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プロテインの定番論争を専門家が検証してみたら、どんな結論になったのか?#2「長寿・植物性・健康リスク編」

 
 

さて、このシリーズでは、プロテインの専門家が、タンパク質をめぐる定番の議論11個を、現時点の科学でどこまで言えるのか検討したレビュー論文を紹介しております。

 

前回は、タンパク質を何回に分けて摂るべきか、ダイエット中の筋肉維持、満腹感、アミノ酸の働き、そして「特定のアミノ酸を減らすと長生きできるのか?」みたいな話を見てきました。

 

今回も引き続き、タンパク質の専門家たちが検討した11の論点から、残り6つをチェックしていきましょうー。

 

 

テーマ6. 低タンパク・植物中心の食事は長寿に有利なのか?

これは上の話と重なる議論で、「低タンパクで野菜メインの食事を続ければ、長生きできるのではないか?」って話であります。

 

で、こちらも結論は同じで、動物実験では、低タンパク食や特定のタンパク源を制限した食事が、寿命を延ばすケースは確認されているとのこと。特に昆虫などでは、その傾向が比較的はっきり出やすいんだそうな。

 

ただし、哺乳類になると話はかなり複雑でして、マウスですら、タンパク質制限の効果は小さかったり、かなり極端な食事制限が必要だったりしてるんですよね。さらには、この手の話は人間で長期的に再現されているわけじゃないので、なんとも言えないところであります。

 

実際のところ、実験室の動物ってのは、食べ物を探す必要もなく、転倒することもなく、筋肉量が生活能力を左右しないですからね。一方で、人間が長生きするためには、筋肉、骨、免疫、体力などがめっちゃ重要なんで、条件が違いすぎるのだと言えましょう。なので、「長寿のためには低タンパク食がベスト」と言うには、まだ早すぎっすね。

 

 

テーマ7. タンパク質が少ない食事では、つい食べすぎるのか?

これは俗に「プロテイン・レバレッジ仮説」と呼ばれる考え方で、過去に私のブログでも紹介しております。簡単に言うと、人間は、ある程度のタンパク質を満たすまで食べ続けようとするから、食事に含まれるタンパク質の割合が低いと、必要なタンパク質を得るために、炭水化物や脂質も余計に食べてしまうのだ!という理屈ですね。

 

この考え方には一定の支持がありまして、これまでの研究でも、タンパク質が薄められた食事では、総摂取カロリーが増えやすい可能性は指摘されているそうな。

 

ただし、この効果を過信するのも危険でして、高タンパク食にしても、超加工食品が多く、味が濃く、食べやすく、カロリー密度が高い食事なら、普通に食べすぎちゃうので注意したいところ。実際、とても高いタンパク質量にしても、超加工食品中心の食事ではカロリー余剰を完全には防げなかった研究もあるみたいなんで。

 

タンパク質は食欲管理に関わるものの、現代の食事に対して、タンパク質の調整だけはとても勝てないって感じでしょうね。

 

 

テーマ8. 植物性タンパク質でも筋肉はつくのか?

こちらは、「植物性タンパク質は不利なんじゃないの?」って考え方ですね。動物性タンパク質のほうが吸収がよく、必須アミノ酸も豊富だから、植物性だけでは筋肉づくりに必要な条件を満たせないのではないか……という疑問であります。

 

特に植物性タンパク質は、食品によってはロイシンなどの必須アミノ酸が少なく、筋タンパク合成を起こす力が弱いと考えられてますからね。そのため、植物性中心の食事では、筋トレをしても筋肉が増えにくいのではないか、と言われてきたんですよ。

 

で、たしかに植物性タンパク質は、動物性に比べて消化吸収率や必須アミノ酸の構成で不利な面はあったりします。そのため、特に単一の植物性食品だけに頼ると、ロイシンなどの必須アミノ酸が不足しやすいケースは否定できないんだそうな。これは、ちょっと植物性プロテインに不利な点ですね。

 

とはいえ、1日の総タンパク質量が十分で、複数の食材を組み合わせていれば、この問題はかなり小さくできまして、大きく心配する必要はなし。実際、1日あたり体重1kgあたり1.6g前後のタンパク質を摂りながら筋トレをした研究では、ヴィーガン食と雑食のあいだで、筋肥大や筋力の伸びに大きな差が見られなかったそうな。

 

なので、豆腐、納豆、豆類、大豆プロテイン、えんどう豆プロテイン、小麦タンパクなどをうまく組み合わせれば、植物性中心の食事でも筋肉は十分につくとお考えください。ここで大事なのは、「動物性か植物性か」よりも、

 

  • タンパク質の総量は足りているか
  • 特定の必須アミノ酸が不足していないか
  • 食事全体のカロリーや栄養バランスはどうか

 

あたりですんで。

 

 

テーマ9. 高タンパク食は健康に悪いのか?

こちらもよく聞く議論で、「タンパク質を摂りすぎると、糖尿病、腎臓病、骨粗しょう症などのリスクが上がるのではないか?」って指摘ですね。ここは、インスリン感受性、腎臓、骨の3つに分けて考える必要があります。

 

 

9-A. 高タンパク食はインスリン感受性を悪化させるのか?

タンパク質で糖尿病のリスクが上がるって話もありますが、現時点でははっきりしておりません。

 

高タンパク食と糖尿病リスクの関連を示す研究もあるんだけど、多くは観察研究なんですよね。そのため、たんに「肉を多く食べる人は、揚げ物とか砂糖入り飲料が多いのでは?」って疑いを取り除けないんですよ。

 

また、「血中の分岐鎖アミノ酸が高い人ほど糖尿病リスクが高い」って話もあるものの、こちらも糖尿病の進行によって分岐鎖アミノ酸が増えている可能性が高いとのこと。高タンパク食そのものが、健康な人の糖代謝を悪化させるとは、いまのところ言いにくい感じであります。

 

個人的には、砂糖や精製された炭水化物の一部をタンパク質に置き換えるなら、全体としては悪くないケースのほうが多いんじゃないかと。

 

 

9-B. 高タンパク食は腎臓を悪くするのか?

腎臓にダメージと聞くと、ついビビっちゃいますけど、このレビューでは「健康な人については、今のところ心配しなくていいよ!」と指摘しておられます。それと申しますのも、

 

  • 高タンパク食を摂ると、腎臓のろ過量が増えることはある。これを「腎臓に負担がかかっている証拠だ!」と見る意見もあるが、現時点では、健康な人において腎機能が悪化することを示すデータはない。

 

  • 骨についても同じで、「タンパク質を多く摂ると尿中カルシウムが増えて、骨が弱くなる」という説は昔からある。しかし、近年の研究では、尿中カルシウムが増えても、腸からの吸収量などが調整されるため、体全体のカルシウム収支が悪化するとは限らないことがわかってきた。そのため、むしろ高齢者などでは、タンパク質不足のほうが骨や筋肉にとって問題になる可能性が高い。

 

ってあたりが、高タンパクの腎臓ダメージを支持してないからです。少なくとも、健康な人が必要以上に怖がるような話ではなさそうっすね。

 

ただし、これは言わずもがなですが、すでに慢性腎臓病がある人は話が別。この場合はタンパク質制限が必要になることもあるので、自己判断で高タンパク食に寄せるのは避けてくださいませ。

 

 

9-C. 高タンパク食は骨を弱くするのか?

「高タンパク食で骨がもろくなる!」って主張もたまに見ますが、これはすでにかなり否定された話だったりします。

 

昔は、「タンパク質を多く摂ると尿中カルシウムが増え、骨からカルシウムが流れ出す」と考えられてたんだけど、近年の研究では、尿中カルシウムが増えても、腸からの吸収量なども変化するため、体全体のカルシウム収支が悪化するわけではないことが示されてるんですな。

 

というか、特に高齢者では、低タンパク食のほうが骨と筋肉の両面で問題になりやすいんで、高タンパクのほうがいいでしょう。

 

 

テーマ10. 現在の推奨量は、本当に健康のために十分なのか?

日本を含む多くの国では、体重1kgあたり0.8g前後のタンパク質が推奨されております。

 

ただし、これは筋肉を増やすための量でも、加齢による筋肉減少を防ぐための量でも、減量中に筋肉を守るための量でもないのが大事なところ。筋トレをする人、高齢者、減量中の人、植物性中心の食生活を送る人などでは、0.8g/kgだと少ないと思われるんで、注意したいところです。

 

実用的には、日常的に運動する人や筋肉量を維持したい人なら、体重1kgあたり1.2〜1.6gほどが目安。体重70kgなら、1日84〜112gぐらいっすね。

 

もちろん、これは「全員が絶対に摂るべき!」って数字じゃないんだけど、最低基準だけを見て「0.8g/kgで足りているから問題なし」と考えるのも、やや楽観的でしょうな。

 

 

テーマ11. タンパク質は朝に多めに摂ったほうがいいのか?

これは、朝食のタンパク質を増やしたほうが、筋肉や体力に有利なのではないか?みたいな考え方です。こちらは割ともっともらしい話で、たとえば1日2回に偏らせるより、3回に分けたほうが筋肉がわずかに増えやすかったって研究もあるんだそうな。

 

とはいえ、たいていの研究では、筋力や筋肉量への影響は統計的にははっきりしていないんで、「朝食にタンパク質を増やせば筋肉が増える!」とは言えないのが現状でしょう。タンパク質の総量に比べれば、摂取タイミングの優先度はかなり低いと考えたほうがよさげ。

 

とはいえ、日本の朝食はタンパク質が少なすぎることが多いので、卵、ヨーグルト、納豆、豆腐、魚、プロテインなどを少し足しておくのは、悪くないとは思いますが。

 

 

まとめ

ってことで、研究をざっくりまとめると、

 

  • 筋トレをする人や、加齢による筋肉減少を避けたい人なら、1日あたり体重1kgにつき1.2〜1.6gを摂取しよう!
  • 高タンパクにまつわる不安は、たいていヒトで立証されてないので安心していいよ!
  • 高タンパクの食欲アップ効果も、まぁそんな気にしなくていいよ!

 

みたいな感じですかね。細かいとこにこだわる前に、まずは筋トレを続けつつ、必要な総量を毎日の食事で確保してけば、まぁ特に問題はないんでしょうな。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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