「スマホは体に近づけるな!」というカリフォルニア州の決定はどこまで正しいの?
スマホは体に近づけちゃいけない?
スマホの害に関するご質問をいただきました。
去年の暮れあたりにアメリカのカリフォルニア州公衆衛生局が、携帯電話、スマホを健康のために体に近づけてはならないという声明を出しましたんですけど( https://jp.techcrunch.com/2017/12/16/2017-12-15-dont-keep-cell-phones-next-to-your-body-california-health-department-warns/ )、これはどれくらい信頼性があるんでしょうか?
この話題を取り上げてるサイトのどこも研究については詳しく取り上げていません。 これがいかなる研究に基づきどれくらいの信頼度があるか教えていただけると幸いです。
とのこと。これがどのような問題なのかと言いますと、
カリフォルニア州公衆衛生局が今週、携帯電話からの電磁波放射の危険性に関する警報を発令した。そう、今や私たち全員が中毒になっていて、手放すことができないと思われているあれから、電磁波が漏れているので、カリフォルニア州は安全のためのガイダンスを発表したのだ。 CDPHは、これらのデバイスの使用を減らすことと、できるかぎり遠くに置くことを求めている。
みたいな話です。スマホからは強力な電磁波が出ているから、使いすぎると腫瘍や癌になるかもしれないんだ、と。
なんだか怪しげな話ですが、州の公衆衛生局が警告を出したと言われれば心配になっちゃうのが人情かと思います。気になりますねぇ。
カリフォルニア州の文書は「スマホは安全だ!」って事実を示している
というわけで、カリフォルニア州が根拠にしてる2009年の文書(1)を見てみたわけですが、うーん、これはかなり謎。なんでこの文書から「スマホは危ない!」って結論になったかがイマイチわからないんですよ。
たとえば、このPDFにリンクしてあるWHOの見解(2)を見ると、
携帯電話に健康リスクがあるのかを確かめるために、過去20年のあいだにたくさんの研究が行われた。現在のところ、携帯電話の使用によって健康被害が起きるといった事実は確認されていない。
とか書いてますしねぇ。その他のリンク先を見ても、「まぁ問題はないけど気になるんだったら離しておけば?」ぐらいの所見だったりしますし。
というか、この文書を見る限り、みんな「今後も長期研究は必要だよねー」と言ってるだけで、特段の危険性を指摘してるケースはなし。逆に「携帯電話は安全!」ってのが現在のコンセンサスじゃないかと思えるわけです。
スマホがヤバいならコーヒーもヤバい
また、カリフォルニア州は「国際がん研究機関(IRAC)はスマホがヤバいと言っている!」といった指摘もしてたりします。事実、IRACはスマホを「2B ヒトに対する発がんの可能性が ある (Possibly carcinogenic to humans)」に分類(3)してまして、これを見るとやっぱり怖くなっちゃうわけです。
ただし、IRACの基準はかなり厳しいものがありまして、「癌になりそうなメカニズムがあるよねー」って仮説がだけでも2Bに分類されちゃうんですよ。当然、ヒトの実験データは不要で、なんなら動物実験すら必要なかったりします。
なので、ここにはコーヒーなんかも「発がんの可能性がある」に分類されてるのがおもしろいところ。つまり、スマホがヤバいならコーヒーも飲んじゃいけないことになっちゃうんですね。
ちなみに、IRACが引用してるデータ(3)を見ると、ほぼすべてが「スマホと癌には関係がみられなかった」か「十分な証拠はない」って結論になってたりします。これまた、逆にスマホの安全性を示してるってことじゃないかと。
カリフォルニア州は前科が多い
さらに余談ですが、実はカリフォルニア州って昔から似たようなことをやってるんですよ。私が知る限りですと、
- コーラのカラメル色素に発がん性が!と煽った(動物実験しかベースにしてない)
- グリホサート(除草剤)は癌になる!と煽った(こちらも安全性は確率されている,4)
みたいな騒動を引き起こしていて、そのたびに日本の自然派マフィアみたいな方々が大騒ぎしてたのを記憶しております。なぜかはわかりませんが、とにかくカリフォルニア州って昔からムダに騒ぎがちなんですよね。
ってことで、以上の話をまとめると、
- スマホは危ない!って説にはなんの根拠もない
- 健康系のニュースで「カリフォルニア州」の文字を見たら気をつけよう!(笑)
って感じです。安心してお使いください。