「学校で得た知識が多い人」と「人生で得た知識が多い人」は、どっちが本当に頭がいいのか問題
海外などでは、昔から「ブックスマートとストリートスマートは、どっちが本当に頭がいいのか?」みたいな話をすることがあります。
ブックスマートってのは、歴史や文学に詳しい人、難しい言葉をたくさん知っている人、数学の問題をスラスラ解ける人などのことで、いわば学校の勉強で身につけた知識が豊富な人ですな。
一方でストリートスマートってのは、実生活の経験から得た知識が豊富な人のことで、たとえば、パソコンを自作した経験から部品に詳しくなったり、海外旅行を通じて建築物を覚えたり、美術館通いを続けるうちに画家の名前を知ったり、みたいに「人生のなかで覚えた知識」が豊富な人を指しております。
で、新しい研究(R)では、これにからんで「学校で得た知識と、人生経験で得た知識は別の能力なのか?」って問題を調べてくれてておもしろかったです。
これはドイツのウルム大学やボン大学などの研究チームによるもので、30〜40歳の男女348人が対象。参加者には、2パターンのテストを受けるように指示されまして、
- 中学校ぐらいまでに扱われる歴史、数学、文学、科学など、学校で学ぶような一般知識のテストを受けてもらう
- 学校の授業では扱われにくい「生活知識」のテストも受けてもらう。扱う内容は、農業、現代のテクノロジー、芸術、旅行、日常生活など
みたいになってます。「生活知識」の問題ってのは、たとえば「コンピューターの中央処理装置を何と呼ぶか?」みたいなやつで、学校の外で身につけた一般的な知識を問う感じになっております。
でもって、これに加えて、参加者の「新しい経験への開放性」や「考えることをどれだけ楽しむか」なども測定して、すべての結果をひっくるめて分析。学校の知識と生活の知識を比べたところ、結果はこんな感じになりました。
- 学校の知識の成績が高い人ほど、生活の知識の成績も高い傾向がかなり強く確認された。
- 統計的に分析すると、学校の知識と生活の知識を別々の能力として分ける必要は認められなかった。
ということで、つまり、
- 学校で覚えた知識
- 趣味で覚えた知識
- 仕事で覚えた知識
- 旅行で覚えた知識
- 動画や本で覚えた知識
ってのは、別に「どちらが上で下だ!」とか「どちらが本物の知識か?」みたいなことを考える必要はなさそうだってことですな。
まぁ、脳の仕組みを考えてみれば、どのような場所で学んだかにかかわらず、「情報を取り込み、整理し、あとで思い出す能力」みたいなものは変わらないはずですからね。学校の勉強が得意な人は本から得た情報だけを覚えやすかったり、生活経験が豊富な人は現実世界の知識だけを覚えやすかったり、みたいな違いは出ないのかもですな。
でもって、この分析でもうひとつ興味深かったのが「知的好奇心」の影響であります。研究チームは、最初のころは「好奇心がある人ほど、生活の知識も多いだろうなぁ」と予測してたんですよ。たしかに、好奇心が強ければ、学校の外で学ぶ知識が増えそうに思えますからね。
ところが実際の結果は違いまして、
- 知的な好奇心が旺盛な人は、学校の知識と生活の知識の両方が豊富だった
みたいな結果だったというんですな。要するに、考えることが好きで、新しい情報を知りたがる人は、教室であろうが日常生活であろうが、幅広く知識を吸収していたってことでして、言われてみりゃあ納得の結果でしょう。知識を吸収する基本能力は、どんな人でも同じようなものなんでしょうな。
が、だからといって、人生経験は知識量に関係ないのかと言えば、もちろんそんなことはございません。全体的な知識量については、好奇心の有無で説明できたものの、個々の問題について見ると、特定の経験が大きく影響してたって結果が出てますんで。
これがどういうことかと言いますと、たとえば、
- 実際にパソコンを分解した経験がある人は、本人の全般的な知識能力を考慮したあとでも、コンピューター部品の問題に正解しやすかった。
- 特定の場所を訪れた経験や、特定の活動を行った経験がある人は、その内容に関連する知識も思い出しやすかった。
みたいな話であります。つまり、「知識を吸収する基本能力は共通しているが、何を知っているかは、その人が何をしてきたかで決まる」ってことですな。知識の入りやすさには全般的な個人差がある一方で、実際に頭のなかへ入る内容は、仕事、趣味、旅行、交友関係などによって変わるわけっすね。
そう考えると、この話を実生活に応用するなら、「知識を増やしたいなら、とにかく好奇心を増やす!」という方針がよさそうであります。たとえば、
- テクノロジーに詳しくなりたいなら、解説書を読むだけでなく、実際にパソコンを組み立ててみる。
- 美術に詳しくなりたいなら、作品名を暗記するだけでなく、展覧会へ行って現物を見る。
- 歴史に詳しくなりたいなら、年号を覚えるだけでなく、史跡を訪れたり、当時の地図を眺めたりする。
みたいに具体的な経験の量を増やすか、
- 普段なら選ばないジャンルの本や動画に触れてみる
- わからない言葉や気になった話題を、その場で少しだけ調べてみる
- 詳しい人に「どうしてそれがおもしろいのか?」と聞いてみる
みたいに新しい情報との接点を意識的に増やす感じになりましょう。好奇心ってのは、「よし、今日から好奇心旺盛になるぞ!」と考えて増えるようなもんでもないんで、それよりは、普段とは違う情報や人や場所に触れる機会を少しずつ増やしたほうが、「これはどういうことなんだろう?」という疑問が生まれやすくなるはずです。知識を増やすには、まず好奇心を高め、その好奇心を高めるには、新しい経験や情報に触れる回数を増やすのが基本なのかもしれません。


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