AIに仕事を丸投げすると、仕事の満足度が下がっちゃう問題をどうすべきか?って研究の話
今日も今日とてAIの話であります。新しく出た研究(R)では、「AIの使い方」によって仕事の達成感が変わるぞ!って結論が出てて面白かったです。
これは南カリフォルニア大学などの研究で、「AIに作業を任せると、自分の能力への自信や、仕事への愛着まで失われるのではないか?」ってテーマを掘り下げたもの。AIをどのように使うと、仕事に心理的な悪影響が出ちゃうのかって問題を調べてくれたわけですな。
ここで研究チームが注目したのは、以下の3つの感覚であります。
- 自己効力感:自分の力で仕事をやり遂げられるという自信
- 心理的所有感:この成果物は自分が作ったものだ、という感覚
- 仕事の有意味感:自分の仕事には価値や目的がある、という感覚
ご覧のとおり、いずれも仕事への満足度を高めるために欠かせない要素でしょう。自分の力で成果を生み出した感覚がないと、仕事を誇らしく思ったり、そこに意味を感じたりするのは難しいですからね。
「AIなし」「丸投げ」「下書き後にAI」の3パターンを比べてみたら?
今回の実験に参加したのは、コンサルタント、データアナリスト、管理職などのビジネスパーソン269人。参加者には、プレスリリースやデリケートな内容のメールを作るといった、仕事に関連する文章タスクを行ってもらったんだそうな。
その際、参加者を3つのグループに分けまして、
- AIをまったく使わない
- AIが作った文章を、そのままコピーして提出する
- まず自分で下書きを作り、AIに添削・改善してもらう
って感じでタスクを実行してもらったとのこと。その後、さらに全員にAIを使わせず、別の文章課題に取り組んでもらい、最初のAI利用が、その後の仕事にどう影響するのかを確かめたらしい。要するに、AIの使い方を「受動的なAI利用」(2番目)と「能動的なAIとの協働」(3番目)の2つにわけて、どんな違いが出るのかをチェックしたわけですね。
AIへの丸投げは、自信と意味を下げていた
で、結果がどうだったかと言いますと、
- AIが作った文章をそのまま提出したグループは、AIを使わなかったグループに比べて、
- AIなしで同じ仕事をこなす自信が低い!
- 完成した文章を「自分のもの」だと感じにくい!
- 仕事に意味や価値を感じにくい!
- 対して、最初に自分で下書きを作り、AIに修正させたグループは、AIを使わなかった人たちと違いがなかった。
って傾向が見られたそうな。つまり、別にAIを使ったからといって、必ずしも仕事の達成感が下がるわけではなく、仕事のコアな部分を自分が担当していれば問題は起きない、ってことですね。まず自分で考え、その後にAIを編集者として使うぶんには、仕事への自信や所有感、仕事の意味はほぼ損なわれないんだ、と。
というと、「やはりAI丸投げはよくない!」って話になりそうですが、このデータを見てると、AIに丸投げしたグループにもメリットはあったようでして、
- 最初の課題を終えた直後は、このグループがもっとも作業を楽しみ、完成品への満足度も高かった!
って結果が出てたりします。まぁ、これは当たり前の話でして、そりゃあ面倒な作業をAIが短時間で終わらせてくれれば、気分はよくなるでしょうからね。
しかし、この実験では、2つ目のタスク(AIを使えないパターン)に移ると、先ほどまでの結果が逆転しまして、
- 最初にAIへ丸投げした人たちは、2つ目のタスクで作業の楽しさと満足度がもっとも低くなっていた!
って感じだったみたいなんですな。面白いもんですねぇ。
このような現象が起きた理由を、研究チームは「対比効果のせいでは?」と考えております。どういうことかと言いますと、
- いったんAIの速さと手軽さに慣れちゃうと、自分で文章を考える作業が、以前よりも面倒に感じられる。
- その結果、以前なら普通にこなせた仕事まで、退屈で面倒なものに感じるようになり、楽しさや満足度が下がってしまう。
みたいな感じです。エレベーターに慣れると階段が面倒になるようなもんですね。
「自分の成果」という感覚は戻っても、自信は戻りにくい
でもって、もうひとつ興味深いのが、AIを使わずに2つ目の課題を終えたあとに、以下のような違いが出たところです。
- ほとんどの人は「心理的所有感」が回復していた。要するに、自分の手で仕事をすれば、「これは自分が作ったものだ」という感覚は比較的すぐに戻るっぽい。
- ただし、一方では、自力で課題をこなした後でも、自己効力感と仕事の有意味感は回復しなかった。
ということで、最初の課題でAIに丸投げしちゃうと、たとえ次の課題を自力で終えたとしても、自分の能力への自信は低いままで、仕事の意味も感じにくい状態が続いちゃうかもしれないわけっすね。
もちろん、これは短い実験なので、影響が何日も何週間も続くとは限らないでしょうが、それでも「AIの丸投げ」には、「思ったよりも心理的な悪影響があるのかも?」ぐらいには考えてみてもいいかもしれませんな。
ちなみに、研究チームは、別の働く成人270人を対象に、実際の職場におけるAI利用についても調査していて、以下のような傾向を報告しております。
- AIに受動的に依存する傾向が強い人ほど、
- 自分の能力への自信が低い
- 仕事を自分の成果だと感じにくい
- 仕事への満足度が低い
- 一方で、AIと能動的に協働している人は、自信、達成感、満足度などの指標は、どれも高かった
もっとも、こちらはアンケート調査なので、「AIへの丸投げが自信を下げた」と断定はできないでしょう。もともと自信が低い人ほど、AIに仕事を任せやすいって可能性もありますからね。そこはご注意くださいませ。
AIは「改善役」として使う
では、この問題をどうすればいいのかってことですが、今回の研究だけで考えるなら、ポイントは「いかに自分が仕事の主導権を持っている感覚を残すか?」って感じになるんでしょう。たとえば、
- AIを開く前に、自分なりの結論を短く書く
- まず箇条書きで論点を整理する
- AIの出力をそのまま使わず、採用理由を考える
- 最終的な判断や構成は自分で決める
- AIには添削、反論、抜け漏れの確認を頼む
といった使い方をするイメージですね。AIにゼロから完成品を作らせるんじゃなくて、自分が作ったものを改善させるんなら、そこまで仕事の満足度は損なわれないんじゃないでしょうか。いずれにぜよ「AIにどこまで任せて、どの部分を自分の仕事として残すのか」って境界を考えとくのは有用でしょうねぇ。


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