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同じ出来事でも、ストレスを感じる人と感じない人がいるのは「3つの見積もりエラー」が原因である


 

ストレスは、あなたの解釈によって変わる!」などとよく言われます。たとえば、あなたが渋滞にハマって「このまま一生ここから動けないのでは……」などと考えているうちに、全身が緊張してきたとしましょう。ところが、ここでふと隣の車を見ると、運転手が音楽を聴きながら楽しそうに歌ってたりして。置かれている状況は同じなのに、反応がまったく違うわけですね。

 

では、いったい、この違いはどこから生まれるのか?ってことで、心理学者のリチャード・ラザルス先生が、ナイスな説明(R)をしてくれておりました。

 

ラザルス先生によれば、私たちは何かが起きたときに、無意識のうちに2段階の評価を行っているんだそうな。具体的には、

 

  • 一次的評価:目の前の状況に対して、「自分の健康、安全、立場、人間関係、価値観などを脅かすものか?」みたいな判断をする。
  • 二次的評価:一次的評価で「自分に脅威が迫っている」と判断したら、次に「自分には、この問題を処理する力や資源があるか?」みたいな判断をする。

 

みたいな感じっすね。つまり、私たちのストレスが激増しやすくなるときってのは、

 

  1. 脅威を大きく見積もる→
  2. 問題の複雑さを大きく見積もる→
  3. 自分の問題への対処能力を小さく見積もる

 

みたいな流れで発生しているわけですな。いくつか例を挙げると、

 

  • 「上司が声をかけてこなかった」って状況を、「これは解雇の前兆だ!」と考えた(脅威の見積もりエラー)

  • 実際には1時間で終わる仕事を「絶対に間に合わない」と思った(問題の複雑さの見積もりエラー)
  • 周囲に相談できる人がいるのに、「全部ひとりでやらなければならない」と考えた(対処能力の見積もりエラー)

 

みたいな感じ。このようなエラーが1日に何度も発生していたら、そりゃあストレスは激増しますわな。

 

この考え方で大事なのは、ここではストレスを「人と環境の関係」として考えているってところです。一般的には、渋滞、試験、失業、離婚みたいなネガティブなイベントを「ストレス」と呼ぶことが多いですが、心理学の世界では、

 

  • 目の前の問題に、自分の「資源」では対応できない!

 

と判断したときに、私たちは強いストレスを感じると考えるんですよ。

 

ここでいう「資源」には、問題の対処に役立つあらゆるものが含まれまして、

 

  • お金
  • 時間
  • 体力
  • 知識
  • スキル
  • 健康
  • 人間関係
  • 周囲からのサポート
  • 過去に困難を乗り越えた経験

 

といった感じです。

 

たとえば、同じ病院で働く2人の看護師が、同じ日に解雇されたとしましょう。その際に、

 

  1. 一方には十分な貯金があり、パートナーからの支援もある。
  2. もう一方は離婚したばかりで、すでに経済的に困っている。

 

って違いがあったとしたら、「解雇された」という出来事は同じでも、後者のほうが強いストレスを感じやすいのは自明でしょう。

 

でもって、この「資源」に加えて、もうひとつ重要なのが「解釈」であります。たとえば、休日に友人と海辺を歩いていたら、向こうから会社の上司がやってきたが、上司はこちらに声をかけずに通りすぎたとしましょう。このとき、

 

  • 「自分に気づいたのに無視した」「先週の仕事に問題があったのかも」「もしかしてクビになるのでは?」

 

などと考える人もいれば、

 

  • 「たぶん気づかなかったんだろう」「友人との時間を邪魔しないようにしてくれたのかも」

 

と考える人がいるはずであります。どちらも目撃した事実は同じで、その事実をどう考えたのかが異なるわけですね。人間のストレス反応は、客観的な出来事だけでなく、その出来事について頭の中で作ったストーリーにも左右されるんですな。

 

では、ストレスを減らすにはどうすればいいのか?ってことですが、ラザルス先生は以下の3方向から手をつけるように推奨しておられます。

 

  1. 脅威を減らす:最もわかりやすいのは、問題そのものを小さくする方法。仕事を引き受けすぎているなら新しい依頼を断る、締め切りが厳しいなら上司に相談する、複数のプロジェクトを抱えているなら優先順位を確認する、みたいな感じっすね。ほかにも、スマホの通知や、参加しなくても困らない会合なども、立派な「脅威」のひとつにカウントされます。

    ストレス対策というと、つい「もっとメンタルを強く!」とか考えがちですが、そもそも余計な負荷を減らせるなら、そのほうが話は早いわけです。


  2. 資源を増やす:要求を減らせない場合は、それに対応するための資源を増やしましょう。情報が足りないなら調べる、スキルが足りないなら練習する、作業量が多いなら誰かに手伝ってもらう、精神的にきついなら友人や家族に話を聞いてもらう、みたいな感じっすね。それと同時に、睡眠、運動、食事なども重要な資源であります。

    たとえば、同じ仕事のトラブルでも、寝不足の日は妙にイライラするもの。これは問題が急に大きくなったのではなく、自分の処理能力が落ちたせいで、相対的に要求が大きく見えているわけです。


  3. 解釈を見直す:最後が、状況に対する解釈を見直す方法です。これは「何事もポジティブに!」って話ではなく、目の前の問題について、自分がどのような解釈を付け加えているかを確認しよう!って話ですね。なので、ストレスを感じたら、次の3点を書き出してみるとよろしいでしょう。

    ・自分は何を脅威だと感じているのか?
    ・この状況は、具体的に私に何を求めているのか?
    ・自分が使える資源には何があるのか?

 

まぁ、当然ながら、解釈を変えたからといって、ストレスが完全になくなるわけじゃないんだけど、それでも「この渋滞で台無しだ!」と考えるよりも、「予定には少し遅れるが、連絡を入れれば対応できる」と考えられれば、かなり反応は変わるんじゃないかと。

 

そのためにも、ラザルス先生が提唱する「3つのストレス対策」を頭にいれておき、なにか困ったことが起きたときに、

 

  1. 自分はいま、何を脅威だと判断しているのか。
  2. 問題をどれほど大きく見積もっているのか。
  3. そして、自分にはどんな資源があるのか。

 

を見られるようにすると、だいぶ変わってくるんじゃないでしょうかー。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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