今週の小ネタ:「モテる男は筋肉がある」は本当か?恋愛の条件に「学歴」や「年収」はどこまで大事か?デジタル恋愛DVをする人の特徴とは?
ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。
「モテる男は筋肉がある」は本当か?
「筋肉はモテるのか?(性別を問わず)」って疑問を調べた話(R)が出ておりました。この研究は、「上半身の筋力と恋愛・性的関係の関連性」について、4,000人超の全米代表サンプルを使って検証してくれたもので、研究チームがなにをやったのかと言いますと、
- 「人間の進化の過程において、上半身の筋力がパートナー獲得にどう影響してきたのか?」という疑問を調べる。
- そのために、上半身の筋力(握力で測定)とセクシャルな成功(性的パートナー数、長期的関係の有無)を調べ、それぞれの関係をチェックする。
みたいになります。使用されたデータは、アメリカCDC(疾病予防管理センター)が集めた全米健康調査で、対象は18〜60歳の男女4,300人以上。全員の握力を左右3回ずつ測定して筋力を調べ、さらに性生活に関するアンケートも同時に実施したんだそうな。
で、結果がどうだったかと言いますと、
- 筋力がある男性ほど生涯の性的パートナー数が多く、長期的なパートナーがいる割合も高い
ということで、短期的にも長期的にも「筋力=恋愛・性的な成功」にある程度つながっていることが確認されたらしい。まあ筋力ってのは「私は食料も確保できるし、家族も守れる力がありますよ!」ってサインになるので、これがモテにつながるのはわかりやすいっすね。
が、この研究ではもうひとつ面白い知見も出てまして、
- 上半身が強い女性ほど、生涯の性的パートナー数が多い!ただし、長期的なパートナーとの関係においては、女性の場合あまり強い相関はなかった。
って結果も出てたりするんですな。男性だけでなく、女性も筋力があったほうがモテるのではないか、と。
この点について研究チームは、
- 筋力がある女性は自己効力感が高く、恋愛に積極的なのではないか?
- 強い女性は、社交的で活動的なライフスタイルを持っているのではないか?
- 強い女性は強い男性と付き合いやすいため、結果的に経験値が上がるのではないか?
といった推測をしておられます。あくまで「相関」であって「因果」ではないんですが、モテスキルの一部としてフィジカルを強めておくってのは悪くないかもですなぁ。
恋愛の条件に「学歴」や「年収」はどこまで大事か?
「女性は地位や経済力を重視し、男性は見た目を重視する」なんてことをよく申します。男女によってパートナーに求める条件は異なりがちってのは、昔から何度も繰り返されていた考え方っすね。
が、ここ最近の研究(R)では、こうした前提がちょっとずつ揺らいでまして、そこらへんをちょっと掘ってみましょう。
この研究は、チェコ共和国の国民代表サンプル2,280人(18〜50歳)を対象にしたもので、みんなに対して、
- 自分の年齢、収入、学歴、恋愛経験などを自己申告してもらう。
- 「理想の相手に求めるもの」と「絶対にNGな特徴」も評価してもらう。
- さらに「自分がどれだけ魅力的か?」という主観評価も記録してもらう。
といった形でデータを集めたんだそうな。この手の研究としては、だいぶ網羅的ですね。
で、分析の結果はというと、実にシンプルなものになっております。
- たいていの人は、自分の年齢、収入、学歴、過去の恋愛経験といった“客観的なスペック”によって、「理想の相手に求める条件」を決めていなかった。
- 自分の“客観的なスペック”は、すべての要因を合わせても「理想の相手に求める条件」のばらつきを、最大でも5%程度しか説明できなかった。
一般的には「高収入・高学歴の人は、相手にも同等のレベルを求めるのでは?」や「恋愛経験が豊富な人は相手にうるさいのでは?」みたいなイメージもありますが、実際には自分がハイスペックだからといって、必ずしも相手にもハイスペックを求めるわけじゃないってことですな。
まあ、データを細かく見ると、唯一ちょっとした傾向が見られたのが、
- 自分はイケてるという自信が強い人ほど、相手に対してより多くの条件を求めがち
って点ですが、この影響も微々たるもので、男性ではわずか1%の影響、女性でも2%程度の影響にとどまっております。つまり、「モテると思っている人=理想が高い」はあながち間違いではないけど、それほど決定的なものでもないってことっすね。
この結果が出た理由はいろいろありましょうが、考えられることとしては、
- 恋愛の“理想像”はかなり主観的で、客観的なスペック以上に価値観や個性によって相手の条件を決めてる人が多い?
- 現代社会では、「見た目」や「共感力」「ユーモア」など、非スペック的な要素が重視される傾向が強い?
みたいなとこがあるんですかね。「年収が高ければOK」といった単純な時代ではなくなってきてるのかもしれませんな。
ちなみに、この研究では、男女ともに「温かさ(優しい印象)」が最も重視されてたって結果も出てて、これまた参考になるポイントですね。もしいま客観的なスペックにお悩みの方は、とにかく「温かみ」を醸し出すようにがんばるほうがよいかもっすね。
デジタル恋愛DVをする人の特徴とは?
「デジタル恋愛DVをする人ってどんな人?」って研究(R)が出ておりました。海外では「デジタル・デーティング・アビューズ(DDA:Digital Dating Abuse)」と呼ばれる行動について調べたもので、心理学の世界では、近年じわじわと注目を集めてるテーマであります。
これはウォルバーハンプトン大学の研究で、まず前提として「DDAとはなにか?」を簡単にチェックしておきましょう。DDAってのは、
- テクノロジーを使って恋人を監視・コントロール・操作する行動全般
を指してまして、たとえば、
- パートナーのスマホを勝手にチェックする
- SNSのパスワードを聞き出して投稿内容を監視する
- 恋人のSNSに制限をかける
- 恋人になりすまして投稿する
みたいな感じになります。物理的な暴力ではないんだけど、精神的に相手を監視しまくるような行為を意味してるわけですな。
この研究では、18〜30代の恋愛中の男女280人(うち約8割が女性)を対象に調査を実施。以下の3つの指標を計測しています。
- 恋愛ライバルへの競争心 → 同姓の魅力的な人を「敵」と見なす傾向の強さ
- ビッグファイブ→ どんな性格の持ち主か
- DDAスケール → 上記のような監視・操作的行動をどれくらいしているか
すると、気になる分析結果は以下のようになりました。
- ライバル意識が強い人ほどDDAをやりやすい:つまり、同性の恋愛ライバルに強い対抗心を抱く人は、パートナーの動向に敏感になりすぎ、そのせいで「浮気されるかも!」と思い込みやすく、結果としてSNSやスマホを監視したくなるって流れに陥りやすいらしい。これは分かりやすいですね。
- 性格の中では“協調性”が唯一の予測因子だった:ビッグファイブの中でも、「協調性が低い=他人への思いやりが薄い」人は、DDAに走りやすいという傾向が強く出ているそうな。具体的には、
・協調性が高い人:信頼関係を重視し、干渉を避ける
・協調性が低い人:相手をコントロールしたがる傾向がある
って感じでして、他者への思いやりが関係してるってのはちょっと面白いっすね。
ちなみに、神経症傾向(不安や嫉妬が強い性格)よりも、協調性のほうが予測力が高かったそうで、これも面白いとこですね。従来は「不安な人ほど恋愛で相手を束縛しやすい」と考えられていたんだけど、どうやら“人間関係全般への態度”のほうがDDAにおいてはより重要っぽいですね。
- 男女差は「なし」:この研究では、男女差は有意に見られなかったとのこと。つまり、DDAは男性だけの問題でもなければ、女性に偏っているわけでもないってことですな。これは以前から示唆されていた傾向ではありますが、「やられる側」も「やる側」も性別に関係ないってのは、わりとポイントかもしれません。
では、なんで上記のような人たちがDDAをするのかってことですが、これは人間が生まれ持つ、
- 恋人をライバルから守りたい!
- 恋人の浮気リスクを減らしたい!
って「防衛的」な欲求が暴走した結果だと推測されております。これらの心理は誰にでもあるものだけど、SNSのせいで実行しやすくなったのも大きいんでしょうな。
ということで、もし今「協調性」が低い相手とつきあっている時は、DDA的行動が出てないかどうかを疑ってみるのも良いかもしれません。まだ新しい研究テーマではありますが、メンタルヘルスや人間関係に与える影響は決して小さくないので、ご注意いただければ幸いです。