テストステロン爆上げサプリは、何が効いて何が効かないのかをガッツリ調べた系統的レビューの話
「テストステロンブースター」っていうサプリがありますな。トリビュラス、ZMA、Dアスパラギン酸、アシュワガンダ、トンカットアリ、フェヌグリーク、シラジット……などが代表的で、いずれも「自然に男性ホルモンを高める!」みたいな売り文句で売られてるわけです。
ご存じのとおり、テストステロンは筋肉、性機能、活力、メンタル、代謝などに関わる重要なホルモンで、こいつが増えれば筋肉も増えて脂肪が落ちるだけでなく、やる気も上がったりするため、そのおかげでモテて人生が好転する……みたいな勢いで語られることも多かったりします。
というところで、新たに出た系統的レビュー(R)では、「テストステロンブースター」の効果をガッツリチェックしてくれてて参考になりました。
これは27種類のサプリについて52件の研究をチェックしたもので、「プラセボと比べて本当に総テストステロンが増えたのか?」を検証しております。対象になった人も、健康男性、アスリート、不妊男性、加齢性性腺機能低下症の男性など、かなり幅広い内容になっております。
で、この調査において、まず研究チームが取り組んだのが「ここ数十年で男性のテストステロン値が下がっているのでは?」という問題であります。というのも、アメリカ男性を調べたデータによると、1980年代以降、加齢とは関係なく男性のテストステロン値が年1%ぐらい低下し続けてるんだそうな(ただし、日本で同じような現象が起きているのかは不明)。
その原因には諸説ありますが、ここで研究チームが指摘するのが、
- 多くの男性にとっての問題は、たんに生活習慣の土台が崩れていることだ!
ってポイントであります。具体的には、
- 体脂肪が多い
- 睡眠不足
- 慢性ストレス
- 運動不足
- ビタミンD、亜鉛、マグネシウムなどの不足
- アルコール過多
- 食生活の乱れ
といった、めっちゃ基本的なところですな。なかでも体脂肪はかなり重要でして、脂肪組織には「アロマターゼ」という酵素があり、これがテストステロンをエストロゲンへ変換してしまうんですよ。つまり、体脂肪が増えるほど、テストステロンが減っちゃうわけです。
さらに睡眠の影響も大きくて、健康な若い男性を1週間だけ5時間睡眠にした実験では、それだけでテストステロンが10〜15%も低下したとのこと。これは自然な加齢でいうと、ざっくり10年分ぐらいの低下に相当するレベルであります。つまり、現代人ってのは、たんに昔よりも寝不足で、太っていて、ストレスまみれで、運動不足なせいで、テストステロンが下がってるんじゃないかってことです。シンプルですね。
なので、研究チームの立場は明確で、
- サプリとか飲む前に、基本のライフスタイルをしっかりしなはれ
というものになります。結局はテストステロン低下の大半は生活習慣の問題なので、そこを改善する前にサプリを使っても金のムダってことですな。
で、この大前提をふまえた上で、本論では「テストステロンが上がるよ!」とされるサプリの効果を、以下のようにまとめてくれております。
効かないサプリ枠:トリビュラス、ZMA、Dアスパラギン酸
- トリビュラス:昔から「男性ホルモン系サプリ」の王道っぽく売られてきたサプリ。しかし、ヒト試験を見てみると、若い健康男性、クロスフィットアスリート、不妊男性などを対象にした研究では、まともなプラセボ対照でテストステロン増加は確認されていない。いちおう高齢男性でポジティブな結果っぽいものもあるが、これは対照群がない試験なので、「サプリの効果」とは言いにくい。
- ZMA:亜鉛・マグネシウム・ビタミンB6を組み合わせたサプリで、筋トレ民にはわりとなじみのある商品。ところが、ZMAについて調べた研究には資金面の問題があり、その後の独立したRCTではテストステロン増加は確認されていない。亜鉛やマグネシウムが不足している人なら補う意味はあるが、健康な人に効果があるかというと、かなり怪しい。
- Dアスパラギン酸:これも定番だが、筋トレ経験のある若い男性を対象にしたRCTでは、3g/日を飲んでもプラセボと差が出ていない。
欠乏している人には意味がある枠:ビタミンD、亜鉛、マグネシウム
- ビタミンD:ビタミンDは「テストステロンを上げる!」と宣伝されることもあるが、レビューで取り上げられたRCTの多くでは、プラセボと比べて明確なテストステロン増加は出ていない。ただし、過体重でビタミンD不足がある男性では、ビタミンD補給により総テストステロンや遊離テストステロンが上がった研究もある。逆に、すでにビタミンDが十分な人が追加で飲んでも、テストステロン目的ではあまり意味がなさそう。
- 亜鉛:亜鉛はステロイドホルモン合成に関わるので、不足すればテストステロン産生に悪影響が出る可能性がある。特に、肉や魚介類をあまり食べない人、菜食寄りの人、汗をよくかくアスリートなどは不足しやすい。ただし、これも「欠乏の修正」であって、健康な人が飲んで意味があるわけではない。
- マグネシウム:摂取量が少ない人では、サプリを飲むことでテストステロンに良い影響が出る可能性がある。また、マグネシウムはビタミンDの活性化にも関わるので、地味ながら重要。
やや有望枠:アシュワガンダとトンカットアリ
- アシュワガンダ:ストレス軽減系のハーブとして知られているが、いくつかのRCTではテストステロン増加も報告されている。なかには、だいたい11〜18%ぐらいの増加が見られた研究もある。ただし、アシュワガンダの作用は「直接テストステロンを増やす」というより、慢性的なストレスやコルチゾールを下げることで、テストステロン産生へのブレーキを外す、というイメージに近い。つまり、睡眠が悪く、ストレスが高く、常に疲れている人には効く可能性があるけれど、すでに生活が整っている人では追加効果は小さいかもしれない。
- トンカットアリ:東南アジアで伝統的に使われてきたハーブで、アロマターゼを抑える可能性がある成分が含まれている。2022年のメタ分析では、低テストステロン男性でも正常域の男性でも、10〜15%ほどテストステロンが増える可能性が示されている。ただし、研究数がまだ少ないため、完全に信頼していい段階ではない。テストステロンが低めで、生活習慣もある程度整えている人が、試す候補として考えるならアリ。
海のものとも山のものとも枠:HMB、ベタイン、フェヌグリーク、シラジット
- HMB:HMBは3,000mg/日を使った複数のRCTで、男性アスリートのテストステロン増加が報告されている。ただし、研究数は多くなく、トレーニング量が多い人に限った効果なのか、一般人にも当てはまるのかは不明。
- ベタイン:若いアスリートでテストステロン増加が報告されている。ただし効果量が大きすぎる研究もあり、「ちょっと出来すぎでは?」という印象が強い。
- フェヌグリーク:いくつかの試験では総テストステロンや遊離テストステロンの増加が見られている。ただし、結果はかなり混在しており、効いた研究もあれば効かなかった研究もあるので、なんとも言えない。
- シラジット:90日間でテストステロンが増えたRCTがあるが、これも特定メーカーの抽出物を使った単発の業界資金研究でしかない。プラセボ群のテストステロンがなぜか下がっていた点もあり、解釈には注意が必要となる。
ということで、実際のデータを見ると、多くのサプリは「不足を補うなら意味がある」という地味な結論に落ち着きますねー。個人的に飲んでもいいかなーと思うのは、やはりアシュワガンダぐらいですかねぇ。


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