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筋トレの総量を一気に増やしたら、筋肉を増やすのに役立つのか?問題

 
 

「筋肉を増やしたいなら、ボリュームを増やせ!」って話は、パレオチャンネルでもさんざん指摘しております。ボリュームってのはトレーニング量のことで、私たちの筋肉は刺激を与えれば与えるほど成長しやすいので、少しずつ1セットあたりの回数を増やしたり、1セッションあたりのセット数を増やすほうが、間違いなく筋肉は育つんですよ。

 

が、一方で、当ブログの読者さんからは、こんな声も届いたりするわけです。

 

「セット数を増やしたら疲労が抜けなくなりました」

「高ボリュームにしたら逆に筋肉が増えなくなった気がします」

「結局、自分には少ないセット数のほうが合ってる気がする」

 

このような感想が出る時ってのは、たいてい筋トレのボリュームを一気に増やしすぎたケースが多めであります。それまで週10セットでやっていた人が、いきなり週30セットに増やせば、そりゃあ筋肉痛も出るし、関節もダルいし、日常生活のストレスも増えるでしょうからね。

 

となると、ここで問題になるのが、

 

  • 筋トレのボリュームは、どこまで一気に増やすと筋肉の増え方に悪影響が出るのか?

 

ってポイントでしょう。なにごとも急に負荷を跳ね上げるとロクなことにならないものでして、ダイエットでも急にカロリーを削ると失敗率が上がるし、ランニングでも急に距離を伸ばすとケガをしやすいもんです。ならば筋トレも同じで、いきなりセット数を倍増させたら、筋肉が成長するどころか、回復が追いつかずにマイナスになるんじゃないか?と考えるのが自然でしょう。

 

では、実際のところはどうなのかってことで、近ごろ出た研究(R)が、面白い研究をしてくれておりました。これは筋トレ経験のある男女25人を対象に、8週間の実験を行ったもので、すべての参加者に、片脚ずつレッグプレスとレッグエクステンションを行うように指示したそうな。

 

その際に、研究チームは、左右の脚でトレーニング量を変えるように実験を設定してまして、具体的には、

 

  • 片脚:普段より20%だけセット数を増やす

  • もう片脚:普段より120%セット数を増やす

 

というデザインになっております。参加者はもともと太ももの筋肉を週平均15セットぐらい鍛えていたので、20%増の脚は週18セットぐらい、120%増の脚は週33セットぐらいになった計算っすね。週33セットってのはかなりの高ボリュームですが、これを徐々に増やしたのではなく、いきなりドカンと増やしてみたらどうなるかを調べたのが、今回の実験のポイントであります。

 

で、普通なら、「そんなに急に増やしたら、筋肥大が止まるのでは?」と思うとこでして、研究チームも、120%増のほうは筋肥大が落ちるのではないか、さらに筋肉の分解に関わるシグナルが強くなるのではないか、と予想してたんだそうな。ところが結果を見てみると、

 

  • 20%増と120%増で、筋肥大に大きな差はなかった
  • 筋肉の断面積だけを見ると、120%増のほうが平均では少し大きく伸びていた(統計的に明確な差が出たわけではない)

 

だったそうな。簡単に言えば、トレーニング量を急に大きく増やしても筋肥大が台無しになるとは限らないが、逆にめっちゃ大きな効果を得られるわけでもなさそう、って感じですね。

 

この研究から学べることはいくつかあるんだけど、まず個人的に「大事だなー」と思ったのは、「疲労感」と「筋肥大の停滞」は別物だってとこですね。

 

たいていの人ってのは、セット数を増やして筋肉痛が強くなったり、トレーニング後にグッタリしたりすると、「これはやりすぎだ!」「高ボリュームは自分に合わない!」と思いがちなんだけど、今回の研究を見る限り、ボリュームを大きく増やしたからといって、筋肉の成長が即座に止まるわけじゃなさそうなんですよ。なので、ボリュームを増やした直後の疲労だけを見て「これはダメだ!」と判断するのは、ちょっともったいないかもしれません。

 

が、一方でこの研究を見て、「よし、明日から全身のセット数を2倍にしよう!」と考えるべきかと言えば、それもかなり危険なのでご注意あれ。この研究では太ももの筋肉だけを対象にしてるけど、現実のトレーニングでは全身を鍛えている人が多いでしょう。その場合、たとえば各部位を週15セットやっている人が、全身のボリュームを一気に倍にしたら、単純計算で総セット数が倍になり、そのぶんだけ疲労が跳ね上がりますからねぇ。この研究の結論ってのは、あくまで「急に増やしても絶対ダメとは言えない」であって、「急に増やしたほうが賢い」じゃないんで、そこは誤解なきようにお願いします。

 

では、実際に筋肉を増やすためにボリュームをアップさせたいときは、どうすればいいんでしょうか? 個人的な見解としては、セット数だけを単独で見ないことが最も大事なんじゃないかと思っております。

 

当然ながら、トレーニングの負荷ってのはセット数だけで決まるわけではなく、少なくとも、以下のような要素が絡んでおります。

 

  • 週あたりのセット数
  • 週あたりの頻度
  • 種目の種類
  • 限界まで追い込むかどうか
  • フリーウェイトかマシンか
  • 休息時間
  • 睡眠
  • 食事量
  • ストレス

 

一例として、胸の筋トレボリュームを週10セットから週20セットに増やすとしても、追加の10セットを全部ダンベルフライで限界まで追い込もうとしたら、そりゃ無理な話でしょう。しかし、その一方で、追加するセットをマシン種目にして、限界の2〜3回手前で止めるなら、かなり現実的な戦略になり得ますからね。同じ「10セット追加」でも、種目選びや追い込み具合によって、体へのダメージはまったく違ってくるわけです。

 

なので、ボリュームを増やすときは、「セット数を増やす代わりに、他の負担を少し軽くする」という発想が重要になりまして、具体的には、

 

  • 追加セットは最初から限界まで追い込まない

  • 高重量フリーウェイトよりマシン種目を使う

  • 1回のトレーニングに詰め込まず、頻度を増やして分散する

  • まずは特定の部位だけ増やす

  • 全身を同時に高ボリューム化しない

  • 睡眠と食事が崩れている時期は増やさない

 

みたいなガイドラインを守っていただくといいでしょう。私もボリュームを増やすときはマシンを多用することが多いです。

 

個人的にオススメなのは、全身を一気に高ボリューム化するのではなく、重点部位を決めてローテーションするやり方でして、たとえば、

 

  • 6〜8週間だけ、
    • 胸と背中はボリュームを増やす
    • 脚と腕は維持ボリュームにする

 

  • 次のブロックでは、
    • 脚を増やす
    • 胸と背中は維持に戻す

 

という感じで進めるわけです。これなら、全身の疲労を爆発させずに、特定部位には十分な刺激を入れられますからね。会社の予算配分に似たようなイメージで、「今期はどの筋肉にボリュームを配分するか?」みたいに考えたほうが、現実的にリソースを使えるんじゃないかと思うわけです。どうぞよしなにー。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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