このブログを検索




今週の小ネタ:緑茶×ショウガで持久力アップ?牛肉と鶏肉ってどっちが腸に悪いの?スペルミジンは本当にアンチエイジングに効くのか?


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

 

 

 

緑茶×ショウガで持久力アップ?

最近のサプリ業界ではミックス系が流行ってまして、「プロテイン×カフェイン」「クレアチン×βアラニン」みたいなコンビネーションで効果を狙うケースが多いんですよ。そんな中で、新たな研究(R)では「緑茶エキス(カテキン) × ショウガがいいかもだぞ!」って結論になってて面白かったです。

 

どんな試験だったかと言いますと、

 

  • 16人の健康な男性にランダム化クロスオーバー試験を実施
  • 暖かい環境(21–24℃)vs 寒い環境(5–7℃)のどちらかで、VO2maxの70%で自転車をこいでもらう
  • 運動の前に、みんなに「①緑茶エキス 500mg(EGCG 225mg含む)」「 ②ショウガ1,000mg 」「③両方」「④プラセボ」のいずれかを飲んでもらい、運動のパフォーマンスが上がるかどうかを調べる。

 

みたいになってます。緑茶もショウガもすでに定評のあるサプリですけど、これを組み合わせたら、さらに効果がブーストするんじゃないかと考えたわけですね。

 

すると、結果は研究チームの予想どおりでして、

 

  • 緑茶だけでもショウガだけでも効果はなかった。
  • しかし、緑茶とショウガを組み合わせた時は、突然パフォーマンスが改善。体が疲れるまでの時間が長くなり、主観的な疲れも下がった。

 

って結果だったんですな。まぁまだ1本目の研究なので、信頼性はまだ「要検証」レベルではありますが、緑茶は抗酸化作用が高いし、ショウガも血流を改善してくれますからね。2つを組み合わせたら疲労対策になる可能性はあるかもしれません。

 

なので、有酸素運動を頑張りたい!って人は緑茶とショウガのミックスを試してみるのもよし。運動の30分前に「緑茶エキス(EGCG 200–250mg)」と「ショウガパウダー 1g(またはカプセル)」を飲んでみると、良い効果を得られるかもしれません。ただし、EGCGは空腹時に大量に摂取すると肝機能リスクがあるので、その点はご注意を。

 

 

 

牛肉と鶏肉ってどっちが腸に悪いの?

「腸内環境を整えたいなら肉は控えましょう!」みたいなアドバイスがあるわけです。牛の赤身肉は腸内細菌を悪化させるんじゃないか?って考え方が、割と昔から根強くありまして、牛肉が好きな人には困っちゃうわけです。

 

では、この仮説はどうなのかってことで、最近出たランダム化クロスオーバー試験(R)が良い視点を提供してくれておりました。これがどんな研究だったかと言いますと、対象になったのは健康な若い男女16名で、「週3で赤身牛肉150gを食べる」と「週3で鶏肉150gを食べる」って食事をそれぞれ8週間やってもらい、腸内フローラにどんな変化が起きたのかを調べたんだそうな。

 

その結果がどうだったかと言いますと、

 

  • 牛肉も鶏肉も腸内細菌に与える影響はほぼ同じだった

 

って感じだったそうです。どちらの食事も、腸内細菌の構成にわずかな変化は出たんだけど、大きく悪化したわけでもなかったというんですな。具体的には、

 

  • Bacillotaが微増
  • Chloroflexota & Synergistotahは減少
  • 腸内細菌の多様性はわずかに低下した(鶏肉のほうが有意差あり)

 

という結果だったらしいんですけど、注目ポイントとしては「鶏肉のほうがわずかに多様性を下げたが、牛肉と比べると有意な差はなかった」みたいなところでしょうね。要するに「赤身肉=悪い」「鶏肉=安全」って考え方は、こと腸内細菌については当てはまらないかもしれません。個人的にも「腸を悪化させるのは肉そのものよりも、食生活の偏りじゃない?」って印象がありまして、食物繊維や発酵食品などをちゃんと摂ってれば、適量ならどんな肉でも問題ないんじゃないかって感じっすね。

 

 

 

スペルミジンは本当にアンチエイジングに効くのか?

オートファジーのことは、皆さまご存じでしょう。人体の中にある「掃除システム」の一種で、細胞の中に溜まった古くて壊れかけたタンパク質を分解&再利用してくれるので、老化しにくい人ほどオートファジーがよく働いていると言われるんですな。

 

で、このオートファジーをブーストしてくれる(かもしれない)物質として注目を集めているのがスペルミジンであります。納豆やチーズ、小麦胚芽などに含まれるポリアミンの一種で、健康長寿に関与する候補物質としてNatureやCellでもたびたび取り上げられております。

 

ただ、その効能のほどについてはまだよくわかってなかったんですけど、最近スペルミジンに関する8週間の介入研究が報告されましたんで、中身をチェックしておきましょう(R)。これは12名の男女(肥満気味)を対象にした試験で、みんなに1日1.5mg または 3.3mgのスペルミジンを8週間ほど飲んでもらったんだそうな。プラセボがないので研究としてはアレですけども、似た研究が少ないので、とりあえずの参考にはなりましょう。

 

でもって、結果がどうだったかと言いますと、

 

  • 高用量のスペルミジン(1日3.3mg) を摂取したグループは、オートファジー関連バイオマーカーが改善し、血中のBDNFが12%増加していた(BDNFは脳の可塑性・学習・記憶に関わる物質)

 

って感じだったそうです。BDNFといえば、有酸素運動や瞑想で上がることで有名な“脳の成長因子”でして、こいつがスペルミジンで増えるなら、かなり魅力的な話なんじゃないかと。

 

ただし、繰り返しになりますが、この研究にはプラセボがないし、サンプル数も少ないし、研究者の2名が企業関係者だし、p値も明示されてないしで、かなり心もとない研究であるとこはご留意ください。まだ信じるには早いけど期待は持てるなーぐらいのスタンスが正解でしょう。
 

 

なので、まだスペルミジンのサプリを買う段階ではないと思いますんで、いまのところは食品からの摂取を心がけるのが吉。スペルミジンは食事から摂ることもできまして、

 

  • 小麦胚芽
  • 納豆
  • 熟成チーズ
  • マッシュルーム
  • 大豆食品

 

などからも摂取できますんで、とりあえず納豆+チーズを定期的に摂取しとくといいかもしれません。具体的には、週3〜5回で納豆1パックを食べて、週2〜3回でチーズ(パルミジャーノなど)を食べる……みたいなイメージですかねー。


スポンサーリンク

スポンサーリンク

ホーム item

search

ABOUT

自分の写真
1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

INSTAGRAM