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実は「すぐやる人」ほど危ない?先延ばしの知られざるメリットを調べた研究の話

 

 

「先延ばしを防ぐ方法」みたいな話は山ほどあって、このブログでもいろんな対策を取り上げてまいりました。先延ばしをする人はメンタルを病みやすいなんてデータもあるんで、こいつが良くないことは確実でしょう。

 

とはいえ、近ごろの研究を読んでいると、「先延ばしは100%悪だ!」とも言い切れないデータがチラホラ出てきているのも事実だったりします。特にRMIT大学のローレン・セイリング先生らが行った研究(R)は、「ついぐずぐずしちゃう人」の隠れた才能について掘ってくれておりました。

 

「先延ばしに良いことなんてあるのか?」と思っちゃうところですが、ここで研究チームが注目したのが「プレクラステネーション(pre-crastination)」って問題であります。これは、物事にすぐに取りかかるのが得意な人に起きがちな問題で、簡単に言うと、

 

とにかく早く終わらせようとしすぎて、十分に考えないまま着手してしまう傾向

 

のようになります。たとえば、

 

  • 仕様をちゃんと読まずに仕事を始める
  • 選択肢を十分に比較せずに決めてしまう
  • とにかく“終わらせること”が目的になる

 

みたいな感じで、いわば「即断即決のしすぎにより失敗しちゃう」パターンっすね。なんにでもすぐに取りかかるのは一見効率的なようなんだけど、実際には多くの問題もあるのではないか?ってことですな。

 

では、「先延ばし人間」は本当に有利なのか?って点を確かめるべく、研究チームは260名の男女を対象に、以下のポイントを測定したんだそうな。

 

  • 参加者の先延ばし傾向(やろうと思っていたことを、後回しにしないかどうか)

  • フラストレーション耐性(面倒なことへでも、我慢強くコツコツやれるかどうか)

  • 発散的思考(1つの物に複数の用途を考える能力。クリエイティブな能力に近い)

 

これにより、先延ばしをする人の方が有利なところを調べてみたわけですね。その結果、なにがわかったかと言いますと、なんと先延ばしをするタイプのほうが、

 

  1. フラストレーション耐性が高い!:先延ばし傾向が高い人ほど、面倒な状況でもイライラしにくく、状況が自然に進むのを待てる特徴があった。

  2. 発散的思考が高い!:先延ばし傾向が高い人ほど、アイデアを“遊ぶように”広げる能力が高い傾向もあった。つまり先延ばしをする人は、「すぐに答えを出さず、可能性をいじり回す」ことができる。

  3. 論理的な推論の成績が良い!:先延ばし傾向が高い人ほど、論理的推論テストの成績も高い傾向もあった。研究チームいわく、「先延ばし人は、子どものような探索的アプローチを示す」とのこと。

 

ってメリットがあったんだそうな。これだけ見ると、「なんだ!それなら、すぐにやるよりも、先延ばしのほうがいいじゃん!」って結論になっちゃいますな。

 

が、なにごとも細部が重要なもんでして、当然ながらすべての先延ばしが良いわけではありません。研究チームは、参加者に確認された「先延ばし」を2種類に分けております。

 

  • パッシブ先延ばし:ただやる気が出ないせいで先送りし、その後で罪悪感に苦しむタイプ。これは普通に問題の種になりやすい。
  • アクティブ先延ばし:あえて待つことで締め切り直前の集中を楽しんだり、遅らせることが戦略になっているタイプ。こちらは“意図的な遅延”なので、創造的な仕事では、むしろ強みになりやすい。

 

ということで、先延ばしなら何でもいいって話ではなく、あくまで“戦略的に遅らせている場合に限ってメリットが出るってことですな。まあ当然と言えば当然の結論っすね。

 

なので、この研究から得られる教訓は、大きく以下の2つになりましょう。

 

  1. せっかちな人は、あえて遅くする:もしあなたが、常に前倒しで、早く終わらせないと不安で、ぐずぐずするのが許せないタイプなら、少しだけブレーキをかけてみると吉。あえて即決せず一晩寝かせたり、10分だけアイデアで遊んでみたり……といった態度を保つことで、創造性がブーストする可能性があるんで。


  2. 先延ばしが多い人は、先延ばしの種類に気をつける:もしあなたがギリギリまで手を付けず、締め切り直前に本気を出すタイプなら、「いまの状態は『戦略的遅延』か、それとも『単なる回避』か?」と自問してみるのが吉。もしここで罪悪感がわくならパッシブ型で、楽しんでいる感覚があるならアクティブ型の可能性がある。

 

そんなわけで、今回の研究によれば、「少し待つ力」は思考の質を上げる可能性があるよーってことなので、皆さまも、すぐに返信しないメールや、即断しない意思決定をあえて作ってみるのも良いかもしれません。私自身、原稿を書き始める前に1日寝かせたり、散歩しながら構成を練ったりする工程をよく入れますが、こっちのほうが明らかにアウトプットが良くなったりするんで、なんとも面白いもんです。

 

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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