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リベルサスってそんなにすごいの?話題の“痩せ薬”を調べてみたぞ!というメタ分析の話

 
 

ここ数年、ダイエット業界で“革命”と呼ばれているのが、「GLP-1受容体作動薬(GLP-1 RAs)」、とくにリベルサス(セマグルチド)であります。

 

もともとは糖尿病の治療薬として開発された薬なんですけども、同時に体重が10kg以上落ちるケースも報告されてまして、「痩せ薬として使える!」って感じで一気に注目を集めたんですな。

 

でもって、さらにこの分野には、もうひとつの有力選手が登場しはじめております。それがSGLT-2阻害薬(ジャディアンス、フォシーガなど)ってやつで、こちらも最初は糖尿病の治療薬として登場したものの、カロリーを尿から外に排出するってユニークな作用を持っていて、これが体重減少にも役立つと言われてるんですな。

 

では、これら2つの薬が持つダイエット効果はいかほどか?ってことで、ガッツリ調べたメタ分析(R)が出ておりました。これは1万7000人以上を対象としたネットワーク・メタ分析(RCT61件)をベースに、両者の効果をガチ比較したもので、ダイエット薬の効果を知りたい人にはかなり参考になるデータになっております。

 

ってことで、まずは結論からピックアップしてみると、

 

  • リベルサスもSGLT-2阻害薬も、ダイエットと血糖コントロールに有効だった
  • しかし、リベルサスのほうが、体重減少・血糖値改善・血圧低下において圧倒的に優れていた
  • その反面、リベルサスは消化器系の副作用や、胆嚢にダメージがあるリスクも高かった

 

という結果になっております。特に注目すべきは、リベルサス2.4mgが頭ひとつ抜けている点で、

 

  • 他の薬より体重が6〜10kg多く減った
  • HbA1c(平均血糖値)や空腹時血糖も大幅に改善した
  • 血圧(収縮期・拡張期)も有意に低下した

 

って感じで、数字だけを見てると「フルスペックで効く薬」と言ってよいレベルのパフォーマンスを見せたんですな。

 

なかなか凄い話ですが、なんでリベルサスの効果がここまで高いのかと言いますと、リベルサスのベースとなっているGLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)は、もともと腸から分泌されるホルモンで、以下のような働きをするからです。

 

  • インスリン分泌を促進し、血糖を下げる
  • グルカゴン(血糖を上げるホルモン)の分泌を抑える
  • 胃の排出を遅らせて、満腹感を長くキープする
  • ドーパミン報酬系を抑えて、食べ物の「快楽性」を低下させる

 

こんな感じで、GLP-1は食欲と代謝の司令塔みたいな役割をしているホルモンでして、これを薬でマネしたのがリベルサスなんですな。

 

実際、臨床データでは体重の12〜15%の減量(平均10kg前後)が続出してまして、これは過去の肥満薬と比べてもかなり異常な数字なんですよね。

 

で、一方のSGLT-2阻害薬は、腎臓にある「SGLT-2」という糖再吸収タンパク質の働きをブロックする薬になります。簡単にいうと、「血液中の余分な糖を尿として捨てる!」って仕組みになってまして、この作用により1日あたり約300キロカロリーが失われ、結果として体重が自然に落ちていくってメカニズムなんですな。ただし、残念ながら、体重減少の幅としては平均で1〜2kg程度なんで、リベルサスには遠く及ばない感じっすね。

 

ただし、SGLT-2阻害薬にも相応のメリットがありまして、

 

  • 心不全や腎機能の保護に強みがある

  • 副作用のリスクが比較的低い(ただし泌尿器感染症には注意)

  • 費用もGLP-1系よりは控えめ

 

ってあたりは良いところですね。つまり、「少しでも痩せたいけど、副作用が心配な人」や、「心血管リスクが高い糖尿病患者」には相性がいい薬と言えるでしょう。

 

さて、ここからリベルサスの話に戻りますが、効果が高いぶん副作用も無視できないので、そこはご注意くださいませ。具体的にどんな副作用があるのかと言いますと、

 

  • 消化器症状(吐き気、嘔吐、下痢):副作用で治療中断する人も多い

  • 胆のう疾患(胆石・胆のう炎):慢性的にGLP-1が作用することで胆汁の流れが悪くなる説あり
  • リバウンド問題:薬をやめた途端に体重が戻るケースも珍しくない

 

みたいになります。簡単に言えば、「効くけど続けにくい」って問題があるわけですね。

 

また、今回のメタ分析では、全ての試験で「生活習慣の改善(カロリー制限・運動)」がベースになっていたのも見逃せないポイントであります。つまり、どんなに強力な薬を使っても、生活習慣の土台がないと効果が落ちるし、副作用も出やすくなるってことですな。これはかなり大事。

 

ってことで、ざっくりデータを見たところ、個人的には以下のような「合わせ技」が一番現実的じゃないかと思っております。

 

  • まずは生活習慣改善を3ヶ月〜半年実践してみる

  • GLP-1の分泌を自然に高める方法も試す(食物繊維の多い食事、発酵食品、ゆっくり食べるなど)

  • 減量が難しい場合のみ、医師と相談のうえ薬物療法を検討

  • 薬の使用中も、食事・運動・睡眠など基本は続けること

 

こんな感じで、あくまでも生活習慣の改善をベースに置いていただくとよいのではないでしょうか。

 

そんなわけで、今回のデータから見えてくるのは、

 

  • 本当に痩せたい人にとって、GLP-1 RAs(とくにリベルサス)はたしかに良い

  • ただし、万能ではなく、副作用・コスト・継続性の問題もあるので、生活習慣改善と薬のバランスがカギ

 

ってとこでしょうな。また最近では、GLP-1 RAsの抗がん作用や脳への影響(アルツハイマー予防など)にも注目が集まっているんで、今後は「痩せ薬」から「健康長寿薬」にシフトする可能性もあって、これも胸アツなポイントですなぁ。どうぞよしなに。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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