座りっぱなしは体に悪い?それだったら毎日ウォーキングしまくればいいですよ
「座りっぱなしの健康被害」に関するご質問をいただきました。
先日、気になる記事を見かけましたので、 Sedentary Lifestyle のリスクに対する反証になるのではないかと考え、ご意見をうかがいたく思いました。
よろしくお願いいたします。
とのこと。
座る時間が長くても死亡リスクは上がらない?
これはエクセター大学の研究についての記事で、5000人のデータを統計処理したところ「座る時間が長くても死亡リスクは上がらない!」との結論が出たというんですね。質問者さんがおっしゃる「Sedentary Lifestyle」は「座りっぱなしの生活」のことで、要はデスクワークが長くても健康リスクはないのではないか、と。
当ブログでは、かねてより「座りっぱなしの害」について書いてまして、いまはスタンディングデスクで運動しつつ仕事をしております。今回のデータが事実であれば、困るやら嬉しいやら微妙な気分になっちゃうところです。
というわけで、まずは原論文をチェックしてみましょう(1)。これはロンドン大学の健康データを使った研究で、約5,000人分の座り時間や日常の活動量、健康状態、食生活といった数値を抜き出したうえで、16年分の死亡率と比べたんですね。かなり充実した内容になっております。
その結果、16年の間で450人の死亡が確認されたものの、いずれも座り時間との関連はなしとの結論。研究者いわく、
今回の研究は、座り時間を減らしても死亡リスクにはさほど意味がない可能性を示している。
とのこと。ここだけ見ると、確かに座りっぱなしでも問題がないように思っちゃいそうですね。
今回の研究は参加者の活動レベルが高い
とはいえ、いっぽうでは過去に「座りっぱなしは健康に悪い!」との研究が多かったのも事実ではあります。ざっと例をあげれば、
- 座り時間が長いと骨の密度が減り、骨折のリスクが高まる(1998年,2)
- 座り時間が長いと脂肪を燃やす酵素が減り、体脂肪が減りにくくなる(2004年,3)
- 座りっぱなしの生活は高血圧をもたらし、心疾患のリスクを高める(2010年,4)
- テレビの前で座っている時間が長いほど死亡率は高まる(2010年,5)
といったところ。エクセター大学のデータとは矛盾してますねぇ。
では、これらのデータと今回の実験はどこが違うかと言えば、ズバリ「参加者の活動量」です。分析に使われたロンドン大学のデータは都会に住む公務員だけを対象にしたもので、ざっくり言って平均的な住民より2倍も歩いているんですね。
この点は研究者も認識してまして、
問題は「座り時間」そのものではなく、活動量の差かもしれない。デスクワークやカウチポテトのようにカロリー消費が少ない行為こそが、健康に被害をもたらすのだろう。
と推測しておられます。つまり真の悪は活動量の不足で、座り時間の長さはその指標の1つに過ぎないんじゃないか、と。これは非常に納得できる意見かと思います。
まとめ
というわけで、今回の研究から言えることは、
- 「座り時間が長いと健康に悪く、その影響は運動をしても改善しない」という従来の説の有力な反証になっている。
- 「座りっぱなしが悪い!」という説が覆ったわけではない。
- いずれにせよ、やっぱり毎日の運動は超大事!
といったところだと思います。とにかく、たくさん歩けば座りっぱなしの害も覆せる可能性が高くなったわけで、デスクワークが中心の方には朗報なのではないかと。