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週150分の運動では足りない?アンチエイジングに効くベストな運動量はもっと長いんじゃないか問題

 
 

「健康のためには週150分の運動をしよう!」とか、よく言われるわけです。これはWHOや各国の健康ガイドラインでも定番の健康アドバイスで、たいていは「中強度〜高強度の運動を週150分以上やりましょう!」みたいに推奨してることが多いっすね。ざっくり言えば、1日20〜30分ぐらいの早歩きを週5日ぐらいやればOK、という感じですな。

 

この基準は非常に便利で、運動習慣がない人にとっては、「まずは週150分を目指しましょう!」というわかりやすい目標になってくれるわけです。実際、座りっぱなしよりは週150分の運動をしたほうが、心血管疾患や死亡リスクが下がることは、多くの研究で示されてますからね。

 

が、一方で、こんな疑問も残るところだったりします。

 

  • 週150分って、本当に十分なの?
  • 心臓病のリスクをしっかり下げるには、もっと運動したほうがいいんじゃないの?
  • そもそも、同じ運動量でも心肺機能が高い人と低い人では効果が違うんじゃないの?

 

いずれも「健康のための最低ラインはわかったけど、最適ラインはどこなんだ?」って問題ですな。「最低限の運動量」と「最大限に健康効果を得る運動量」は、必ずしも同じとは限らないですからね。

 

というところで、新たに出た研究(R)では、「運動量」と「心肺機能」が心血管疾患リスクにどう関係するのかを細かくチェックしてくれておりました。

 

これはUK Biobankのデータを使った研究で、17,088人を対象に、加速度計で測定した中高強度身体活動と、推定された心肺機能が、心血管疾患リスクとどう関係するかを調べたもの。追跡期間の中央値は約7.85年で、対象になった心血管疾患は、心房細動、心筋梗塞、心不全、脳卒中などであります。

 

この研究のポイントは、単に「運動している人ほど健康か?」ってポイントを見たんじゃなくて、

 

  • 中高強度の身体活動をどれぐらいやっているか
  • 心肺機能がどれぐらい高いか
  • その2つの組み合わせで、心血管疾患リスクがどう変わるか

 

を見ているところです。いわば、「どれだけ動くか」と「どれだけ動ける体なのか」をセットで見たわけですね。

 

で、分析の結論がどうだったかと言いますと、

 

  • 週150分の運動は、心血管疾患リスクを下げるには役立つ
  • ただし、その効果は意外と控えめ
  • 心血管疾患リスクを大きく下げたいなら、もっと多い運動量が必要かもしれない
  • さらに、心肺機能そのものも独立して重要っぽい

 

という感じになっております。もうちょい具体的に説明してみると、

 

  • 現在のガイドラインでよく言われる「週150分の中高強度運動」を達成した場合、心血管疾患リスクの低下はだいたい8〜10%ぐらいだった。
  • 心血管疾患リスクを30%以上下げるには、週560〜610分ぐらいの中高強度運動が必要だった。

 

だったそうな。もちろん、8〜10%でも十分に意味はあるんで、週150分の運動が素晴らしいのは間違いないんだけど、さらに効果を得たいなら週9〜10時間ぐらいの運動が必要かもしれないんだ、と。こりゃあハードですな。

 

もうちょいわかりやすく言い換えると、

 

  • 週150分なら、1日30分を週5回ぐらいで達成できる。
  • 週600分の運動だと、1日90分近い運動を毎日やるぐらいの計算になる。

 

みたいな感じっすね。なので、「週600分」って基準は、ランニングや自転車が趣味の人ならまだしも、普通に仕事をして、家事をして、子育てをしている人にとっては、かなり現実離れした数字になっちゃいますよねぇ。私もこんなに運動してませんし。

 

ということで、この結果だけを見ると「健康になるには毎日1時間半も運動しなきゃダメなのか!」と思ってしまうところですけども、個人的には「ちょっと冷静に見たほうがいいかもなー」と解釈しております。それと申しますのも、この研究にはいくつか限界がありまして、

 

  • 対象者はUK Biobankの参加者で、しかも有効な心肺機能データがある人に絞られている。そのため、一般人口よりも健康意識が高く、もともと元気な人が多かった可能性が割と大きいような気がする。

  • 心肺機能は直接測定ではなく推定値を使っている。なので、ここはだいぶ誤差がありそう。

  • 運動量や心肺機能の測定は限られた時点のデータであり、その後の生活習慣の変化までは十分に反映されていない。
  • 筋トレの影響も十分には考慮されていない。心血管疾患リスクを下げるうえでは有酸素運動が大事なのは間違いないものの、筋トレにも血糖コントロール、体組成、血圧、インスリン感受性などを通じた健康効果があるんで。

 

といったあたりは解釈を難しくしてるポイントであります。この結果だけで「週600分の有酸素をやらないとダメ!」と考えるのは早計でしょう。

 

ということで、個人的には、この研究から得られる教訓は、もっとマイルドでいいと思ってまして、

 

  • まず、運動していない人は、いきなり週600分を目指す必要はまったくない。最初の目標は、これまでどおり週150分でOK。これは現実的で、しかも健康効果もちゃんと見込めるラインなんで。
  • すでに週150分ぐらい動けている人は、そこから少しずつ上乗せするのもアリ。たとえば、「通勤で少し多めに歩く」「昼休みに10分だけ散歩する」「週末に長めのウォーキングを入れる」「週1〜2回だけ息が上がる運動を足す」「エレベーターではなく階段を使う」ぐらいでOK。日常の歩行量を増やすだけでも、かなりの人にとっては大きな改善になるんで。
  • 心肺機能を高めるには、ただ長く歩くだけでなく、ときどき少し息が上がる強度を入れるのもよさげ。たとえば、普通の散歩の途中で坂道を歩く、少し早歩きする、短いインターバルを入れる、みたいな。

 

ぐらいにとらえればいいんじゃないかと。要するに、今回の研究は、

 

  • 週150分の運動が素晴らしいことに変わりはないが、もっと上を目指せるのかもしれない

  • 心肺機能が高い人ほど心血管リスクは低いのは間違いないので、可能なら運動量を少しずつ積み増したほうがいいかも
  • ただし、週600分をいきなり目標にする必要はない

 

みたいなことを言ってるんだなーぐらいにお考えくださいませ。まぁ、この結果を聞いて「本当は週600分が理想なんだ……」とか思っちゃうとしんどいと思いますんで、つねに「今より少し多く動くことはできないかな?」を意識する感覚でいいんじゃないでしょうか。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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