症効果?13のRCTをまとめた結果

「サフランは凄い!」ってデータが増えている昨今でございます。サフランといえば料理に使われるスパイスとしてのイメージが強いですが、実は「クロシン」という抗炎症作用の高い成分が含まれていて、いろいろな健康メリットがあることがわかってきたんですな。

 

そんな中、クロシンの効果を調べたメタ分析(R)が出てましたんで、要点を見てみましょう。

 

このメタ分析では、13件のRCT(すべてイランで実施)のデータを統合し、クロシンが炎症や酸化ストレスにどれほど影響を与えるかを検討したもの。各研究の参加者は健康な人や病気を持つ人などさまざまで、実験で使われたクロシンの摂取量は1日15〜30mgぐらい。実験の期間は4〜16週間で、主に4つのポイントを調べてます。

 

  • C反応性タンパク質(CRP) → 炎症の指標

  • TNF-α(腫瘍壊死因子アルファ) → 免疫系の炎症シグナル

  • IL-6(インターロイキン6) → 慢性炎症に関与するサイトカイン

  • 総抗酸化能(TAC) → 体内の抗酸化レベル

 

そこで何がわかったのかと言いますと、

 

  • クロシンを飲んだグループには炎症マーカーの減少が見られた。具体的には、炎症レベル、免疫系の炎症反応、慢性炎症などが軽減されていた。
  • また、クロシンによって抗酸化力の向上が見られ、体内の抗酸化力が上がる傾向も見られた。

 

って感じでして、かなり良さそうな結果が出てますね。個人的には、あらためて「サフランを常用しようかしら?」と思わされました。

 

ただし、ここではデータの信頼性には注意が必要だなーって印象もありまして、シンプルに「クロシンすごいじゃん!」とは言えないとこもあったりはします。それと言いますのも、

 

  • どうにも全体の研究の質が低く、多くの試験でバイアス(研究の偏り)のリスクが高いと判断されている(研究の質は「中程度から低め」)
  • データのバラつきが大きく、試験ごとに良い報告と悪い報告もあり、一貫性に欠けてて判断しづらい。
  • すべての研究はイランで実施されており、他の国のデータがないため一般化しにくい

 

ってとこがあるんですよね。このあたりを考えると、「クロシンが炎症や酸化ストレスに効く可能性は高いものの、まだ確実とは言えない」ぐらいの判断に落ち着きそうであります。

 

では、「クロシンを試してみるべきか?」と言われますと、抗炎症&抗酸化のメリットについては一定のデータがあるんで、サプリを買ってもよいだろうと思うわけです。サフラン自体は安全性が高い成分だし、「メンタル面にも良い影響があるかも?」みたいな先行研究も多いですしね。「最近、炎症が気になる」「アンチエイジング目的で試したい」という方は、1日15〜30mgのクロシンサプリを4〜16週間試してみるのはアリかもしれません。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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