10歳すぎたら英語はペラペラになれない?それともなれる?みたいな話
「10歳すぎてから英語を学んでもペラペラにはなれんぞ!」ってニュース(1)が出てましたんで、あわてて元ネタ(2)を読んだりしておりました。
これは「心の仕組み」や「暴力の人類史」(どっちも激しく名著)で有名なスティーブン・ピンカー博士の研究で、「言語習得臨界期説って正しいの?」って問題について調べてくれたもの。言語の臨界期ってのは「ある年齢をすぎると語学の学習に限界が来ちゃうのでは?」って考え方で、どうやらヒトの脳ってのは、年齢とともに文法やボキャブラリーの獲得能力が衰えていっちゃうみたいなんですな。
では、ピンカー博士がどんな調査をしたかと言うと、
- 67万人の参加者をオンラインで集める
- みんな英語に英語クイズをやってもらう
- その結果を、全員が「英語を学び始めた時期」とくらべる
って感じ。かなりの人数を使った研究になってますねー。
参加者のうち24万6千人はネイティブスピーカーで、それ以外ではフィンランド語、トルコ語、ドイツ語、ロシア語を母国語にしてる人が多かったとのこと。年齢層は20〜30代がメインで、10〜70歳までのあいだにに散らばっております。
それで何がわかったかと言いますと、
- 英語がペラペラ(ネイティブレベルね)になるには10歳までじゃないとダメ
- ヒトの語学学習能力は17歳からメキメキと低下していく
- 11歳より後に英語を勉強し始めた場合は、それより前に学習を始めた人に勝てる見込みはない
って感じです。いやー、なんか嫌になっちゃいますな(笑)
なんでも、歳をとると「一部の文法」を使いこなすのが異様に難しくなっちゃうようで、特に「三単現のS」はいくら頭でルールを理解してても間違っちゃうことが多いらしい。これもわかるなぁ。
ただ、これはもちろん「歳を取ると英語を学ぶのは無意味!」って話ではありませんで。実際、他の研究(3,4)などを見てますと、「若者と高齢者をくらべた場合は、歳を取った人の方が短期的にも長期的にも英語力は発達しやすいよ!」って結果も出てるのがおもしろいところです。ネイティブまでは無理だとしても、「nativelike」ぐらいまでなら十分に行けそうな感じ。
というか、「『いまからバイオリンを習っても遅すぎる』と思ってあきらめた60歳のお婆ちゃんが、80歳になってから『あの時スタートしてたらバイオリン歴20年だったのに!』と激しく後悔した」みたいな事例もよくありますんで、そもそも年齢が遅いからやらないって選択肢はないわけですが。