リベルサスで痩せたら筋肉は減っちゃうの?を調べたメタ分析の話
ってことで昨日は、いま「痩せる薬」として注目を集めているリベルサスのメタ分析を見てみました。SNSを中心に「マジで10kg落ちた」「何年も落ちなかった体重がスルスル減った」といった報告があふれている、あの薬ですな。実際、前回のメタ分析でも、平均して7kg前後の体重減少が見られることが複数の研究でも確認されてまして、肥満にお悩みの方にはかなり良いのではないかと思うわけです。
が、同時に、リベルサスには以下のような副作用の心配も出てきてたりします。
「確かに痩せるのはいいけど、筋肉も落ちちゃうのでは……?」
GLP-1薬の効果が高いのは間違いないものの、同時に筋肉も減ったって声が意外とあるんですよね。これが事実ならまことに困ったものであります。
ということで新しいメタ分析(R)は、10件のランダム化比較試験をまとめて「リベルサスと筋肉」についてガッツリ調べてくれてて参考になりました。まず、この研究に含まれる被験者の内訳は、以下のようになっております。
- 肥満のある人
- 1型糖尿病の患者
- 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の女性
- 統合失調症など精神疾患を抱える人
- 胃バイパス手術後の人
つまり、「体重や代謝に関する悩みを持つさまざまな層」を含めて、リベルサスの影響をチェックしたわけですな。
また、このメタ分析では、DXA(デキサ)法という精度の高い分析法を使って、体脂肪と筋肉の変化をチェックしてまして、その結果は以下のとおりです。
減った体重の内訳 | 数値 |
---|---|
総減少体重 | 約7kg |
除脂肪組織(Lean mass) | 約2kg(=全体の28%) |
脂肪量 | 約5kg(=全体の72%) |
こんな感じで、体重が7kg減った場合、そのうち約2kgは筋肉や内臓、水分などの除脂肪組織から来ているってことですな。
そう聞くと、「えっ、3割も筋肉が落ちてるの?ヤバ!」と思う方もいるかもですが、以下のポイントを踏まえておくと良い感じです。
- 除脂肪組織 = 筋肉ではない:まず前提として、DXAで測定される除脂肪組織は、筋肉だけでなく、臓器(肝臓や腎臓など)、結合組織、体内水分なども含まれております。つまり、2kgの除脂肪組織が減ったからといって、筋肉が2kg減ったと断定はできないとこなんですよ。特にGLP-1薬は「胃の排出を遅らせる」作用もあるため、体内の水分や腸内内容物が一時的に減少し、それが除脂肪組織に反映されている可能性もあるんですよ。
- 減量時の筋肉減少は「ある程度は仕方ない」:意外に思われるかもしれませんが、体重が減れば筋肉もある程度は減るのが普通の話。たとえば、食事制限だけの減量法では、体重減少のうち10〜30%が除脂肪組織から来るのはよくありますんで、今回の「28%」という数字も、むしろ標準的な範囲だと言えましょう。
- 体脂肪率や体組成は改善している可能性大:さらに言えば、GLP-1薬を使った人の多くは体脂肪率が下がり、相対的に健康な体組成になっていることもわかってたりします。特に肥満に悩んでいる人は、もともと筋肉量が多い傾向があるので、筋肉の絶対量が2kg減っても、影響は限定的であるケースが多かったりします。
そんなわけで、「体重が減った=筋肉が大幅に減った=悪」って単純な図式には落とし込めない、ってことであります。
では、筋肉を減らさずに痩せる方法はあるのか?って話になりますが、ここでのポイントは「GLP-1薬はあくまで“道具”であって、正しく使えば筋肉を守ることもできる」ってところでしょう。具体的には、「 高たんぱく食を意識する」(体重1kgあたり1.6gぐらい)のと、「筋トレを併用する」(週に2回、自宅でスクワット・プランク・腕立て伏せなどを取り入れるだけで十分)っていうシンプルな話になりますな。その点で、今回のメタ分析に含まれた試験では、生活指導(運動や食事)を行っていた例はあっても、筋トレを取り入れていた試験がなかった点も要注意でしょう。
そんなわけで、以上をふまえると、リベルサスを使った減量については、
- 体重減少の約28%が除脂肪組織からだが、それは自然な範囲。水分や内臓も含むため、筋肉が減ったとは限らない。
- 筋肉減少を防ぐには、たんぱく質+筋トレの併用でなんとかするしかない。
といった点がポイントになりましょう。個人的には、リベルサスと筋肉の問題については、「そこまで心配しなくても良さそうだな……」って印象っすね。
もちろん、個人的には「ちょっとダイエットしたい!」ぐらいでリベルサスを使うのはおすすめできないんですが、もしリベルサスを使うのであれば「薬+運動+栄養」の3本柱を意識しないと不健康な減量になっちゃうのは間違いないでしょう。どうぞよしなに。