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ベータアラニンで疲れない筋肉は作れるか?を調べた研究の話


  

ここ数年、運動系サプリの中でちょっと話題になってるのが「ベータアラニン」であります。このブログでも、「筋肉の疲労対策とパフォーマンスの改善に良さそう!」って感じで紹介してまして、すでに愛用している人も多いかもしれません。

 

で、新しい研究(R)もベータアラニンに関するもので、個人的には「ベータアラニンの効果が出やすい運動とは?」と「ベータアラニンにはアンチエイジングの効果があるの?」って疑問を考えるのに役立ちました。

 

まず基本知識からおさらいしておくと、ベータアラニンってのは、体内で「カルノシン」という物質を作るための材料であります。カルノシンは筋肉の中に多く存在していて、

 

  • 筋肉内のpHバランスを保つ(=疲労を遅らせる)
  • 活性酸素(ROS)を除去する(=酸化ストレスを減らす)

 

 みたいな役割を持ってるんですよ。特に高強度の運動(ダッシュとか格闘技とか)をしているときには、体内に酸性物質がたまって筋肉が動きにくくなるんですが、カルノシンがこの問題を防いでくれるんですな。言ってみれば、「疲労が進むのを遅らせてくれる天然バリア」みたいなイメージっすね。

 

では、今回の実験をざっくり説明してみると、対象は20人の大学バスケ選手(平均23歳)で、実験の期間は8週間。全体を2つのグループに分けまして、

 

  • グループ1:毎日6.4gのベータアラニンを摂取
  • グループ2:プラセボ(偽薬)を摂取

 

って感じで過ごしてもらい、炎症マーカー(CRP、IL-6)、体組成(体脂肪率など)、ジャンプ力などの違いを比べたんだそうな。要するに、「パフォーマンスと健康状態をまるっとチェック」したわけっすな。

 

結果を見てみましょう。ポイントだけまとめると、だいたいこんな感じになります.

 

  • ベータアラニンで炎症マーカーが減った!:ベータアラニン群のみ、CRP(C反応性タンパク)とIL-6(インターロイキン6)の減少が見られたとのこと。通常であれば、シーズン前はハードな練習が続くせいで体内の炎症レベルが上がることが多いんですが、ベータアラニンを飲んでた選手たちは逆に炎症が抑えられたそうな。つまり、ベータアラニンは、ハードなトレーニングによるダメージから体を守る効果がありそう。

 

  • ベータアラニンでパフォーマンスも上がった!:ベータアラニン群のみ、ピークパワー(スプリント時の最大出力)が向上したが、VO2max(最大酸素摂取量)やジャンプ力には変化がなかったとのこと。ここはちょっと興味深いところで、普通はベータアラニンって「疲労を遅らせる」効果が中心なので、持久力や疲労耐性に効きそうなものなんですが、今回の実験ではなぜか最大パワーのほうが向上したらしい。

 

ということで、ベータアラニンはアンチエイジングにも運動のサポートにも効きそうだなーって気がするわけです。最大パワーのほうが向上したあたりはちょっと不思議ですが、おそらくは、

 

  • ベータアラニンでトレーニングの疲労感が軽減 → 結果、練習量や質がちょっとずつ上がる → 長い目で見ると筋力やパワーが向上!

 

みたいな間接的なメカニズムが働いたのかもですな(ちなみに、直接「パワーそのものを上げる」効果はないっぽい)。実際、ボクサーやスキーヤーを対象にした過去の研究でも、オフシーズン中にベータアラニンを摂ったグループは、地味にトレーニング適応が良くなってたみたいな報告もありますし。

 

じゃあ、結局のところベータアラニンを飲むべきかどうかってことですが、暫定的な結論をまとめときましょう。

 

  • 短時間の爆発的なパワーを求めるなら、そこまで劇的な効果はないかも
  • でも、ハードな練習による疲労・炎症を抑えたいなら、かなりアリ

 

こんな感じで、特にバスケみたいにインターバルで爆発→休憩→爆発を繰り返すスポーツでは、「疲労の蓄積を防ぐ」のはめちゃくちゃ重要になりますから。この効果を狙ってベータアラニンをサポートサプリとして使うのは十分アリだと思うわけです。

 

もしベータアラニンを使ってみたいと思ったときは、以下の用量でどうぞ。

 

  • 推奨量:1日あたり3.2〜6.4g
  • 摂取タイミング:いつでもOK(トータル量が大事)
  • 摂取期間:少なくとも4週間以上続ける(筋肉にカルノシンがたまるのに時間がかかる)
  • 副作用の注意:手や顔にピリピリ感(パラステジア)が出ることあり。でも基本的に無害。気になるときは「数回に分けて飲む」とピリピリ感を抑えられる(たとえば朝・昼・晩で2gずつ、みたいな感じ)

 

ということで、今回の研究を見る限り、ベータアラニンってのは、筋トレや格闘技系のハードなトレーニングをする時期に取り入れるのはアリかなーとか思ったりしました。アスリートぐらい運動をしている方や、あるいはハードな筋トレをガンガン続けたい方は、ちょっと試してみると面白いかもしれません。どうぞよしなにー。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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