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“みんな自己中だし、世の中最悪”って思ってる人への処方箋をスタンフォードの先生が教えてくれる本を読んだ話#2

 

“みんな自己中だし、世の中最悪”って思ってる人への処方箋をスタンフォードの先生が教えてくれる本を読んだ話#1」の続きです。前回は「現代はシニシズムが蔓延して、他人を信じられない人が増えてるよねー」って話を起点に、

 

  • シニシズムが大きい人は、メンタルを病むから大変だし、実は他人からダマされやすくなっちゃうから大変だよねー。
  • ぜひシニシズムを克服しておきたいから、そのためには「希望的な懐疑主義」を身につける必要があるよねー。

 

みたいな話をしました。現代人は他人への信頼を失いつつあるけど、それは個人と社会へのダメージが大きいので、どうにかしようぜ!って問題意識ですね。

 

ということで今回は、「具体的に何をすればいいのか?」ってとこを見てみますが、その前に「希望的な懐疑主義ってなに?」ってのをもうちょい掘っておきましょう。希望的な懐疑主義を持っている人は、ざっくり以下のような特徴を持っております。

 

  • 希望と現実主義のバランス感覚を持っている:世の中がよくなる可能性を信じながらも、根拠のない楽観には流されない。そのため、「信じたい」気持ちと「確かめたい」思考が同居している。

 

  •  「疑うこと」と「信じないこと」を混同しない:シニシズムではなく、健全な懐疑心(証拠の根拠は検証する)を持っており、相手の悪意を前提に行動せず、まずは情報収集から入る。

 

  •  直感を「唯一の真実」とは考えない:自分の過去や経験に敬意を払いつつも、「直感はときに間違う」と肝に銘じており、感情的な判断の前に一呼吸おいて、事実を確かめるクセがある。

 

  • 小さな“信頼の実験”を繰り返す:信頼は一気に与えるものではなく、少しずつ試して積み上げていくものだと理解しているので、まずは少しだけ心を開いてみて、そこから様子を見て広げる。

 

  •  脳の“損失バイアス”を自覚している:人間は裏切りや失敗に強く反応しがちなバイアスを持っていることを肝に銘じており、ネガティブな問題に過剰反応すると未来を狭めると知っている。

 

  • リスクを天秤にかけられる:傷つくのが怖くて他人と距離を取るよりも、つながりを失うほうが大きなリスクだと認識しており、信頼のリスクと裏切りのリスクを天秤にかけられる。

 

  •  行動によって他人の反応が変わると理解している:「相手をどう扱うかで、その人の行動も変わる」と考えており、そのため誠実さを持って接する。

 

  • 情報の発信にも責任を持つ:ネガティブなゴシップや噂話ではなく、ポジティブな事例や希望のある話をシェア。「話題にすること」が社会をつくる力だと知っている。

 

  • 希望を「行動の起点」として使う:希望は現実逃避ではなく「行動する勇気」の原動力だと考えているので、「未来は決まっていないからとりあえず動いてみよう」と前を向く。

 

たしかに、いつもこんな姿勢でいられたらいいよなーと思えるような項目ばっかですね。なかなか身につけるのが難しそうではありますが、ザキ先生は、シニシズムから「希望的な懐疑主義」に移動するために、以下のような方法を推奨しておられます。

 

  • 自分のコア・バリュー(中核的価値観)とつながる:まずは、人生で最も大切にしているものは何かについて、時間をかけて考えてみるのが大事。「他者とのつながりか?」「創造性か?」「知的な探求か?」などといろいろ考えてみたら、「それらの価値観が自分にとってなぜ重要なのか?」「それらを自分の生活の中でどのように表現しようとしているのか?」を書き留めてみる。こうやって自分の価値観を明確にしてやるのは、新しい考えを受け入れる姿勢を保つのに役立つ。

 

  • 安全なホームベースに焦点を当てる:人間は、生活に脅威を感じたり孤独を感じたりすると、すぐにシニシズムを抱いてしまう。それとは対照的に、安心感があるコミュニティを持っていると、自分が信じていることを探求する余地が生まれる。そのためには、自分の人生において深く信頼している人々を一人か二人思い浮かべ、その人たちが自分にとってどのような存在なのか、またはその人たちと一緒にいるときに自分がどう感じるのかを考えて、書き出してみるとよい。

 

  • 自分のシニシズムを疑う:自分が持っている「世界に対するシニカルな考え」を一つだけ選んで、あらためて検討してみるエクササイズ。「人間は皆自分のことしか考えていない!」みたいな考え方をひとつ選んだら、「その考えはどのような情報に基づいて導かれたものか?」「その主張を裏付ける証拠が本当に存在するのかどうか?」と自問してみる。

 

  • 数字に換算しない:人間が本当に幸福感を得るには、定量化できない経験を追求する必要がある。そのため、「この人に過去に3回親切にしたのに、1回しかお返ししてもらってないなぁ……」みたいに、点数をつけたくなる衝動に抵抗する必要がある。他人に親切にする際に見返りを期待してしまうのは当然の心理だが、それよりも「自分はなぜこの人に親切にしているのか?」を考えるほうが重要である。そうでないと、心からポジティブな感情が発生しない。

 

  • ポジティブの数え上げ:友人、家族、同僚、その他誰でもいいので、「今日の会話はどれぐらいポジティブだっただろうか?」と考えてみて、「1(非常にネガティブ)から10(非常にポジティブ)」のスケールで評価してみる。慣れてきたら、常にノートを携帯しておいて、ひとつの会話が終わるごとに、どれぐらいポジティブなコミュニケーションだったかを同じスケールで書き留めてみるとよい。 このエクササイズを重ねると、自分が思ったよりもポジティブなコミュニケーションを取っていたことに気づき、シニシズムから脱出しやすくなる。

 

  • コミュニケーションの予測と比べる:もしノートに書くのが面倒でないなら、事前に「今日のコミュニケーションでどれぐらいポジティブな気持ちになれるか?」を考えて、その予想を書いておくとさらに効果的である。そのうえで、実際の会話で得たポジティブな感情と予測を比べてみるとよい。この作業を行うと、たいていは予想よりも実際のコミュニケーションのほうがポジティブな結果に終わるので、さらにシニシズムから脱出しやすくなる。

 

  • SNSをしばらく止める:2018年の研究では、3,000人近い人々に4週間Facebookのアカウントを閉鎖してもらうよう依頼した。すると、被験者の抑うつ症状が25~40%軽減され、これはセラピーに通うのと同じレベルだった。

 

  • セルフケアより他者ケア:現代人はセルフケアを重視することが多いが、より効果が高いのは他者のために何かをすることである。研究によると、他者の話を聞くボランティアに参加した者はうつ状態が軽減され、孤独感が和らぐことが分かった。医療従事者を対象とした最近の研究でも、シニシズムを軽減する唯一の要因は、自己ケアではなく、他者への思いやりであると報告している。私たちは、自分の時間やお金、エネルギーを他者に捧げたほうが、活力が回復したと感じやすい傾向がある。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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