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「甘いものを我慢すれば甘いものは欲しくなくなる」は本当か?を調べた6ヶ月RCTの話

 

「甘いものを断てば、そのうち甘いものが欲しくなくなる!」みたいな話は、皆さんも一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。砂糖は依存性があるとか、甘い味に慣れるとどんどん刺激を求めるようになるとか、だから一度リセット期間を設けるべきだ、みたいなことですな。


この考え方には結構な支持がありまして、WHOや各国の公的機関も、「甘味を摂取する回数を減らせば、甘味が欲しくなくなる」といったニュアンスの提言を何度かしております。私も基本は似たような考えでして、「甘いものから身を遠ざけ続ければ、いずれは甘味への執着も自然に薄れていくはずだ!」と思ったりしておりました。

 

ところがどっこい、近ごろこの考え方に異議を唱えるRCT(R)が出まして、これがなかなか面白かったので、内容をチェックしておきましょう。

 

この研究は、健康な成人180名(平均35歳、BMI23前後)を対象にした、6か月間の並行群RCTでして、研究チームは参加者を以下の3グループに振り分けております。

 

  1. 低甘味群:甘い食品がエネルギーの7%しかない食事を食べ続ける
  2. 通常甘味群:甘い食品がエネルギーの35%を占めている食事を食べ続ける
  3. 高甘味群:甘い食品がエネルギーの80%を占めている食事を食べ続ける

 

ここでのポイントは、実験で使われた「甘味」が、砂糖だけではなくて、低カロリー甘味料や果物、乳製品も含まれていた点。これにより、単なる砂糖の摂取量の問題ではなく、“甘い味そのもの”の影響かどうかが判断しやすくなるわけです。

 

そのうえで、研究では以下の内容が、半年でどう変わったかを測定しております。

 

  • 甘味への「好み」は強くなったか、弱くなったか

  • 甘味の「強さの知覚」。つまり、同じ甘さをどれぐらい甘いと感じるか

  • 実際にどんな食事を選び、摂取カロリーがどう変わったか

  • 体重・体脂肪率

  • 血糖・脂質などの代謝指標

 

では、甘味を減らすことで「甘いものがいらない舌」になったりしたんでしょうか? 結果を見てみますと、

 

  • 甘味を摂取する量を減らしても、「甘味はいらない!」って状態にはならなかった。
  • 6か月後とフォローアップ時点で調べても、甘味の好みにはグループ間で差が出なかったし、甘味の強さの知覚にも変化はなく、体脂肪や血糖にも差は見られなかった。
  • 実験が終わると、ほとんどの参加者は、甘いものを食べる量が自然と昔の状態に戻った。

 

みたいになっておりました。これを見ると、「人間の味覚って、そんなに簡単に“再教育”できないのかもなー」って気にさせられますねぇ。

 

あらためて、この実験のキモをまとめてみると、

 

  • 過去の研究では、「甘い味に触れるほど、甘いものを欲するようになる!」と言われていた。そのため、甘味料はできるだけ避けるべきだって考え方が主流だった。
  • しかし、今回の試験では甘いものを食べる量が増えても欲求は増えなかったし、逆に甘いものを食べる量を減らしても、欲求が減るわけではなかった。

 

って感じになります。これはなかなか面白い結果でして、簡単に言えば「甘い味そのもの」が問題なのではなく、

 

  • エネルギー密度
  • 食べ物の物理的形態(液体か固体か)
  • 食事パターン全体

 

といった別の要因のほうが、「食欲の暴走をうながす本当の理由なのかも?」とも考えられるんですよね。

 

というと、「いや、人工甘味料はインスリンを狂わせるのでは?」とか「甘味は脳をハックするはずだ!」みたいな反論が浮かぶ人もいるかもですけど、この研究では、6か月間にわたって甘味の量を増やした場合でも、

 

  • 血糖
  • インスリン
  • HbA1c
  • 血中脂質

 

に有意差は出なかったんですよね。もちろん、これをもって「甘いものは安全だ!」って話にはならないんですけども、少なくとも「甘味の量を増やすことで代謝が破壊される!」という証拠はここでは見当たってないんですよねー。

 

では、この研究から得られた知見を、実生活でどう使えばいいのか? おそらくは、甘味を無理にゼロにしようとがんばるよりも、以下を心がけるほうが実際には役立つでしょう。

 

  • 液体カロリー(ジュース・加糖コーヒー)を減らす

  • 高エネルギー密度のお菓子を“環境的に”減らす(家に置かない、とか)

  • タンパク質と食物繊維を増やして満腹感を安定させる

  • 睡眠不足を避ける(甘味の欲求は寝不足で増幅するので)

 

今回の結果を見る限り、味覚を再教育しようとがんばるよりも、環境設計と食事構造の改善のほうが効くんじゃないかと思った次第です。

 

ってことで、繰り返しになりますが、今回の試験が示したのは、

 

  • 「甘味が増えると、さらに甘味が欲しくなる!」という単純なもんではない!

 

って事実であります。健康の世界では、脂質が悪、炭水化物が悪、甘味が悪みたいな単純化が起きがちなんだけど、実際にデータを見てみると、だいたいのケースはもっと複雑だったりするんですよねぇ。今回の場合は、甘味は食欲暴走のトリガーにはなり得ても主犯ではない可能性が高いんだろうなーって感じっすね。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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