運動が楽しくない原因は「炭水化物の質」だった?最新研究が示す意外なメンタル効果とは
筋トレやランニングなどを続けていると、「最近なんだか楽しくないな……」みたいな気分になることはよくあるわけです。いわゆるバーンアウトの前段階に近い状態でして、その原因としてはフィジカル面よりもメンタルの問題が大きいと思われがちだったりします。が、最近の研究(R)では、「炭水化物の“質”が運動の“やる気”に直結するかも!」という、ちょっと面白い結論になっておりました。
まずは、念のために基本をおさらいしときましょう。炭水化物は、筋肉の中のグリコーゲンを満たす栄養素で、トレーニング前にグリコーゲンを満タンにしておくことで、より高いパフォーマンスを発揮できるし、運動後のリカバリーもスムーズになるんですよね。特に筋トレやサッカーのような中~高強度の運動では、脂質よりも炭水化物が優先的に使われるんで、「糖質が足りない=力が出ない」って図式が成り立つのは間違いないわけです。
実際のところ、これまでの研究では、
- 総摂取量が少ないとパフォーマンスが落ちる
- 摂取タイミング(運動前・中・後)も重要
といった結果が出てはいたものの、炭水化物の「質」に注目したものは、そこまで多くなかったんですよね。
そこで研究チームは、まずは「Carbohydrate Quality Index(CQI)」って指標を作り、以下の4つの要素を使って炭水化物の「質」を評価しております。
- 食物繊維の量→ 多ければ多いほどスコアアップ。野菜・果物・豆類・全粒穀物がメイン。
- 全粒穀物/総穀物の比率→ 白米・白パンより、玄米やオートミールのほうが高得点。
- グリセミックインデックス(GI)→ 低GI食品(血糖値の上昇がゆるやか)を食べているほど高スコア。
- 固形炭水化物/総炭水化物の比率→ 液体(ジュースやスポドリ)より、噛んで食べる炭水化物のほうが良い。
このスコアをもとに、研究チームはアスリートたちが「普段どんな炭水化物を食べているか」を調べ、それぞれの運動の楽しさや燃え尽き感との関係を分析したんだそうな。
さて、実際のデータはどうだったというと、
- 運動の楽しさ:炭水化物の質がもっとも高かったアスリートは、運動を楽しんでいる傾向があった(p < 0.05)。逆に、炭水化物の質が低いグループは、運動を楽しめない傾向がはっきりと見られた。
- 燃え尽き感:こちらは炭水化物の質と逆相関があった。つまり、炭水化物の質が高い人ほど、運動に対して燃え尽きにくい傾向があった。
ということで、運動の楽しさと燃え尽き感のどちらとも炭水化物の質と連動しており、質が高い炭水化物を摂取する量が多い人ほど、気分よくトレーニングを続けられていたらしい。これはなかなか面白い結果じゃないでしょうか。
では、なぜ炭水化物の「質」が気分や燃え尽き感に効くのか?ってのが気になりますが、理由としては以下の3つがありそうです。
- 血糖値の安定化でメンタルが安定する:高GIの糖質は、血糖値が急上昇→急降下しやすく、それに伴って気分も落ちやすくなる。低GI食品ならこの波をなだらかにできるので、結果的に集中力や意欲の維持につながるのかもしれない。
- 微量栄養素が豊富に含まれている:炭水化物の質が高かった人ほど、ビタミン&ミネラルの摂取量も多くなっていた。具体的には、ビタミンA, E, K, B群, C、カリウム、マグネシウム、鉄、カルシウムなど。これらはすべて、エネルギー代謝や神経伝達物質の合成、抗酸化作用に関わっていて、脳の働きを整える栄養素でもある。そのおかげで、炭水化物の質が運動のメンタルを左右したのかもしれない。
- グリコーゲンの回復効率が高い:良質な炭水化物を摂取すると、筋肉へのグリコーゲン補給がスムーズに進むため、エネルギー切れ→モチベ低下という悪循環が防ぎやすくなるのかもしれない。
まあ、ここらへんはあくまで推測ではありますが、炭水化物の質がメンタルを左右する理由としては、充分あり得るんじゃないでしょうか。
ってことで、「よし!おいらも質の高い炭水化物を食べるぞ!」と思った人も多いでしょうから、ここではまず“質が低い炭水化物”の例を押さえておきましょう。
- 清涼飲料水・ジュース(液体カーボ)
- 白パン、菓子パン、ケーキ(精製&高GI)
- 砂糖入りプロテインバーやエナジージェル
- 朝ごはんが「白米だけ」 or 「パンだけ」
これらの炭水化物は血糖の乱高下や栄養の偏りを招きやすいんで、長期的にはモチベーションを落とすリスクがあるかもですね。これらの炭水化物を徹底的に避けた上で、以下のような感じで質の高い炭水化物を取り入れていただければと思う次第です。
- 白米 → 玄米、雑穀米、オートミールに切り替える
- 食パン → 全粒粉パン or ライ麦パンに切り替える。
- おやつ・間食は、果物(バナナ、りんご、キウイなど)か、またはミックスナッツ+ドライフルーツ(砂糖無添加)
- 料理には、野菜+豆類を加えまくってGIを自然に下げる
- 運動後のリカバリーは、高GI食品(白米、じゃがいも、はちみつなど)とタンパク質をセットにする
ってことで、今回の研究では、炭水化物の質がパフォーマンスやモチベーションを左右するかもしれないってお話でした。「最近なんとなく運動が楽しくないな……」と感じている方は、プロテインの種類やPFCバランスだけでなく、「炭水化物の質は高いか?」って視点を取り入れてみるのもいいかもですな。