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今週の小ネタ:オートミールで悪玉コレステロールが激しく下がる?筋肉の減少をロイシンで防げる?「クルミは血管にいい」は本当か?


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

 

 

オートミールで悪玉コレステロールが激しく下がる?

「LDLコレステロールを下げたいなら、オートミールを食え!」みたいな話が昔からあるわけです。オートミールにはβグルカンって水溶性の食物繊維が含まれてるんで、こいつが腸内で胆汁酸の再吸収をじゃまして、結果的に血中コレステロールが下がるのだ!って理屈ですね。

 

で、これまでも「オートミールはLDLに効くよ!」という研究はけっこうあったんですが、最近のデータ(R)では「たった2日でも変化が出るのか?」を調べてくれてて有用でした。研究の対象になったのは45〜70歳のメタボを抱えた男女66人。ふだんはオーツをほとんど食べない人たちを選んだそうな。

 

実験は2パターン行われまして、まず短期試験では、参加者に2日間だけ低カロリー食を食べてもらい、そのうえで一方のグループは毎食100gのロールドオーツ、つまり1日300gのオーツを食べるように指示。もう一方のグループは、食物繊維や三大栄養素の量をだいたいそろえた、オーツなしの標準食を食べるように指示しております。

 

でもって、その結果を分析してみたところ、

 

  • オーツを食べたグループは、LDLコレステロールが16.3mg/dL低下。一方、対照群では明確な変化はなかった。

 

って感じだったそうで、たった2日でこれはけっこうインパクトがありますなぁ。

 

ただし、ここで「よし!明日からオートミールを1日300gだ!」と決めるのは危険でして、というのも、もうひとつ行われた6週間の試験では、1日1食を80gのオーツ入り食に置き換えてみたところ、脂質レベルには明確な差が出なかったんですよ。なんとも不思議ですね。

 

では、長期と短期の試験でなんで差が出たのかと言いますと、たぶんβグルカンの状態が違ってるんじゃないかなぁ、と。それと申しますのも、βグルカンってのは、単に量が多ければいいってわけじゃなくて、粘度や分子量がかなり大事なんですよ。βグルカンは水に溶けてドロッとしたゲルを作るんですが、この“ドロドロ感”が強いほど胆汁酸をからめ取る力が高くなり、LDL低下作用が起きやすいんですな。逆に、加工されすぎたり、パンやクッキーなどに入れられたりすると、βグルカンの分子量が下がって、効きが弱くなる可能性があるわけです。

 

実際、この試験では、

 

  • 短期試験では、オーツは基本的に水で調理したオートミールとして食べられていて、加工度はめっちゃ低かった。

  • 6週間試験では、オーバーナイトオーツ、スムージー、焼き菓子など、かなり自由なレシピが許されていた。

 

って感じなんで、長期試験では調理によってβグルカンの構造が変わり、期待したほどの作用が出なかった可能性があるんじゃないかと。あと、この短期試験では、「オートミール+果物+野菜」中心の低カロリー食に切り替えてるんで、それだけ飽和脂肪や食事性コレステロールの摂取量も一気に下がった可能性が高いんでしょう。なので、LDL低下のすべてをオーツだけの効果と見るのは、ちょっと無理があるでしょうねぇ。

 

ということで、この実験を日々の生活に活かすのであれば、

 

  • 加工度の低いロールドオーツを使う
  • パンやクッキーより、普通に煮たオートミールで食べる
  • 果物、ベリー、葉物野菜などと組み合わせる
  • 「オートミールを足す」より「飽和脂肪が多い食事と置き換える」と考える

 

みたいになるでしょう。要するに、「オートミールを食べれば健康!」ってことじゃなくて、高脂肪・高加工な食事を、シンプルなオートミール食に置き換えるのがキモなんでしょう。お試しあれー。

 

 

 

筋肉の減少をロイシンで防げる?

「筋肉を落としたくないなら、とにかくタンパク質を摂れ!」とよく言われまして、なかでもロイシンは「筋タンパク質合成のスイッチを入れるアミノ酸」として知られていて、かなり持ち上げられることが多いわけです。ロイシンは筋肉の合成を促す働きがあるので、「ケガや病気で動けないときも、ロイシンを飲んでおけば筋肉の減少を防げるんじゃないの?」などと言われてたりするんですな。これが事実なら素晴らしいことですねぇ。

 

で、新しい研究(R)は、まさにこの問題を調べてくれていてタメになります。対象は、平均23歳の若者24人と、平均69歳の高齢者24人で、参加者は片脚にギプスをつけて、3日間だけ脚を動かせない状態にセット。そのあいだ、全体をロイシンを飲むグループ(1回5gを1日3回)と、炭水化物のプラセボを飲むグループに分けたらしい。

 

すると、その結果がどうだったかと言いますと、

 

  • ギプスをつけた脚は、筋タンパク質合成率が下がった。筋肉量も、たった3日で1.1〜1.2%ほど減少した。
  • でもって、ロイシンを飲んでも、この筋肉減少は防げなかった

 

だそうです。いやー、たった3日でこんなに筋肉が減るのか!って感じですなぁ。しかも、ロイシンでは筋肉の減少は防げないってのが切ないっすね。

 

まぁ、これは当然と言えば当然で、ロイシンは筋タンパク質合成のスイッチを入れる役割があるものの、筋肉を作る材料がそろっていなければ意味がないんですよ。ロイシンだけでは足りなくて、すべての必須アミノ酸がそろって初めて、筋タンパク質合成は持続するわけですな。

 

実際、過去の研究でも、ロイシン単体のサプリで不活動中の筋肉量を守れるかというと、あまり明確な変化が出てなかったりします。いっぽうで、複数のアミノ酸をまとめて摂った研究では、筋肉の減少がいくらか抑えられたケースが見られますんで、「ロイシンだけ追加すればOK!」ではなく、「筋肉を作る材料を一式そろえる」ことが大事なんでしょう。

 

では、タンパク質を多めに摂れば不活動による筋肉減少を防げるのか?というと、そんな単純な話でもないのが難しいところ。高齢者にホエイプロテインを足して、1日のタンパク質摂取量を体重1kgあたり約1.6gまで増やした研究でも、筋肉減少は防げなかったというから、困ったもんであります。高齢者は、タンパク質に対する筋肉の反応が鈍くなりがちなんで、若者より多めのタンパク質が必要なんでしょうな。

 

ということで、今回の研究から教訓を引き出すならば、まず「筋肉は想像以上に早く落ちる」ってのがありますね。たった3日動かさないだけで、筋肉量は目に見えて減るんで、これは特に高齢者においては重要な問題になりやすいでしょう。

 

そしてもうひとつは、「ロイシン単体に過剰な期待をしない」ってとこっすね。ロイシンは重要なアミノ酸なんだけど、筋肉を守るには、十分な総タンパク質、必須アミノ酸のバランス、可能な範囲での筋収縮が必要なんで、筋トレ不足で筋肉が減っちゃう問題は、「ロイシンを飲めば解決!」とはいかんのでしょうねぇ。

 

 

 

「クルミは血管にいい」は本当か?

「血管のためにはナッツを食べよう!」みたいな話は健康界隈ではすっかり定番。なかでも評価が高いのがクルミで、オメガ3脂肪酸の一種であるαリノレン酸や、ポリフェノール、食物繊維などを含んでまして、「心血管リスクを下げる食品」としてよく名前が挙がるんですよね。

 

で、新しく出たメタ分析(R)では、「クルミは血液中の脂質マーカーにどれぐらい効くのか?」を調べてくれてて有用でした。対象になったのは25件のRCTで、参加者はおよそ2000人。平均年齢は23〜71歳ぐらいで、多くはメタボリックシンドロームや高コレステロールなど、何らかの健康問題を抱えた人たちだったそうな。クルミの摂取量は1日15〜56gほどで、期間はだいたい4〜24週間ぐらいとのこと。

 

その結果、どんな傾向が見られたかと言いますと、

 

  • クルミを食べた人たちは、対照群と比べて、アポリポタンパクB、いわゆるApoBが平均6mg/dLほど低下した。

  • 一方で、クルミを食べてもApoA1や血圧には明確な差はなかった。

 

ってことで、今回の分析だけを見ると、「クルミは血管系に良い!」ってほどではあまりなく、「ApoBだけ少し下げるかも」ぐらいの結果だったわけっすね。といっても、ApoBについては、近年はLDLコレステロールよりも心血管リスクをよく表す場合があると言われてまして、かなり重視されてるんですよね。なので、ApoBが下がること自体は良いニュースであります。

 

では、クルミの効果がいまいち出なかった理由は何かと言いますと、ポイントはおそらく、クルミを何g食べたかと、クルミが何の代わりに食べられたかでしょう。こちらもざっくりまとめてみると、

 

  • クルミは少量でも健康的な食品だが、血中脂質を明確に動かすには、それなりの量が必要かもしれない。ApoBの低下が大きかった研究のひとつでは、参加者が1日約42.5gのクルミを食べており、これは手のひらに軽く一杯ぐらいの量である(この研究では、ApoBが対照食より9mg/dL低くなっており、LDLコレステロールも約11mg/dL低下していた)。一方で、少量のクルミでは効果が小さく、15gぐらいをちょこっと食べるだけだと、食事全体の脂肪酸バランスを変えるほどのインパクトが出にくいのかもしれない。

 

  • 「クルミを何と置き換えたか」も大事で、たとえば、バターたっぷりのパン、チーズ、加工肉、菓子パン、揚げ物の一部をクルミに置き換えるなら、飽和脂肪酸が減り、多価不飽和脂肪酸が増えるため、LDLやApoBを下げる方向に働きやすいと思われる。逆に、すでに健康的な食事をしている人が、普段の食事にクルミをただ足すだけだと、総カロリーが増えるだけで、血液マーカーへの効果は小さいかもしれない。

 

って感じですね。要するに、クルミの効果ってのは、食事全体の脂肪酸バランスをどう変えるかがポイントになるのではないか、と。

 

なので、実践する時には、「健康のためにクルミを追加しよう!」よりも、「飽和脂肪が多い食品の一部をクルミに置き換えるぞ!」と考えたほうがよさげ。たとえば、間食のクッキーやチョコをクルミにしたり、朝食のバターやチーズを少し減らしてクルミを足すようなイメージっすね。まずは1日30〜40gぐらいを目安に、何かと置き換える形で使うのが現実的でしょうな。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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