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年を取ると頭が固くなって“フェイクニュース”を信じやすくなる!問題はどこまで本当か?

   


年をとるほどネットのデマに引っかかりやすくなる!」みたいな話がありますな。若い人はネットリテラシーがあるから大丈夫なんだけど、高齢者はスマホやSNSに不慣れだから、簡単にニセ情報を信じ込んでしまう、みたいな話ですな。

 

これは決して根も葉もない考え方ってわけではなく、実際これまでの研究でも、高齢層ほど信頼性の低いニュースサイトを訪れたり、怪しい情報をシェアしたりしやすいみたいな傾向が報告されたりしてるんですよね。となると、年をとった人は「ネットに不慣れなのだろう」や「フェイクニュースを見分ける能力が落ちるのだろう」と考えたくなるわけですな。

 

しかし、新たに出た研究(R)では、

 

  • 高齢者が怪しい政治ニュースにアクセスするのは、デジタル技術に弱いからではない!政治的な偏りを利用されているからだ!

 

って結論になってて「なるほどなー」とか思ったりしました。

 

この研究は、約1万人のアメリカ人を対象にした複数の調査データと、参加者の実際のネット閲覧データを使ったもの。みんなにいろんなニュースを見せて、「あなたはこの見出しを本当だと思いますか?」と聞く作業を繰り返したのはもちろん、参加者が現実にどんなサイトを訪れたかまでチェックしつつ、

 

  • 明らかな虚偽ニュース
  • 大手メディアのニュース
  • 事実をベースにしながら、極端に党派的な見せ方をするニュース

 

を、どう判断し、どれほど接触しているかを調べたんだそうな。わりと徹底した調査でいいっすね。

 

でもって、その結果なにがわかったかと言いますと、

 

  • 高齢者ほど、信頼性の低いサイトや、政治的に偏ったニュースにアクセスしやすい傾向があった。
  • しかし、調査でニュースの真偽を判定してもらうと、高齢者は若年層よりも「フェイクニュースを見抜く能力」が低いわけでもなかった。
  • というか、完全なデマや一般的なニュースについては、若い世代より正確に見分ける場面もだいぶ多かった。

 

って感じだったんだそうな。つまり、「高齢者はフェイクニュースを判別できないから騙される」って考え方だと、「高齢者ほどフェイクニュースに接しやすい」って現実をうまく説明できないわけっすね。

 

では、どう考えればいいのかってことですが、研究チームは「年をとると、自分の政治的な立場に合う情報を、強く信じやすくなるんじゃない?」と推測しておられます。これがどういうことかと言いますと、たとえば「ワクチンにはマイクロチップが入っている!」みたいに完全なデタラメは、さすがにダマされる人のほうが少数派なわけです。どう見ても怪しい情報なのだから、これは当然でしょう。

 

ところが、世の中には「一部だけ事実を使いつつ、敵(とみなされる人たち)を極端に悪く見せる」タイプの情報があるじゃないですか。たとえば、なにか世間を騒がせるような事件が起きた時に、そのニュースを材料にしつつ、

 

  • 相手の党だけが異常に腐敗しているように見せる

  • 自分が支持する側の問題は完全に無視する

  • 見出しだけで怒りや軽蔑を引き出す

  • 複雑な政策問題を「敵が悪い」の一言で片づける

 

みたいなやり方で世情を煽ろうとする人やメディアのことっすね。これらは、なにせ素材の一部に事実を使っているので、完全な嘘よりも見抜きにくいんですよ。Xでよく見かけるタイプですな。

 

しかも、この手の情報がタチが悪いのは、

 

  • 人間は、自分の世界観に合う情報ほど、「これは正しい!」と感じやすい

 

ってバイアスを持っているからであります。たとえば、自分が支持する党に不利なニュースは「これは怪しい!」と感じるのに、相手側に不利なニュースなら「たぶん本当だ!」と受け入れちゃうみたいな感じですな。

 

実際のところ、今回の研究では、年をとった人ほど自分が支持する党派への愛着が強く、自分の政治的な立場に都合のいい見出しを「これは真実だ!」と評価しやすい傾向が見られたそうな。要するに、問題は「高齢者は情報を読む能力がない」ところにあるんじゃなくて、情報を読む前から、何を信じたいかがかなり決まっていることにあるってことですかね。

 

なんでこういう現象が起きるのかと言いますと、

 

  • 若いころは、仕事、交友関係、住む場所、家族構成などが変わりやすいため、そのたびにものの見方が揺れる。
  • しかし、年齢を重ねて人生経験を積むと、「自分はこういう人間だ」「世の中とはこういうものだ」という感覚が安定。そのなかには、政治的な立場も含まれる。

 

みたいな感じです。もちろん、年を取って価値観が安定するのはいいんだけど、そいつが強くなりすぎると、「自分の側に都合のいい情報だけを信用する」方向にも働いちゃうわけですな。

 

さらには、ネットってのは怒りや敵意を刺激する情報ほど広がりやすいんで、長年かけて熟成された政治的アイデンティティと、極端な情報環境が組み合わさって、さらにヤバいことになるんですよ。こいつは嫌ですねぇ。

 

となりますと、ファクトチェックの見方を教えたり、怪しいサイトの特徴を学んだりといった対策は、それだけでは足りないってことになりましょう。なにしろ、たいていの人は「見抜けないから信じる」だけではなく、「信じたいから信じる」ことのほうが多いみたいなんで。

 

もしヤバいニュースを信じ込みたくないのなら、おそらくニュースを見るときに、以下のような問いを自分に投げてみるだけでも多少はマシかもしれません。

 

  • この情報は、私の怒り刺激しようとしていないか?

  • 私と反対の見解を持つ側をバカにするだけの内容になっていないか?

  • この記事が自分の立場と逆だったとしても、同じように信用するだろうか?

  • 見出しではなく、元の発言や一次資料を確認したか?

  • 「事実かどうか」ではなく、「どういう見せ方をしているか」を確認したか?

 

ネット上の怪しい情報というと、つい「明らかなデマ」を想像しがちなんだけど、どうやらもっとも警戒すべきは「自分のアイデンティティに合わせて加工された事実」だと思われますんで、心当たりのある方はご注意くださいませー。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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