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「自然を想像するだけ」でもストレスが軽減されるぞ!って研究の話

   

 

自然はメンタルにいい!」って話はさんざん書いてまして、個人的にも効果的なストレス対策のトップランカーだろうと思うわけです。

 

自然とメンタルヘルスの関係は昔からたくさん研究されてまして、だいたい以下のような理論で説明されることが多めっすね。

 

  • ストレス低減理論:人間は進化の過程で、安全な自然環境にポジティブに反応するようになった。そのため、森や川のような環境に身を置くと、脳が「ここは安全だ」と判断してストレスが下がる。

 

  • 注意回復理論:現代の都市生活では、「集中して何かに注意を向ける」ような活動が多く、脳が疲れてしまう。その点、自然環境では「ぼーっと眺める」ことが増えるので、注意力が自然に回復していく。

 

どちらの理論が正しいにせよ、自然がメンタルに良いのは間違いなさそうなわけです。非常によろしいですなぁ。

 

ただし、ここでよく言われるのが「自然と触れあうヒマがない!」って問題です。現代人は忙しいので、毎週山に登ったり、公園でのんびりする時間を確保するのはなかなか大変ですからねぇ。

 

そこで、非常に参考になるのが新しく出た研究(R)で、まずは結論からいってしまうと、

 

実際に自然に行かなくても、想像するだけでリラックスできるよ!

 

みたいになります。過去には「自然の写真を見るだけでも効果がある」って話がありましたけど、脳内に思い描くだけでも良いってのは手軽で良いですねぇ。

 

これはフィンランドのトゥルク大学などの実験で、対象は大学生50名(平均23歳)。ざっくりとした実験の流れは、以下のようになっております。

 

  1. 参加者に難しいタスクを与えてストレスを高める
  2. その後、「自然に関係する単語(例:山、花、海)」と「都市に関係する単語(例:バー、路地、バイク)」を、それぞれ5分ずつ思い浮かべてもらう
  3. 主観的なストレスの回復度と、生理的な反応(心拍、心拍変動、皮膚電気活動)を測定する

 

そこで、研究の結果がどうだったかというと、自然をイメージした後のほうが回復感が強く、心拍がゆっくりになり、心拍変動も大きくなり(これはリラックス状態の証)、皮膚電気活動も上がったんだそうな(これはポジティブな感情が高まってるサイン)。かなり明確な違いが出てますねー。

 

また、これに加えておもしろいのは、「自然とのつながりが強い人ほど、よりリラックスできた」ってところです。つまり、普段から自然が好きだったり、自然にポジティブな感情を持ってる人ほど、想像の効果が高くなるみたいなんですよ。

 

ってことで、ここまでの話をまとめると、ちょっとした休憩時間や通勤中に「自然を思い浮かべる」ってのは、手軽で効果的なリラックス法だと言えるんじゃないでしょうか。実践法としては、以下のようなやり方がオススメです。

 

 

 1日5分の「自然イメージ瞑想」

1.静かでリラックスできる空間を確保:まずは「誰にも邪魔されない」ような静かな場所を探してください。仕事の合間なら空いてる会議室や公園のベンチでもOKで、座っても寝転んでもどちらでも可であります。

 

2.自然のテーマを決める:次に、どんな自然を思い浮かべるかをざっくり決めます。以下のようなジャンルから、自分の「好き」や「安心感」に合うテーマを選んでください。とくに、「過去に実際行った自然の場所」を思い出すと、感情のリアリティが増して効果的であります。スマホにお気に入りの自然写真を入れておいて、思い出すトリガーにするのもいいですね。

 

  • 森林:木漏れ日、鳥のさえずり、苔の香り
  • 海辺:波の音、潮風、足元の砂
  • 山:涼しい風、渓流の音、登山の達成感
  • 花畑:やわらかい風、色とりどりの花、虫の羽音
  • 雪景色:雪が降る静けさ、白い光、吐く息の白さ

 

3 五感を使って想像する:ここからが本番。目を閉じて、以下の五感をフル活用して自然を描写していきましょう。思考に集中するのではなく、「感じる」ことを意識してくださいませ。

 

  • 視覚:何が見える? 例→木々の色や葉の動き、太陽の光が地面に落ちる様子、空の広さ、雲の流れなど
  • 聴覚:どんな音がする? 例→鳥のさえずり、虫の音、風が木々を揺らす音、波の寄せ返し、せせらぎの音など
  • 嗅覚:香りはある? 例→草の匂い、土の匂い、海の潮の香り、花や木の自然なアロマなど
  • 触覚:肌に感じるものは? 例→風のやさしさ、日差しの暖かさ、木の幹のざらつき、水に触れたときの冷たさなど
  • 味覚(あれば):空気の味、思い出の味、海辺の塩気のある空気、山で食べたおにぎりの味など

 

途中で「今日の予定どうしよう…」「昨日のメール返してなかった!」みたいな雑念が出てきたら、否定せず、ジャッジせず、「あ、考えが逸れたな」ぐらいのノリで、ゆっくり自然のイメージに戻りましょう。

 

ってことで、今回の研究からわかったポイントをまとめると、

 

  • 自然を想像するだけでも、ストレス軽減の効果がある
  • 普段から自然に親しんでいる人ほど効果が出やすい

 

みたいになります。「自然に行く時間がない!」「家のまわりに緑がない!」みたいな人でも、この方法ならすぐに取り入れられてよいのではないでしょうか。私も最近、昼休みにちょこちょこやってますが、意外とスッキリ感があって良い感じです。お試しをー。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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