カカオは高血圧を防ぐのか?約9000人を3年以上追跡して見えてきた「健康的なチョコの量」とは?
「チョコレートは体にいい」という話は、健康界隈ではもはや定番の話。このブログでも過去に何度か取り上げてきましたし、皆さんも一度は「ダークチョコは血圧を下げる」とか「ポリフェノールが血管にいい」みたいな話を聞いたことがあるんじゃないでしょうか。
とはいえ、これまでの研究の多くは「数週間〜数か月チョコを食べたら血圧がどうなるか?」みたいな短期の試験ばかりで、「何年も食べ続けたら高血圧を防げるのか?」って問題については、意外とデータが少なかったんですね。このへんは「長期の予防効果」って話になるんで、短期試験だけじゃ判断がつかないわけです。
そんな中で、新たに「カカオフラバノールを長期的に摂取したら高血圧の発症は防げるのか?」を調べた大規模なランダム化比較試験(R)が出まして、これがなかなか興味深い結果だったので中身をチェックしておきましょう。
カカオエキスを3年以上飲んだらどうなるか?
この研究は、平均年齢71歳の男女8,905人が対象。参加者はみんな普通に健康な人を選んだんだそうな。
研究では、参加者を4つのグループにランダムに割り振っております。
- カカオエキス + プラセボのサプリを飲む
- カカオエキス + マルチビタミンのサプリを飲む
- マルチビタミン + プラセボのサプリを飲む
- プラセボ + プラセボのサプリを飲む
実験で使われたカカオエキスは、カカオフラバノール500mg(エピカテキン80mgを含む)が入ってまして、これを中央値で3.4年にわたって飲み続けてもらったんだそうな。なかなか手間のかかる実験ですなぁ。
その上で、実験の期間に参加者が「高血圧を発症したか?」を追跡したところ、結果はこんな感じになりました。
- 全体の結果から言うと、カカオサプリは高血圧リスクを有意には下げなかった。
- ただし、ベースラインの収縮期血圧で層別解析してみたところ、以下のような差も出ている。
- 収縮期血圧が120mmHg未満(正常)の人は、カカオで高血圧リスクが24%低下する
- 収縮期血圧が120〜139mmHg(高め)の人は、カカオによる効果がない
つまり「カカオの効果って、血圧が正常な人だけにしか発揮されないのでは?」って傾向が見えてくるわけですね。しかも差が出始めたのは研究がはじまってから約2年後なので、短期の試験では拾いにくいタイプの効果だったのかもしれませんな。
なぜカカオが血管に効くのか?
では、なんでこういう結果が出たのかってことですけども、カカオフラバノールには、血管の機能の改善に役立つメカニズムがいくつか示されております。たとえば、
- 一酸化窒素(NO)生成を増やす
- ACE(アンジオテンシン変換酵素)の働きを抑える
- 炎症を減らす
- 酸化ストレスを減らす
みたいな感じっすね。このへんの作用は、血圧や動脈硬化の文脈ではわりと王道の話じゃないでしょうか。
ちなみに、過去には「もうちょい短い期間でカカオを摂取したらどうなるか?」って実験のデータをまとめたメタ分析(R)も出てまして、これによりますと、
- カカオ製品を4〜24週間摂取すると、平均で収縮期血圧が約2.5mmHg、拡張期血圧が約1.6mmHg下がる。
- 高血圧の人に限ると、収縮期で約4mmHg、拡張期で約2mmHg下がるって報告もある。
という感じでして、全体として「効くとしてもマイルド」な感じだなーって印象ですね。とはいえ、実際には血圧2mmHgの差が将来の健康に効いてくるケースは十分あるでしょうから、侮れない数字でもありますが。
ちなみに、今回の実験で「正常な血圧の人にだけ効果が出たのはなぜ?」ってとこも気になりますが、これについてはよくわからんなーとしか言いようがないところです。ただし、考えられる可能性としてはいくつかありまして、
- ただの偶然じゃないか説:高血圧リスクは事前に明確に計画された評価の項目ではなく、統計的にたまたま違いが出たのかもしれない
- 生活習慣の差じゃないか説:BMIや食事、喫煙、飲酒などは大きく違わないんだけど、運動・ストレス・サプリ使用などの変化は十分に追えていないのかもしれない
- 「血圧を下げた」より「加齢による上昇を抑えた」説:加齢による血圧上昇を「抑制」した可能性がある
特に3つ目はわりと筋が通っていて、加齢でじわじわと血圧が上がってしまう分を抑えるなら、差が出るまで年単位の時間がかかるのも説明しやすいっすね。ただし、ここは推測の域を出ないので注意であります。
カカオを実践するならどうする?
というわけで、この研究だけで「カカオで高血圧予防!」と断言するのはまだ早いものの、既存のデータを合わせると「血管に良い可能性」は高いんじゃないでしょうか。
では、健康のためにどれぐらいのチョコを食べるべきかってことですけども、ここでいつも問題になるのが、フラバノールの量がチョコレートによってバラバラなところです。カカオ系の製品ってのは加工の過程でポリフェノールが減りやすいので、市販のチョコだと研究レベルの量に届かないことが多いんですよ。
過去のメタ分析の傾向としては、
- ポリフェノール(フラバノールを含む)が432mg以上だと血圧が下がりやすい
- フラバノールは500mg以上で効果が安定しやすい
- 900mg前後のほうがベターかもしれない
みたいなことがわかっております。つまり、「なんとなくチョコを食べる」ぐらいの感覚だと、そもそも量が足りない可能性が高いわけですな。
なので、現実的な落としどころはこんな感じです。
- ダークチョコを選ぶ(目安はカカオ70%以上、できれば85%以上)
- 量は少なめに毎日こつこつ食べる(10〜30g程度)
とりあえず、これぐらいのガイドラインを守っておけば良い感じでメリットを享受できるはず。要するに「コーヒーのお供に2〜3かけら」ぐらいがちょうどいいラインじゃないかと。お試しあれー。



