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アメリカが作った「新・健康な食事のガイドライン」って、どうよ?

 
 

最近、米国で「2025〜2030年 食事ガイドライン」が発表されましたが、皆さまご覧になりましたでしょうか? ざっくりこんなやつです。

 


ご覧のとおり、従来のフードピラミッドをそのまま上下逆にしたような「逆さピラミッド」が採用されてるんですね。いちおう簡単におさらいしておくと、米国の「食事ガイドライン(DGAs)」ってのは、基本的に5年ごとに更新されるもので、国内の栄養政策や教育、給食などの基準として使われる重要な文書であります。アメリカ人の健康な食事の土台になるような、めちゃくちゃ大事なガイドラインなんですね。

 

で、詳しい方はご存じのとおり、いまこのガイドラインが軽く燃えております。というのも、これまではDGAC(食事ガイドライン諮問委員会)という独立した科学者チームがレビューを行って、その推奨に基づいてガイドラインを作ってきたんですが、今回は政府が「別の新しい科学委員会」を立ち上げて、従来のDGACの意見を部分的に無視。その代わりに、新委員会の報告書(90ページ)をベースにガイドラインを組み立てちゃったんですよ。

 

ということで、DGACメンバーの研究者も「通常の審査プロセスを経ておらず、科学的合意が反映されていない!」と公に発言してまして、なかなか混迷を極めているわけです。

 

ということで、私もガイドラインをチェックしてみたんですけども、「おっ、これは悪くないのでは?」ってところと「こりゃ微妙じゃないか?」っていうとこがどっちもある感じでした。ということで、新ガイドラインの個人的な感想を軽くまとめておきましょう。

 

 

ポイント1. タンパク質の推奨量が増加してる

これまでは「体重1kgあたり約0.8gのタンパク質を摂ろう!」と言ってたのが、今回から体重1kgあたり1.2〜1.6gに増量しております。私もかねてから「タンパク質は体重1kgあたり1.6gは必要でしょう!」と言ってますし、これは年を取って筋肉が減る問題や代謝性の疾患を予防するって観点からも大賛成っすね。ただし、タンパク質を増やすと自動的に脂質の摂取も増えがちなので、全体の栄養バランスには注意が必要になるでしょうな。

 

 

ポイント2. 「健康な脂肪」の定義が大きく変わってる

これまでのガイドラインでは「オリーブオイルやナッツの油」など、主に不飽和脂肪酸が推奨されてたんですけど、新しいガイドラインでは、バターや牛脂、全脂乳など動物性脂肪も「健康」とされてたります。まあ、個人的にも「別に動物性脂肪そのものが悪いってことは少ないだろうなー」と思ってるんで、ここは賛成ですかね。

 

が、その一方では、「飽和脂肪酸は総カロリーの10%以内に抑えるべし」という従来のルールは残ってたりしまして、「このガイドラインに従える人っている?」とか思ったりしました。肉・卵・チーズを推奨しつつ飽和脂肪を抑えろと言われても、一般人がその線引きをするのはほぼ不可能じゃないかなーって感想ですね。

 

 

ポイント3. 「高度加工食品」はNG。ただし定義が曖昧

このガイドラインは「リアルフードを食べようぜ!」ってアドバイスを強調してまして、「高度加工食品」は避けるべきとしています。こちらも私は大賛成で、なんせパレオダイエットってのは基本的に「できるだけ未加工の食品を食べる」ってのを推す食事法ですからね。

 

ただ、問題点としては、この「高度加工食品」ってワードがまだ科学的な定義があいまいなとこでしょうね。このガイドラインの考え方だと、ホエイプロテインとか豆缶まで含まれてしまいかねないんで、そこは注意が必要でしょう。

 

あと低所得層にとっては、コストと保存性の面から加工食品は重要な選択肢になるんで、それらを一括でNG扱いすると健康格差を広げかねない気もしますなぁ。一見「食べ物を加工せずに、自然な形で食べよう」というスローガンは魅力的だし、かなり有効なアドバイスだとは思うものの、このメッセージを実践しにくい層がいるのは事実なんで。なにせ鮮度の高い肉や野菜は高価なんで、そこもふくめて「どこまでの加工食品ならいいか?」って考え方を提示してくれるとありがたいなーとか思ったり。

 

 

ポイント4. アルコールのガイドラインがぼやけた

アルコールについては、以前は「男性は1日2杯、女性は1日1杯まで」みたいな明確な基準が提示されてたんだけど、今回は「控えめにしましょう」ぐらいのゆるい記述になってます。おそらく、最近は「酒はできるだけ少ないほうが良い!(なんなら飲まないのが一番)」って見解が主流になってきたんで、そこらへんに合わせた感じなんでしょうな。そこは良いとは思うものの、あいまいな表現ゆえに現場では混乱するでしょうなぁ。

 

 

ポイント5. 「逆ピラミッド」の視覚化が混乱しそう

あと、今回のガイドラインは「逆さまのピラミッド」を採用してるんですけど、これが実際のガイドライン本文とは食い違ってるのも気になるところです。全体的には、この図では赤身肉・チーズ・鶏肉などが一番上(=「多く食べよう!」)に配置されていて、全粒穀物は最下部(=「少なめに食べよう!』)に追いやられてるんだけど、ガイドラインの本文では「全粒穀物は積極的に摂取すべし」と書かれてたりするんですね。つまり、図と文章がワケわかんないことになってまして、これを見た人は「ん?どっちを信じればいいのか?」とか思っちゃうかも。

 

 

ってことで、私としては「前より良くなったとこもあるけど、確かに混乱しそうなとこも多いよなー」って印象ではありました。なんとも難しい問題ですけども、ここらへんは「いろんなガイドラインを比較して、共通してるとこを参考にする」みたいな姿勢が大事なのかなーとか思いました。たとえば、

 

  • イギリスの「Eatwell Guide」
  • 世界保健機関(WHO)のガイドライン
  • 2020〜2025年版の旧DGA

 

といった各機関のアドバイスを見比べてみると、以下のようなメッセージは一貫しているんじゃないかと。

 

  • 果物と野菜を多めに
  • 全粒穀物を中心に
  • 適量の乳製品とタンパク質(特に豆類・魚・卵)を摂ろうね
  • 飽和脂肪、塩、砂糖は控えめにね

 

ここらへんは、各機関が一致する「栄養コンセンサス」って感じですね、とりあえずここらへんさえ念頭に置いとけば問題ないでしょう。その点で、今回の米国新ガイドラインの一部は、この流れから微妙に外れてしまっている感はありますかねぇ。少なくとも、もうちょい透明な手続きで議論して欲しかったなーってのは、多くの健康マニアが思うとこでしょうな。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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