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痩せたい人が増えたせいでプロテインが足りなくなった話をしつつ、私のプロテインの値上げの言い訳をさせて欲しいエントリ

 
 

ここ1〜2年ほどちょっとヘンな現象が起きてまして、それが、

 

  • ダイエット薬が流行ってるせいで、プロテインの価格が爆上がり!

 

というものです。どういう話かと言いますと、まず前提として、ここ数年で爆発的に広がっているのが「GLP-1受容体作動薬」と呼ばれるダイエット薬です。これは過去にブログでも書いたことがありまして、詳しくは「15%痩せる薬?GLP-1のリアルな効果と限界についての話」「【質問】 クリニックでやってる「 ダイエット注射」って効果ありますか?」をご覧いただきたいところですが、いまのところ確認されている効果としては、

 

  • 食欲がガッツリ落ちる
  • 体重が10〜20%減る
  • 血糖コントロールも改善

 

といったあたりはほぼ確実でして、いまや肥満治療の主役になりつつあるんですな。実際、アメリカを中心に利用者は急増していて、肥満治療の“ゲームチェンジャー”とまで言われてるぐらいなんですね。当然、近年は日本でも激烈に流行っていて、ちょっと太ったおじさんの経営者が「定期的にGLP-1をやってますよー」と言ってるのを見かけることも増えてきました(そして、そのたびに「いやー、そんな体形維持のためにやる必要ありますかねぇ……」と、苦言を呈しているという)。

 

 

 

GLP-1を使うと筋肉も減っちゃう問題

で、確かにGLP-1は減量の効果があるんだけど、ここで問題になるのが体重減少の中身であります。一般的に、私たちの体重が落ちるときってのは「脂肪」と「筋肉(除脂肪体重)」の両方がどちらも落ちていきまして、「体脂肪だけが減る!」ってことは絶対にないんですよね。体がエネルギー不足になると、脂肪だけでなく筋肉のタンパク質まで燃料や材料として切り崩してしまうので、これはいたしかたないところです。

 

その点で、GLP-1を使った場合に、私たちの筋肉はどうなるのかと言いますと、

 

  • 体重減少の25〜40%が筋肉などの除脂肪組織である

 

ってケースがよく報告されています。たとえば、あなたがGLP-1で10kgの体重が減った時は、そのうち2.5〜4kgは筋肉が減っちゃってるかもしれないわけっすね。これはなかなかの違いですなぁ。

 

ただし、これはGLP-1が悪いって話ではなく、ダイエットには必ずつきまとう問題なので、そこは誤解されませんようにお願いいたします。ダイエットをするにはどうしてもカロリーを減らさざるを得ず、そのせいで栄養(特にタンパク質)が不足しがちになるので、結果として筋肉も減っちゃうのはいたしかたないことなんですよ。

 

 

 

そこで「タンパク質」が急に重要になる

でもって、この「痩せたはいいけど筋肉も減っちゃうからアンチエイジングにはよくない問題」に対して、多くの医師や栄養士がまず勧めるのが高タンパク食であります。その理由はシンプルで、タンパク質をたくさん摂取すればするほど、

 

  • 筋肉の分解を抑える

  • 体脂肪の減少をサポートする

 

という効果を得られるからっすね。タンパク質ってのは筋肉を作る材料そのものであり、食欲が落ちた状態でも補給しやすい栄養素なので、こういう対策が出てくるのは当然でしょう。

 

ただし、GLP-1を使うと食欲がなくなって固形物がつらくなるので、肉をムシャムシャ食べるわけにもいかなくなるのが難点。そこで、栄養士さんの多くは「プロテインを飲みましょう!」と指導することが増えまして、かくして現代のダイエット市場ではプロテインの需要が急増することとあいなったわけです(特にアメリカ)。

 

これに加えて近年では、

 

  • 高齢者の筋肉維持にもプロテインを使おう!

  • 一般人の健康維持にもプロテインを使おう!

 

みたいな風潮も広がってまして、これがさらに世界的なプロテインの需要に拍車をかけてるんですな。つまり、かつてはプロテインは「筋トレガチ勢」や「アスリート」のものだったのが、いまやみんなのものになったわけです。

 

その結果、食品業界では何が起きているかというと、

 

  • 高タンパクヨーグルト
  • 高タンパク飲料
  • 高タンパクスナック

 

などの市場が急拡大。そこにGLP-1の普及でタンパク質の需要が一気に増加した結果、いま世界中で原料の取り合いが起きてるんですよ(特にアメリカ)。恐ろしいですねぇ。

 

しかも、こまったもんで、プロテインの主原料であるホエイってのは、簡単に増産できないものなんですよ。というのも、ホエイは牛乳からチーズを作る過程で出る副産物なので、

 

  • 牛乳生産:天候や飼料事情、牛群規模に左右されるうえ、急には増やせない
  • 酪農コスト:飼料代・エネルギー代・人件費の影響をもろに受けて上がりやすい
  • 環境制約:排出規制や水資源、土地利用の制約があって無限には拡大できない

 

などの影響を強く受けるんですね。そのせいで、いまのプロテイン市場ってのは、需要は激増しているのに供給はゆっくりって状態が普通になりまして、そのせいで原価が激しく上がりまくっているという、経済学の教科書どおりの現象が起きてるわけです。具体的にどれぐらい上がっているかと言いますと、海外報道では、ホエイ価格が2024年8月から2025年12月までに約52%上昇したとされてたりします。どこまで上がるのかがわからなくて怖い……。

 

そんなわけで、いろいろと言ってきましたが結局なにが言いたいかといいますと、

 

 

ってことです。さすがに原価が1.5倍にも達しようかという状況では、今の値段を続けていると製造が維持できなくなっちゃうもんですから。実際、美容系インフルエンサーさんが手がけてるプロテインもバタバタと閉業が続いてまして、なんだか「行くも地獄 戻るも地獄」の修羅の道みたいになってるんですよねぇ。

 

ただ、せっかく自分で常用できるプロテインができたのに今さら取りやめるのもつらいので、ここは続けさせてもらおう……と。果たしていくらの値上げになるかはわからんのですが、決して「いまプロテインが売れてるから、価格を上げれば儲かってウハウハだ!」って話じゃないことはご了承いただければってところです。にしても、ダイエット薬のせいでプロテインが足りなくなるとは思わなかったなぁ……。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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